不動産の告知義務とは何か?見分け方や選ぶ際の注意点などを説明します

事故物件

不動産取引における告知義務は、購入や賃貸の前に知っておくべき重要な情報です。物理的、心理的、環境的、法的瑕疵といった様々な種類があり、それぞれが購入者や借り手の判断に大きく影響を与えます。本ガイドでは、告知義務の内容、期間、及び不動産会社の調査範囲から、告知義務のある物件の見分け方、事故物件の取り扱いについて詳しく解説します。

告知義務とは何か?

告知事項とは、不動産取引において、購入者や借り手が契約を結ぶ前に知っておくべき重要な情報を指します。これには、物件内外で発生した事件や事故による人の死亡、または物件の周辺環境に関連する嫌悪感を引き起こす要素が含まれます。このような事項は、入居者や購入者の意思決定に大きな影響を与える可能性があるため、宅地建物取引業法第35条に基づき、契約の際に書面での告知が義務付けられています。

告知されるべき事項には、物件が過去に「事故物件」として扱われた場合、特定の集客を目的とした「特別募集物件」、または「心理的瑕疵がある」場合など、さまざまな状況が該当します。これらは、物件の価値や居住の快適性に影響を及ぼす重要な情報であり、潜在的な購入者や借り手にとって明確に理解しておく必要がある情報です。

告知事項に該当する瑕疵は、主に以下の4つのカテゴリーに分類されます:

  1. 物理的瑕疵:建物の構造や設備に関連する物理的な問題。
  2. 法的瑕疵:法令違反や権利関係の問題。
  3. 環境的瑕疵:物件の周辺環境に起因する問題。
  4. 心理的瑕疵:過去の事件や事故による心理的な負担。

これらの瑕疵は、物件の価値を低下させる可能性があり、正確かつ適切な告知を通じて、不動産取引の透明性を高め、消費者保護を図ることが目的です。

告知義務の主な種類とは?

物理的瑕疵

物理的瑕疵は、賃貸物件や売買対象不動産の建築物自体に存在する損傷や不具合を指します。これには、雨漏り、アスベストの使用、排水管の破損などが含まれ、これらは物件の安全性や居住性に直接影響を及ぼすため、告知義務の対象となります。物理的瑕疵の存在は、不動産の価値を下げる可能性があり、借り手や購入者がその物件を選択する上で重要な判断材料となります。したがって、これらの問題は透明に開示される必要があります。

心理的瑕疵

心理的瑕疵は、不動産を借りる際に潜在的な入居者が心理的な不快感や抵抗を感じる可能性がある事情を指します。この概念は、物理的な欠陥ではなく、物件に関連する過去の出来事や歴史が原因で発生する場合があります。例えば、過去に物件で自殺が発生した場合や、重大な犯罪が行われた場合など、物件自体に直接的な物理的損傷がなくても、これらの事実が将来の借り手や購入者にとって心理的な負担となることがあります。

心理的瑕疵が告知義務に該当するか否かは、その情報が入居者や購入者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があるかどうかに基づいて判断されます。すべての心理的瑕疵が自動的に告知事項となるわけではありませんが、重要な影響を与える可能性がある事項は、適切に告知されるべきです。

例として、物件からの飛び降り自殺や過去に起きた火災、大きな事件が発生した場合などは、特にその事実が将来の借り手や購入者にとって重要な意味を持つと判断される場合、心理的瑕疵として告知する必要があります。このような情報の共有は、不動産取引の透明性を高め、借り手や購入者が全ての情報をもとに意思決定を行えるようにするために重要です。

国が定めた心理的瑕疵についてのガイドライン

国土交通省は、不動産取引における心理的瑕疵に関連するトラブルを防止するため、2021年10月に「人の死の告知に関するガイドライン」を公表しました。このガイドラインでは、物件内で発生した病死や老衰による自然死、及び日常的な不慮の死に関しては、一般に告知義務の対象外とされています。これは、そのような事例が生活の自然な一部と見なされるためです。

しかし、遺体が長期間放置されていたり、事件性や事故死との区別が明らかでない場合など、特殊な状況下での死亡は告知事項に該当する可能性があると明記されています。これにより、将来的な賃借人や購入者が適切な情報に基づいて判断できるようになります。

さらに、物件の外部で発生した死亡事故や、賃貸物件自体とは無関係な死亡については、告知義務の範囲外とされています。例えば、物件の敷地内駐車場での事故死など、直接的に居住環境や物件の使用に影響を与えない事例は、告知事項に含まれないとされています。

