親子共有名義での住宅購入のデメリットを解説します!

共有名義不動産

親子共有名義での住宅購入は、相続トラブルや物件の処分困難、ローン延滞時の連帯責任など、多くのデメリットを伴います。しかし、無理のない返済計画の作成や住宅取得支援の贈与など、共有名義を避ける方法も存在します。既に共有名義となっている場合の解決策や、持分売却の相談先についても解説。売却前のトラブル回避策を含め、親子での賢い住宅購入戦略を提案します。

共有名義とは何か

共有名義の不動産は、複数の所有者が所有権を分有する不動産のことを指し、この所有権は共有者間の合意や法律に従って、各自の権利比率や範囲を定めます。例えば、二人の共有者が不動産を3:2の比率で持つ場合、一方は60%、もう一方は40%の権利を有します。不動産の売却や重要な変更を行うには、共有者全員の同意が必須です。また、維持管理費用も所有権比率に応じて共有者が分担します。共有名義の不動産は、共有者の一人が亡くなった場合、その人の相続人に権利が移るため、相続においても複雑性が増す可能性があり、「扱いにくい物件」と見なされがちです。

親子での共有名義のメリット

親子共有名義での住宅購入には、主に次の2つのメリットがあります。まず、住宅ローンの借入可能額の増加が挙げられます。親子で共有名義を用いる場合、双方の収入を合わせた上でローンの審査が行われるため、より大きな金額を借り入れることが可能になります。これは、特に単独では希望する額のローンを組むことが難しい子供が、親の収入を加えることで購入能力を高める場合に有効です。次に、住宅ローンの借入期間の延長もメリットの一つです。金融機関は通常、ローンの完済時の年齢を70歳程度と設定していますが、親子ローンでは子の年齢が考慮されるため、ローンの返済期間を延ばすことが可能になります。これにより、高齢の親だけではローンの組み立てが難しい場合でも、より柔軟な計画が立てられるようになります。

親子での共有名義のデメリット

親子での共有名義を選択する際は、いくつかのデメリットも考慮する必要があります。主なデメリットには以下の点が挙げられます。

  1. 相続トラブルのリスク:共有名義の不動産は、共有者の一方が亡くなった場合、その所有権が相続人に移行します。これにより、未予期の相続トラブルが発生する可能性があります。例えば、他の相続人が物件の売却や管理に関して異なる意見を持つことがトラブルの原因になることがあります。
  2. 物件の処分が困難に:共有名義では、物件の売却や重要な決定を行う際に全共有者の同意が必要となります。これにより、急な資金需要や物件の処分を速やかに行いたい場合でも、すぐに行動に移せないことがあります。
  3. ローン延滞時の連帯責任:共有名義で住宅ローンを組んだ場合、一方の共有者がローンの支払いを延滞すると、もう一方の共有者にも支払いの請求が行われる可能性があります。これにより、金融的なリスクが共有者間で共有されることになります。

相続トラブルのリスク

親子で不動産の共有名義を選択することは、相続の段階で複雑なトラブルを引き起こす可能性があります。特に、購入者である子供に他の兄弟姉妹がいる場合、親の死後に不動産がすべての子供たちに等しく相続されることになると、共有物件の管理や利用に関して意見の相違が生じやすくなります。親からの援助を受けて共有名義で不動産を購入しても、親が亡くなった後、その不動産は法的に兄弟全員の共有財産と見なされるため、分配や売却に際して予期せぬ問題が発生することがあります。これらの経験からも明らかなように、相続を巡る問題は非常に一般的であり、深刻な対立を招く原因となり得ます。

なお、親子での共有持分の不動産についての相続については下記のブログに詳細の記載がありますのでご参照ください。

物件の処分が困難に

親子共有名義の物件を売却しようとした場合、全共有者からの一致した合意が必須です。これは、子供が不動産を売却したい意向があっても、親の同意が得られない限り、売却手続きを進めることができないという事態を招きます。特に、親が不動産の購入やローン返済に多大な努力と時間を費やしてきた場合、その物件に対して感情的な価値を持っている可能性があり、売却に対して強い抵抗感を示すことも考えられます。このように、親子共有名義では物件の迅速な処分が困難になることがあり、柔軟な資産管理を望む場合には障害となることがあります。

ローン延滞時の連帯責任

親子で共有名義の住宅ローンを契約した際、一方が返済義務を果たさないと、残る一方がその返済責任を負担することになります。この状況は、家族間での緊張や紛争を引き起こす可能性があります。例えば、親と子が返済計画を立て、最初の10年は親が、その後の25年は子が負担すると決めた場合、親が予定より早く亡くなった際には、子に予期せぬ返済負担が重くのしかかることになります。特に、リレーローンの形式を取る場合、団体信用生命保険(団信)への加入が子限定であることが多く、親の死によるローンの残債は子に自動的に継承され、親の部分に対する保障がないため、予期せぬ財政的負担が発生することがあります。

