この記事では、外壁のクラックに遭遇した際の対処法を素材別に深く掘り下げ、クラックが生じる原因、そしてそれぞれの材料に適した補修方法について、詳しく解説しています。素材別解説では、モルタル、サイディング、タイルといった外壁材料ごとの特徴をまとめています。また、シーリング材の劣化とその補修についても触れており、住宅の外壁を健康な状態に保つための具体的なアドバイスが満載です。
クラックについて
まず、クラックの基礎的な知識や見極め、対策についてはこちらの記事をご確認ください。
「クラックとは?戸建ての外壁のひび割れを発見したらすべきことを徹底解説!」
そもそも外壁の仕上げはなぜ必要?
住まいを守るため
外壁は、大雨、強風、紫外線、極端な温度変化、そして自然災害といった様々な外部からのダメージに常に晒されています。これらの過酷な条件は、外壁や屋根の劣化を引き起こし、徐々に建物の寿命を縮めていきます。
そのため、住まいを長期にわたって保護し続けるには、定期的なメンテナンスと適切なケアが不可欠です。人間の健康が適切なケアによって維持されるように、建物もまた、適切な手入れを通じてその健康と寿命を保つことができます。特に外壁塗装は、これらの外部要因から建物を保護し、維持するために重要な役割を担っています。
資産価値を維持するため
同じ築年数の住宅でも、定期的に外壁塗装やその他のメンテナンスを施している物件は、メンテナンスを怠った物件に比べて、明らかに資産価値が高いと一般に認識されています。
資産価値の評価は、物件が「長期にわたって快適に住むことができるか」と「今後必要となるメンテナンス費用が最小限に抑えられるか」に基づいて行われます。定期的なメンテナンスを行うことで、住宅は長く快適な居住空間を提供し続けることができます。外壁塗装は、快適な住環境を維持するだけでなく、住宅の資産価値の維持にも非常に重要な役割を果たします。売却を考えていない場合でも、住宅を長持ちさせるためには、定期的なメンテナンスが推奨されます。
外壁の種類について
モルタル
特徴
モルタルとは、セメントと砂を約1:3の比率で混ぜ合わせ、水を加えて練り合わせた建築材料です。セメントは、石灰石や石膏を加工して得られる粉末であり、最近では防水機能を強化した「防水セメント」を用いたモルタルも普及しています。コンクリートと混同されがちですが、コンクリートはモルタルに砕石や砂利を加えて強度を高めた材料であり、構造的な要素に使用されます。
モルタル外壁は複数の層から構成されており、最内部には透湿防水シートを配置し、その上にラス下地板を取り付けます。最終的に防水紙とラス(金属製の網)を施し、モルタルが適切な厚さで均一に密着するよう工夫されています。
デザインの自由度が高く、サイディングに比べて目地がないため、一体感のある美しい仕上がりを実現できる点がモルタル外壁の大きな利点です。そのため、美観と高級感を重視する場合に適しています。
劣化症状
モルタル外壁は、日々紫外線や風雨などの外部からの影響を受け続けるため、時間と共に塗膜が剥がれやすくなります。この塗膜の剥がれは、外壁の防水性能を低下させ、結果として汚れが付きやすくなります。さらに防水性が落ちることで、雨水を吸収しやすくなり、その湿度の高い環境は苔の発生にとって理想的な条件となってしまいます。このように、モルタル外壁の維持管理には、塗膜の状態を定期的にチェックし、必要に応じて塗り直しを行うことが重要です。
サイディング
特徴
サイディング外壁は、その優れた特性から広く採用されており、市場において高いシェア(約80~90%)を占めています。この外壁材は、コストパフォーマンスに優れており、材料費及び施工費が比較的安価であることが特徴です。
また、その軽量性により耐震性に優れ、安全性を高めることができます。サイディングは、カバー工法を用いて、既存の外壁上に新しい外壁材を重ねて施工するリフォームにも適しており、この方法で効率良く外観を一新することが可能です。さらに、デザインのバリエーションが豊富で、建物の見た目を多様に演出できるのも大きな魅力です。これらの特徴を他の外壁材と比較することで、サイディングの利点がより明確になります。
劣化症状
サイディング外壁は以下のような劣化兆候を示すことがあります。
- シーリング材の劣化
- チョーキング現象
- サイディングボードの浮きや反り
- ヒビ割れや剥がれ
- 苔の生育
中でも、シーリング材の劣化には特に注意が必要です。シーリング材は、サイディング板間の隙間を密封するためのゴム状の建築材料で、その劣化はヒビ割れや水漏れの原因となり得ます。劣化したシーリング材から水が侵入すると、内部の構造へのダメージを招き、外壁全体の劣化を加速させることになります。定期的な点検と必要に応じた修復作業が、サイディング外壁の寿命を延ばし、住宅を守るために重要です。
タイル
特徴
タイルは、土や石といった自然由来の素材を高温で焼成して硬化させた建材です。サイズには、「二丁掛け」やその半分のサイズの「ボーダータイル」など、用途やデザインに応じた多様なバリエーションが存在します。色彩もレンガ色から白、黒、茶色など多岐にわたり、外壁の表情を豊かにします。
