本ブログでは、事故物件の売却を検討する際に注意すべき論点を解説します。売買にあたっては、売却相場、告知義務、売買の方法などが重要となっています。これらの説明するために、事故物件とは何か、分類、告知義務とは何か、売買相場とその決定要素、有効な売買手段について説明します。
事故物件の基礎知識
広義の事故物件
事故物件は大きく分けて、心理的な要因と物理的な要因による2種類の瑕疵に分類されます。それぞれ心理的瑕疵、物理的瑕疵などと呼ばれています。心理的瑕疵とは、過去に物件で起きた事件や事故などにより、潜在的な不安や抵抗感を抱かせるような要因を指します。一方、物理的瑕疵は、建物の構造的な問題や設備の不備など、物件自体の物理的な欠陥を意味します。「瑕疵」とは、通常期待される品質や性能を満たさず、所有者の期待や要求に応えられない物件の特定の欠点を指します。これらの瑕疵の性質に応じて、売却時の手続きや価格相場が変動するため、売却を検討している場合は各瑕疵の詳細について理解することが重要です。そのほか、瑕疵の内容には環境瑕疵と法律的瑕疵があります。
狭義の事故物件
協議の事故物件とはいわゆる心理的瑕疵物件を言います。人が死亡したからといって不動産の物理的な機能性能に変化はありませんが、住み心地が人の死によって悪化してしまうのであればそれは一種の瑕疵になると考えれています。しかしこれらは人の感じ方による部分が大きいため、ある人にとっては瑕疵がないと感じることもあれば、瑕疵があると感じるケースがあったりと、個別差が大きいものとなります。
瑕疵については告知義務がある
事故物件を売却する際、売主は心理的瑕疵と物理的瑕疵の両方について、買主や借主に対して知り得た全ての情報を開示する義務があります。この告知義務の遵守が重要であり、違反した場合には契約不適合責任を負う可能性があります。これには、物理的な修復を求める追完請求、代金の減額、契約の解除、さらには損害賠償へと発展する可能性も含まれます。
宅地建物取引業者もまた、不動産取引における重要事項の説明責任を負います。これは宅地建物取引業法第35条に基づき、購入意思決定に影響を与える可能性のある重要な情報を購入前に明らかにすることを義務付けています。さらに、同法第47条に従い、不実の事実を伝える行為は禁止されており、これらの規則に違反した場合、宅地建物取引業者は買主から損害賠償請求の対象となり得ます。これらの規定は、透明で公正な不動産取引を促進し、買主の権益を保護するために設けられています。
心理的瑕疵物件についての告知義務の内容と範囲
心理的瑕疵物件とは、事故物件とは、死亡事故、自殺などのいわゆる「事故物件」を言います。このような事故が一度発生してしまった物件については、世間一般で購入や賃貸を避けれらる傾向にあり、物件は取引価格が通常近隣の物件と比較して著しく低下します。このような物件については、告知義務が課せられており、取引開始以前に物件の売買や賃貸の募集時にまずは告知義務ありと記載することで情報公開することが一般的です。
事故の程度により告知義務として扱うか否かについては、国土交通庁の2020年制定の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」において定められており、自然死については心理的瑕疵に当たらないとして告知義務の対象から外されています。
1.老衰、病死(自然死)
宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン
2.日常生活での不慮の事故死
(自宅の階段からの転落死、入浴中の溺死、転倒事故、食事中の誤嚥など日常生活の中で生じた事故)
3.隣接住戸や通常使用しない集合住宅の共用部での死亡
(自殺・他殺を含む)
また、告知義務の期間については、賃貸であるならば事故発生から概ね3年が告知義務が必要とされる期間とされています。
しかしながら、告知義務に該当するか否かについては、その事故発生時の状況などにより個別に勘案されるものであるため、一律に判断できるものではないことを理解しておいてください。また大々的にニュースなどで報道された殺人事件などであれば、3年を経過して後も告知義務が必要とされる場合などもあります。
物理的瑕疵物件についての告知義務の内容と範囲
物理的瑕疵物件とは、建物に構造上の問題や設備の不具合など、物理的欠陥が存在する不動産のことを指します。これには、雨漏りや壁のひび割れ、排水管の破損、シロアリ被害、耐震性の不足、アスベスト使用といった問題が含まれます。また、火災や自然災害による損傷も物理的瑕疵に該当します。さらに、土地に関する瑕疵も考慮され、地盤沈下、液状化リスク、土壌汚染、障害物の埋没といった問題が含まれます。
中古不動産や土地の売買において、瑕疵の存在は一定程度前提とされていますが、これらの瑕疵については、契約時に買主と売主の間で共有される情報の範囲が重要です。
例えば、東京地判平成20年9月18日(平成19年(ワ)第18229号)は、宅地として売買契約が締結されている土地の地耐力が、一般の戸建住宅に要求される基準を下回っていることを認めつつも、「本件土地の地耐力に関する具体的な表示又はこれを保証する旨の記載は存在せず…本件土地上に建物を建築するに際して地盤の改良工事を要しないことが、本件契約の前提となっていたということはできない」として、低い地耐力を瑕疵として認めませんでした。