このガイドラインは、不動産取引における透明性と信頼性を高めることを目的としており、宅地建物取引業者による適切な告知を促進することで、消費者の保護を図るものです。

参考:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン

環境的瑕疵

環境的瑕疵とは、賃貸物件や売買対象の不動産の周辺環境に存在し、潜在的な入居者や購入者の居住意欲や購入意欲を減少させる可能性がある施設や要因を指します。この種の瑕疵は、物件自体の物理的な条件ではなく、その物件が位置する環境に由来するものです。環境的瑕疵に該当する施設や要因としては、次のようなものが考えられます:

  • ごみ処理場
  • 火葬場
  • 刑務所
  • 軍事施設
  • 空港
  • 墓地
  • 指定暴力団事務所

これらの施設が不動産の近隣に存在する場合、その情報は環境的瑕疵として潜在的な借主や購入者に告知されるべきです。告知の目的は、入居者や購入者が全ての関連情報を基に、より適切な意思決定を行えるようにすることにあります。特に、これらの施設の存在が個人の居住の快適性や資産価値に影響を与える可能性があるため、不動産取引において重要な考慮事項となります。

法的な瑕疵

法的瑕疵は、不動産が法律上の問題を抱えている状態を指します。これには、違法建築や再建築不可の土地などが該当し、特に不動産の売買取引において重大な影響を及ぼします。法的瑕疵がある物件は、将来的に法的な対応や価値の低下を招く可能性があり、これらの情報もまた、関係者が知る権利がある重要な告知事項です。賃貸市場においても、法的瑕疵は入居者の権利や利用可能性に影響を及ぼす場合があり、適切な告知が求められる状況もあります。

告知はいつまでされるのか?内容は?

原因や状況、取引の種類で期間は異なる

不動産取引における告知義務に関し、特に賃貸住宅や売買取引での必要な告知期間は、原因や取引の種類によって異なります。国土交通省が策定したガイドラインによれば、賃貸住宅では、人の死に関連する事件や事故についての告知は、その死が発覚してから概ね3年経過した場合、原則としては借主への告知は不要とされています。この3年という期間は、自然死や不慮の事故以外の死や、特殊清掃が必要な場合に適用されますが、事件性や社会的影響が高い場合にはこの限りではありません。

共同住宅の共用部分で発生した人の死に関する事件や事故についても、日常生活に影響を及ぼすエリアであれば、賃貸住宅と同様に扱われます。しかし、日常では使用しない共用部分であれば、賃貸住宅のみならず売買取引においても告知義務は発生しません。

売買取引における告知義務は、死亡事故に限らず、取引相手の判断に重要な影響を与える可能性がある事項全般に関わるものですが、告知すべき期間については特定されていません。事件の性質や公知度、社会への影響度によっては、長期間告知義務が続くこともあります。

告知時には、亡くなった人の尊厳や遺族の感情を考慮し、氏名や死亡の具体的な状況を詳細に伝える必要はありません。事件の概要のみの説明で足りる場合もあるでしょう。これらのガイドラインは、不動産取引における透明性を確保し、関係者の理解と信頼を促進するために重要です。

自然死や隣人の死亡については告知義務がない

不動産の告知義務に関して、物件内で発生した自然死や不慮の事故による死亡についての扱いは、賃貸借取引においては一般に告知義務がないとされています。このガイドラインは、物件内での老衰や持病による病死など、自然死に関して、そのような状況が居住用不動産で起こりうるものとして、一般的に予想される範囲内であると認識しています。実際、自宅での死因の大部分は、老衰や病死によるものであり、これを告知事項とするのは現実的ではないという考え方に基づいています。

ただし、例外として、一人暮らしの方が亡くなり、その発見が長期にわたって遅れた結果、特殊清掃やリフォームが必要となるような場合は告知が必要とされます。このようなケースは、特に高齢者の一人暮らしが亡くなった際に起こりやすく、発見までの期間が長引くと、周囲に不快感を与えたり、次の入居者の住環境に影響を及ぼす可能性があるため、告知事項となり得ます。

共同住宅の場合、隣室や上下の部屋で発生した事件や事故についても、原則として告知義務はないとされています。しかし、事件性や社会への影響が大きい場合は、その必要性があるかもしれません。これは、入居者や潜在的な購入者が情報を知り、適切に判断できるようにするために重要です。

以上のガイドラインは、不動産取引における透明性と公平性を確保するために設けられていますが、個々のケースによって判断が異なることもあります。入居者や購入者の安心と信頼を確保するために、適切な情報提供が求められます。

自然死にまつわる告知義務については下記のブログで詳細をまとめています。

告知義務の範囲とは

不動産取引における告知義務は、人の死に限らず、物件やその周辺環境に関する事項も含まれます。特に賃貸住宅における住民間のトラブルは、その発生原因が明確で、将来的に同様の問題が発生する可能性が高い場合には、告知事項として取り扱われることがあります。これは、次の入居者が事前に状況を理解し、適切な判断を下すことができるようにするためです。