施工方法はタイルの種類によって異なり、モルタルを用いた貼り付けや、専用接着剤を使用する方法があります。このように、タイル外壁はその美観と機能性で、建物の外観を格調高く演出する選択肢となり得ます。
劣化症状
- 白華現象: これは、外壁タイル表面にカルシウムやナトリウムなどが雨水を介して溶け出し、白い粉状の膜を形成する現象です。
- 浮き: タイルを接着している材料やその下地が熱や湿度の影響で膨張し、タイルが外壁から隆起してしまう現象を指します。この状態が進行すると、タイルが剥がれ落ちる危険性があります。一般的には、この浮き状態は目で見て簡単には判別しにくいものです。
- ひび割れ: タイル自体のひび割れや一部の欠損は、外壁タイルの劣化の中でも特に緊急を要する状態です。これらの症状がある場合、タイルが剥がれて落下し、人に当たることで重大な事故につながるリスクが高まります。
これらの症状は、タイル外壁の安全性や美観に重大な影響を及ぼす可能性があり、早期の対応が求められます。特に「浮き」と「ひび割れ」は、外壁タイルが落下するリスクを高めるため、発見次第、専門の業者による評価と修復が必要です。
クラックの調べ方
- 打診棒:壁の浮きや空洞を確認するために使用します。
- クラックスケール:ひび割れの幅を正確に測定します。
- 鏡:目視で確認しにくい部分をチェックするために役立ちます。特に、3mm以上のクラックには注意が必要です。
補修方法
モルタルの場合
0.3mm以下のヘアークラックの場合
0.3mm以下の微細なヘアークラックは、構造上の深刻な問題を示すものではありません。この種のひび割れに対しては、特別な処理を必要とせず、可とう性のある改修用塗料を下塗りとして塗布することで適切に対応することができます。この方法は、ひび割れを効果的に覆い、さらなるダメージから外壁を保護するのに十分な効果を発揮します。
0.3mm以上のクラックの場合
.3mm以上のクラックが発生した場合、より専門的な知識を持ち、修復が必要となります。
- グラインダーなどの工具を使用して、ひび割れ部分を慎重に削り取ります。
- 削った箇所のほこりや汚れを丁寧に除去し、クリーンな状態にします。
- プライマー(下塗り塗料)を適用し、これによってシーリング材の密着を促進します。
- 適切なシーリング材をひび割れ部分に塗り込み、密封します。
この一連の手順により、ひび割れからの水の侵入を防ぎ、外壁の構造的な損傷を未然に防ぐことが可能です。
サイディングの場合
サイディングの補修方法はダメージの種類によって異なります。
部分補修
- ひび割れ補修: 浅いひび割れは専用のシーリング材や補修材で埋めることが可能です。これにより水の侵入を防ぎ、さらなる劣化を避けることができます。費用は比較的低く、簡単な補修で対応可能ですが、ひび割れの程度が深い場合は部分的な張り替えが必要になることがあります。
- コーキング補修: サイディングの隙間を埋めるコーキングの劣化に対する補修には、「打ち替え」と「増し打ち」の2種類の方法があります。耐久性を考慮すると、全て新しい材料に置き換える「打ち替え」が推奨されます。これにより、水の浸入を防ぎ、断熱性や防音性の維持が可能になります。
部分塗装
サイディングの色あせや小傷、汚れに対する部分塗装は、サイディングの美観を維持する効果的な方法です。塗装前の洗浄と下地処理を行い、該当箇所だけを丁寧に塗装します。元の色との色合わせが重要になります。
一部張り替え
欠けやへこみがある場合には、損傷した部分のサイディングを新しいものに張り替えることで、見た目と機能性を回復します。しかし、損傷が大規模な場合は、全面的な張り替えが必要となることもあります。
全面工事
全面的なサイディング工事には、外壁塗装、外壁張り替え、外壁カバー工法があり、それぞれ費用とメリットが異なります。長期的な視点でメンテナンスコストを考えると、部分補修を繰り返すより全面工事の方がコストパフォーマンスが良い場合もあります。
工事方法 | 詳細 | 費用 |
外壁塗装 | 既存の外壁の上から新しい塗料を塗って塗装を行う | 100万円〜150万円 |
外壁張り替え | 既存の壁を全て撤去し、新しい外壁を設置する | 180〜250万円 |
外壁カバー工法 | 既存の外壁の上から新しい外壁を被せて設置する | 150〜200万円 |
タイルの場合
タイル外壁の補修には主に二つのアプローチがあります。
タイルの浮きが発生している場合
適切な接着剤を使用して固定する方法で補修します。ただし、浮きの程度によっては、タイルを新しいものに張り替えることが推奨されることもあります。
タイルの欠け、剥がれ、またはひび割れが生じている場合
該当するタイルを新しいタイルで張り替える必要があります。このプロセスには、まず損傷したタイルを丁寧に撤去する作業が含まれます。撤去後は、タイルが取り付けられていた表面(コンクリートやモルタル)のクリーニングと平滑化を行い、新しいタイルを接着剤で取り付けます。これらの手順を適切に実施することで、タイル外壁の見た目と機能性を回復させることができます。
その他:シーリング材について
シーリングとは?