他にも東京地判平成24年5月30日(平成21年(ワ)第22895号)では、売買された土地に環境基本法で定める環境基準値を超える汚染物質が含まれていた場合の取引で、買主が当該土地をガソリンスタンドとして利用する目的で購入しておりそれらの利用の目的を妨げるものではないという理由で、瑕疵担保責任が否定されています。
その他の瑕疵(環境瑕疵と法律的瑕疵)
心理的瑕疵や物理的瑕疵に加え、環境瑕疵と法律的瑕疵も不動産取引における重要な考慮事項です。
環境瑕疵は、不動産自体に直接の問題がなくとも、その周辺環境に起因する価値の低下を指します。例えば、周辺の騒音や振動、日照権の侵害、景観損失、ゴミ焼却場や廃棄物処理施設の近接などがこれに該当します。これらの瑕疵は、物件の居住性や利便性、さらには価値に大きく影響を与える可能性があります。
法律的瑕疵は、不動産の使用、収益性、処分が法令上の制限により影響を受ける場合に発生します。所有権の問題、土地利用権の制限、建築基準法違反などが典型的な例です。これらの問題は、不動産の目的に応じた使用を制限し、結果として価値を低下させる可能性があります。
売買契約において、これらの瑕疵は宅地建物取引業者による徹底した現地調査及び役所調査を通じて明らかにされるべきです。適切な情報開示が行われ、契約者は予期せぬリスクから保護されます。瑕疵が売買後に発覚した場合は、契約不適合責任の対象となり、様々な法的措置が講じられる可能性があります。
事故物件の売却価格:市場における相場とその決定要因
事故物件の事故の程度により物件価格の下落率は異なります。下落の事由について解消可能なものは下落率も少ないですが、解消が不可能なものについては、下落率が大きくなります。具体的には心理的瑕疵が最も下落率が大きくなります。
物件の状態や条件による価格の変動
事故物件の売買価格や賃貸における賃料については、その物件の状態や条件に大きく依存します。売却対象となる事故物件の事故の規模や種類、位置、建物の規模、建物の老朽化の度合いなどが主要な要素となります。基本的にはこれらの瑕疵については解消し、瑕疵の原因を取り除くことで不動産価値は増加させることができます。
例えば、自然災害などによる物理的な損害がある場合などは売却価格を下げる要因となりますが、物理的損害を回復させることで売買価格は通常の不動産と同じ価格になります。法律的瑕疵についても同様で、例えば接道義務を満たさない再建築不可の不動産については、隣地を買い取るなどして接道義務を満たすことで不動産価値を取り戻すことが可能です。ただし、再建築不可の物件を建築可能にするなどは非常にテクニカルであり、こういった不動産については、専門の不動産業者へ売却の相談をすることをお勧めします。
一方で、心理的な問題がある物件については、その瑕疵の要因を取り除くことは難しく、一度下がってしまった物件価格を取り戻すことは難しくなります。環境瑕疵についても改善することが難しい場合が多くあります。法律的瑕疵の場合でも、過去に建築許可を得ていた物件が現在の建築基準に適合しないことでリノベーション時に新たな許可が下りない事例など、物件価値の回復が可能なケースと不可能なケースが存在します。
心理的瑕疵については、地域・エリアの条件と、築年数の条件により物件の下落率は異なる
不動産価格はエリア・不動産の築年数やマンションのブランド名など諸条件により売買価格が異なるため一様に心理的瑕疵により下落率は示すことは難しいですが、一般的に、駅近・築浅のマンションは下落率が小さく、駅から遠く築年数の古いマンションは下落率が大きくなります。
価格の下落幅の大きいもの(価値は20%から30%程度低下する)
- 駅から徒歩10分を超える立地や市街地からのアクセスが車で10分以上要する物件
- 築年数が10年を超えるか、明らかな汚損が存在する物件
価格の下落幅の小さいもの、もしくはほとんど下落しないもの(10%程度)
- 駅から徒歩10分以内、または市街地から車で10分以内の好立地
- 築10年以内で汚損がない清潔な物件
自然死・不慮の事故死・病死のケース(相場と比較した下落率)
自然死、不慮の事故死、病死といったケースでの売買価格の下落率については、一般的には市場価格の10-20%程度の下落率が売買相場とされます。国土交通庁のガイドラインにも記載があるように、事故物件とはみなされず、告知義務は不要となります。
ただしこれは早期発見の場合であって、死亡から相当日数が経過し腐敗が進んだ状況だと告知義務が必要となります。裁判の判例でも死後4日までは告知義務なしという判例が出ています。
告知義務が必要とされたケースでは20%-30%程度の下落率が相場と考えられています。
自殺のケース(相場と比較した下落率)
自殺事故が発生した物件の売却価格は、一般的に市場価格の30%から50%程度下落すると見られています。この下落率は、自殺の方法、自殺発生後の発見までの期間、遺体の腐敗度合いなどの要因によって変動します。特に、屋上での首吊り自殺や、遺体が下層の窓から直接見える状況の場合、その視覚的影響は価格下落の要因となりえます。このようなケースでは、事故が発生した建物の隣接する部屋やマンションの一室も、事故物件として認識され、価格に影響を及ぼす可能性があります。
殺人のケース(相場と比較した下落率)