一方で、アパートやマンションの入居者間で不審な行動を示す人がいたとしても、これが具体的な事件や問題に発展していなければ、必ずしも告知事項には該当しません。また、騒音や臭気といった住民間の問題も、一定の基準や判断に依存するため、これらをどの程度告知するかは、物件を管理する不動産会社の裁量に委ねられています。

このように、告知義務の範囲は物件の具体的な状況や、その影響を受ける可能性がある入居者への配慮に基づいて判断されます。不動産取引においては、透明性の確保と共に、入居者や購入者の利益を保護することが重要です。

不動産会社が行うべき告知義務の調査範囲

新たに策定されたガイドラインに基づき、不動産会社は宅地建物取引業法に定められた告知義務の下、取引に必要な範囲内での情報収集を通じて知り得た、取引に影響を与える可能性がある事項(例えば、人の死に関する情報など)について告知することが求められます。この情報は、貸主、売主、または管理業者から提供された告知書の記載やヒアリングを通じて得られることが多いです。不動産会社は、これらの情報が借主や買主の判断に重要な影響を与える可能性がある場合、それを告知する責任を負います。ただし、提供された情報が不明瞭であったり、情報提供者が知識がないと回答した場合には、その旨を明確に伝えることで、告知義務を果たしたとみなされます。例外として、過失があった場合はこの限りではありません。

また当該調査を行う必要性については、明らかに事件事故が過去にあった形跡のない場合においても過去遡って調査をすることを求めるものではありません。つまり人の死に関する事案が発生したか否かを自発的に調査すべき義務までは不動産業者に課すものではない点に注意が必要です。つまり不動産の買主や借主はその不動産が過去に事件事故があったことが疑わしい場合に不動産業者に自発的に問い合わせる必要があります。

告知義務のある不動産の見分け方

チラシやマイソクに備考欄に告知義務ありと記載がある

不動産の告知義務に関する情報提供において、「告知事項あり」という記載がされている物件は、心理的瑕疵、環境的瑕疵、または物理的瑕疵など、潜在的な借り手や購入者が知っておくべき重要な情報を持っていることを示します。このような情報は、物件の紹介資料やインターネットの物件情報ページなど、様々な場所に記載されることがあります。

「告知事項あり」との記載がある場合でも、具体的な告知事項の詳細は必ずしも開示されていない場合が多いです。そのため、告知事項の具体的な内容については、直接不動産会社や仲介業者に問い合わせることが必要です。法律により、これらの事項は関係者に対して明らかにされなければならないため、適切な問い合わせを行うことで、詳細な情報を得ることができます。

物件選びの過程で「告知事項あり」の記載を見つけた場合は、その物件に何らかの注意が必要な点が存在することを意味しています。重要なのは、これらの告知事項が自身の居住に与える影響を正確に理解し、納得の上で契約を進めることです。

極端に相場よりも安い

不動産取引において、物件の家賃が市場相場に比べて極端に安い場合、これは告知義務がある事項、特に心理的瑕疵が存在する可能性を示唆しています。賃貸物件におけるこのような価格設定は、以前の入居者が自然死や孤独死を遂げたり、何らかの事件や事故が発生したりした物件に対し、不動産業界で一般的に採用されている対応策です。これらの物件は、心理的な理由から次の入居者への影響を考慮し、割安で提供されることがあります。

家賃の値下げ率は、物件に関わる具体的な事情によって異なりますが、孤独死や自然死であればおよそ10%の値下げ、事件や事故が原因であれば50%、自殺が原因であれば70%から80%の値下げ率で貸し出されることが一般的です。これらの割引は、心理的瑕疵による可能性のある不快感や抵抗感を反映したものであり、賃貸市場における需要と供給の原則に基づいて調整されます。

したがって、家賃が極端に安い物件を検討する場合は、その背景にある理由を理解するため、不動産会社や仲介業者に詳細を確認することが重要です。これにより、入居前に物件に関する全ての重要情報を把握し、納得の上で契約を進めることができます。

一部リフォーム済みの表記

不動産の広告や物件情報に「一部リフォーム済み」や「フローリング張替え済み」という表現がある場合、これは物件に何らかの告知事項がある、特に心理的瑕疵や物理的瑕疵が存在する可能性が示唆されていることがあります。このような記載は、過去に物件で発生した事故や事件、たとえば水漏れ、火災、またはより深刻な事象の影響を修正または隠蔽するためのリフォームが行われたことを意味する場合があります。