シーリングとは、建築物の気密性や防水性を高めるために、隙間やひび割れを専用の材料で埋める施工法です。この作業で使用される材料を一般にシーリング材、シーリング剤、または充填材と呼び、これらは建物の耐久性や快適性を保つ上で重要な役割を果たします。シーリングは外壁だけでなく、窓周りや建物のさまざまな接合部にも適用され、水漏れや空気漏れを防ぎ、建築物全体の保護に寄与します。
コーキングとの違い
一般に、「シーリング」と「コーキング」は建築現場で基本的に同じ意味で使用されますが、細かい違いがあります。シーリングは形状が特定された材料を指し、一方で、コーキングはチューブ状の容器に入った樹脂性の材料をコーキングガンを用いて施工する行為やその材料のことを指します。しかしながら、建築現場においては、これらの用語はしばしば同義語として扱われ、使用する人や企業によって用語の使い分けが異なることがあります。実際には、厳密な区別はなく、文脈に応じて柔軟に使われることが一般的です。
シーリング剤の劣化症状
剥離
剥離とは、外壁とシーリング材との間に隙間ができてしまう症状です。
主な原因には、プライマーの塗布忘れや塗布ムラ、外壁の動きに対するシーリングの接着強度不足、そして3面接着による不適切な施工が含まれます。
対策として、シーリングを再施工する際には以下の点を注意してください。
- プライマーを均一に、適切に塗布することで基材との接着力を高めます。
- 3面接着が発生しないよう、シーリングの底部にボンドブレーカーと呼ばれる特殊なテープを貼ること。これにより、シーリング材が底部に接着せず、外壁の動きに対して柔軟に対応できるようになります。
破断
破断とは、シーリング材の真ん中が割れてしまう症状です。
主に、コーキング材の自然な老化やその寿命によって生じます。劣化したシーリング材の適切な対処法としては、次回の補修時により高い耐久性を持つシーリング材を選択することが重要です。耐候性や耐久性に優れた製品を選ぶことで、将来的な破断や他の劣化問題を防ぎ、より長期間にわたり外壁の保護を確保することが可能となります。
欠落
欠落とは、シーリング材が取れてしまう症状です。
原因として、プライマーの不足や不適切なシーリング材の選択が主な原因として挙げられます。このような状態になると、シーリング材はほとんど弾力性を失い、保護機能が機能しなくなります。
対策として、次にシーリング材を打ち替える際には以下の点に注意してください。
- プライマーを適切に、十分に塗布することで、シーリング材と基材の間の密着性を高める。
- 材料の選定時には、対象となる外壁の条件や環境に適した、耐久性に優れたシーリング材を選ぶこと。
劣化したシーリング材は、建物を保護するために早期に適切な対応が求められます。適正なプライマーの使用と適切なシーリング材の選定により、長期的な保護とメンテナンスコストの削減を実現しましょう。
ブリード現象
ブリード現象は、シーリング材から塗装面へと黒ずんだ汚れが浮き出てくる現象を指し、サイディング、ALCパネル、モルタル外壁などに見られます。主な原因は、シーリング材内の可塑剤が時間と共に外へにじみ出し、外部の塗装面に移行し、そこに大気中の埃が付着することです。この現象は、特に交通量の多い道路に面した建物で目立ち、特に白やベージュなどの明るい色の塗装面では顕著に見えます。
対策としては、可塑剤を含まないノンブリードタイプのシーリング材の使用が推奨されます。これらの製品は、通常「ノンブリード」や「NB」とラベルに明記されており、可塑剤の移行を抑制するよう設計されています。既にブリード現象が発生している古いシーリングやガスケットは、撤去後にノンブリードタイプの製品に打ち替えることで、再塗装時の黒ずみを防ぐことが可能です。
簡単入力30秒
「他社で断られた」、
「査定価格を知りたい」、
「空き家の管理をお願いしたい」など
お気軽にお問い合わせください。
訳あり物件の
スピード査定をしてみる
簡単フォームで30秒