死因が殺人事件によるものの場合には、売却価格は一般的な売買価格と比較して、大幅に下落する傾向にあります。自殺の場合には50%程度の下落率もありうると前述しましたが、殺人ともなると、その下落率は約70%から80%下落することもあります。殺人という重大な事故が発生した物件については、報道等によりその住所や部屋番号も一般に知られてしまうこともあり、その事実が広く知られることで潜在的な購入者を大幅に減らすことなります。また、下落率についてはあくまでも基準に過ぎないため、結局は需要があるのか否か、またいくら出せるのかによって、売却価格は異なってきます。つまりどれだけ値下げしても、買い手がつかないおそれもあります。極端な値下げを行ったにも関わらず買い手が見つからず、結局ただ同然で処分せざるを得ないケースもあります。
再建築不可などの法律的瑕疵については下落率も大きい
再建築不可といった法律的瑕疵が存在する物件は、利用可能性が制限されることから価値が著しく低下します。特に都心部においても、このような瑕疵がある場合の価格下落率は一般的に50%以上に及ぶことが多いです。地方では、価格をいくら下げても買い手が見つからないケースが頻繁に発生します。このような物件は、使用可能性や将来性が大きく影響されるため、市場価値の大幅な低下を避けられません。
アスベストを含むマンションなどの下落率
アスベストは耐熱性が高く建築コストを抑える利点から、過去にマンション建築に広く使用されていました。しかし、健康への影響が明らかになって以降、その使用は段階的に制限され、2012年には完全に禁止されました。特に1975年以前に建設されたマンションではアスベストの使用が一般的でした。
マンションにおけるアスベストの使用量は建物によって異なり、除去作業の難易度に応じて費用が大きく変動します。アスベスト含有量が多い物件では、解体や除去作業に莫大な費用が発生し、平米あたり最低2万から3万円の追加費用がかかると見積もられています。
リノベーション時には、アスベストの飛散防止措置が必須となり、これらの作業にかかる費用は最終的なマンションの売買価格に大きく影響します。
アスベストの有無は契約前の段階ではしばしば明らかにならず、契約不適合責任の追及が可能かどうかは、購入時の説明内容に大きく依存します。売買契約時に受けた説明の有無や内容が、アスベスト問題の取り扱いにおいて重要な要素となります。
事故物件の効果的な売却方法
事故物件の売買方法については、仲介と不動産業者の買取の2種類が考えられます。それぞれのメリットとデメリットを紹介します。
仲介を通じた売却
仲介による売却は、不動産業者が売主からの依頼を受けて買主を探し出し、売主と買主との間で取引を仲介するプロセスです。この方法で売却を行う際、売主は不動産業者に対して売買成約価格の約3%(金額によって変動することもあり)を手数料として支払うことになります。
仲介を通じた売却の大きなメリットは、市場において価値を正しく評価し、高額での販売を目指せることです。特に、市場価値が高いと見込まれる物件は、仲介によってより高値での売却が可能になります。
しかし、デメリットも存在します。売却が成立するまでに時間がかかることが多く、マンションの場合は平均して半年程度を見込む必要があります。買主が住宅ローンを利用する場合が多いため、買主の信用状況によっては資金調達に失敗し契約が成立しないリスクもあります。さらに、再建築不可や旧耐震基準に該当する不動産は、住宅ローンの利用が難しく、売却が困難になる可能性が高いです。
買取を通じた売却
不動産業者による買取は、事故物件を直接業者が購入する方法です。この売却方法の大きなメリットは、手続きが迅速である点です。簡易な現地調査後、最短で1週間程度での現金化が可能となります。また、買取の場合は仲介手数料が発生しないため、コストを節約できるという利点があります。さらに、売却後に買主から契約不適合責任を追求されるリスクも、特約で免除されることが多く、安心して取引ができます。自殺や殺人事件などが発生した場合、そのまま現地の特殊清掃などの後片付けを不動産業者が請け負ってもらえるケースも多く、それらの手間を大幅に省略することもできます。このように、市場での売却が難しい不動産の場合、専門の買取業者による買取が有効な選択肢となり得ます。
しかし、デメリットとしては、市場価格以上での売却が期待しにくいことが挙げられます。不動産市況に左右される価格設定は、一般的に仲介を通じた売却に比べて低めになる傾向があり、売却価格に関しては期待値を下回ることが多いです。
事故物件の売却方法についてのまとめ
事故物件の売却では、物件の特性に応じた方法を選択することが重要です。例えば、駅近や築浅、有名ブランドのマンションシリーズなどの特徴を持つ物件は、プレミアム価値により、仲介を通じての売却が有効である可能性があります。この場合、適度なディスカウントを設定することで、事故物件であっても売却に成功することが期待できます。
しかし、これらのメリットがない一般の事故物件の場合、仲介を通じた売却は難しい場合が多いです。そのような場合、専門の買取業者による直接買取が、迅速な現金化、手間やリスクの軽減といったメリットを提供し、効果的な解決策となります。
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