事故物件の場合、特定の部分が損傷したり、事故の影響を受けたりしたために、物件のその部分だけがリフォームされることが一般的です。例えば、過去に室内で不慮の事故が発生した場合、その影響を受けたエリアのみを修復するために部分的なリフォームが施されることがあります。

したがって、物件を選ぶ際には、このような表現を見つけたら、その背景にある理由や物件の完全な履歴について、不動産会社や仲介者に詳しく尋ねることが重要です。全体的なリフォームではなく「一部リフォーム済み」と明記されている場合、その理由を明確に理解し、告知事項がある場合はその内容を把握した上で、購入や賃貸の決定を行うべきです。

フリーレントの期間が長い

不動産市場において、フリーレント期間が比較的長い物件は、潜在的な借り手に対するインセンティブとして提供されることがあります。特に、「告知事項あり」の物件の場合、通常よりも長いフリーレント期間を設けることがあり、これは物件に何らかの心理的瑕疵やその他の特別な事情があることを示唆している可能性があります。一般的なフリーレント期間が1ヶ月程度であることを考慮すると、3ヶ月以上のフリーレント期間を提供する物件は、借り手を引きつけるための特別な措置とみなすことができます。

フリーレントとは、新たな入居者に対し、契約開始から一定期間、賃料支払いの免除を提供する制度です。この制度は、特に入居率の向上や物件の魅力を高めるために利用されますが、期間が長い場合は、物件が持つ特定の問題点や告知事項による需要の低下を補うための施策である可能性が高いです。

したがって、フリーレント期間が通常よりも顕著に長い物件に関心がある場合は、その背後にある理由を理解するため、物件の管理会社や仲介業者に対し、詳細な質問を行うことが重要です。告知義務に関連する事項や物件の過去の履歴について正確な情報を得ることで、入居前に適切な判断を下すことが可能となります。

事故物件を借りても大丈夫か?

事故が気にならなければお得な物件も多い

事故物件に関する告知事項がある場合でも、その情報を特に気にしない人にとっては、これらの物件がお得な選択肢になることがあります。事故物件は、一般的な物件に比べて家賃や販売価格が安価に設定される傾向があるため、「コストを抑えたい」と考える人には魅力的なオプションです。

事故物件を選択する際に考慮すべき点は、その物件で発生した具体的な事故や事件の性質です。例えば、物件で亡くなった人が病院で亡くなった場合や自然死であって発見が遅れただけの場合など、事件性の低い状況では、心理的な負担をそれほど感じない人もいます。さらに、事故があった後に特殊清掃が行われ、大規模なリフォームを通じて室内が改善された場合、物件の状態は以前よりも良くなっている可能性があります。

現代では、インターネットを利用して事故物件に関する情報を容易に検索でき、専門のサイトでは心理的瑕疵物件のみを紹介しています。これらのサイトを活用することで、事故物件に関する詳細な情報を得ることが可能です。もし希望する物件が事故物件であることが判明した場合は、管理会社や仲介業者から詳細な説明を受けることが重要です。このように、事故物件に対する理解と適切な情報収集を行うことで、自身のニーズに合った物件を見つけることができます。

事故物件のメリットと注意点を理解すること

事故物件に住むことには、一定のメリットがあります。例えば、多くの事故物件は駅に近いなどの理想的な立地条件を備え、さらには市場価格よりも低い家賃で提供されることが多いため、経済的にも魅力を感じる人がいます。これらの物件は、コストパフォーマンスが高いという大きな利点があります。

しかし、事故物件にはいくつか注意すべき点があります。まず、物件が過去に事件や事故の現場であったことがインターネット上で公開されている場合があり、これが原因で将来的にトラブルに巻き込まれる可能性があります。また、入居時には気にならなかったとしても、実際に住んでみると、以前に人が亡くなった事実が心理的な負担となり、居心地の悪さを感じるようになるケースも考えられます。

事故物件を選択する際は、これらの注意点を踏まえ、自分や家族が快適に暮らすことができるかどうかを慎重に検討することが重要です。また、可能であれば物件の過去に何があったのか、どのようなリフォームが施されたのかなど、詳細情報を不動産会社や仲介者から入手し、十分な情報に基づいた上で冷静な判断を下すことをおすすめします。事故物件に関する正確な情報と、それに伴うリスクを理解することが、後悔のない物件選びの鍵となります。

泉俊佑

Sity,Inc.代表の泉俊佑です。同社は空き家や事故物件などの売れにくい不動産の買取再販を行う不動産業者です。同社が運営しているサービスサイトである「瑕疵プロパティ買取ドットコム(瑕疵プロ)」の運営者も務めています。宅地建物取引士。

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