親子での共有名義にならない方法を検討する

無理のない返済計画を作る

この記事では、親子共有名義での住宅購入における様々なデメリットを説明してきました。親子で共有名義とならない購入方法を検討することが、これらのデメリットを避ける鍵となります。

最も効果的なアプローチは、子の経済力に基づいた無理のない返済計画を策定することです。返済負担率は、年収に対する年間ローン返済額の比率であり、この割合を適切に保つことで、親が返済を継続できなくなった場合にも、子が負担を担うリスクを最小限に抑えることができます。

親子ローンを考える際には、子の返済能力を超える借入れを避け、理想的には「手取り収入の20%以内」に返済額を抑えることが勧められています。たとえば、年間の手取り収入が400万円であれば、年間の理想的な返済額は80万円(月々約6.5万円)となります。このように計画を立てることで、経済的な負担を適切に管理し、将来的なリスクを回避することが可能になります。

親から子への住宅取得支援贈与を検討

親子で共有名義にならずに住宅購入を実現する方法として、親から子への直接的な資金援助を検討することが有効です。このアプローチでは、親が子に対して住宅購入資金を提供することになります。

贈与に関しては、年間に110万円を超える金額を子へ贈与すると贈与税が課される可能性があります。しかし、住宅購入資金としての贈与については、「住宅資金贈与の特例」を利用することにより、最大1500万円までの贈与が非課税となる可能性があります。この特例を利用すれば、親子間での大規模な資金移動が税負担なしで可能になり、住宅購入における財政的支援を効果的に行うことができます。

住宅資金贈与の特例を適用するためには、特定の要件を満たす必要があり、その詳細は国税庁のホームページで確認することが推奨されます。この特例を活用することで、親から子への支援をより効率的かつ経済的に行うことが可能となります。

既に共有名義となっている場合にはどうするべきか

親子共有名義での住宅購入に伴うデメリットを理解した上で、既に親子で不動産を共有している場合に考慮すべきリスク回避策をご紹介します。

対処法は主に以下の3つです。

  1. 不動産の共同処分:共有者全員の合意のもと、不動産を売却することでリスクを回避します。この方法は、共有者間の意見が一致している場合に有効です。
  2. 生前贈与による共有持分の移転:親が生前に子へ共有持分を贈与することで、共有名義の状態を解消します。この手法は、相続前に財産の移転を円滑に行い、相続時のトラブルを避けるために有効です。
  3. 個別共有持分の売却:自身の持分だけを売却することも一つの方法です。この場合、他の共有者の合意は必要ありませんが、持分の売却が可能かどうかは市場状況に依存します。

すでに親子共有名義で不動産を持っている方が、共有名義に伴うリスクを管理または解消したい場合、これらの方法を検討することが推奨されます。「親子で共有名義の不動産の売却方法」についてさらに詳細を知りたい方は、関連する専門記事を参照すると良いでしょう。

不動産の共同処分

親子共有名義の不動産に関して最も直接的なリスク回避策は、全共有者の一致した合意に基づく不動産の売却です。共有名義の不動産を売却する際は、全共有者の同意が必要であり、この同意が得られれば、不動産は通常の市場価格で売却することが可能です。

このアプローチは、共有者間で協力し合い、共同で売却プロセスを進められる場合に適しています。売却に向けての協議では、売却理由、価格設定、売却時期など、共有者全員が納得できる条件を明確にすることが重要です。親子間であっても、共有名義の不動産売却をスムーズに進めるためには、開かれたコミュニケーションと相互の信頼が不可欠です。

生前贈与による共有持分の移転

親子共有名義におけるリスクを軽減する第二の策として、親が生前に子に共有持分を贈与する方法があります。この手法は、不動産の全体売却を検討する際に必要とされる全共有者の合意を得るプロセスを簡素化します。特に、親が認知症などで判断能力を失った場合、不動産の売却やその他の重要な決定を迅速に行うことが困難になります。

この問題に対処するため、成年後見制度を利用する選択肢もありますが、この制度の適用には家庭裁判所での手続きが必要であり、時間と労力を要します。そのため、親の判断能力が保たれている間に共有持分を子へ贈与することは、将来にわたって不動産をよりスムーズに管理し、活用する上での問題を予防する有効な方法です。

生前贈与による共有持分の移転は、不動産の一元的な管理を子に可能とし、将来的に発生するかもしれない法的・行政的な障壁を事前に回避するための戦略的な手段となります。

個別共有持分の売却

親子共有名義の不動産に関するリスクを管理する第三の方法として、自身の共有持分のみを売却する選択肢があります。この方法では、他の共有者の承諾を必要とせず、各共有者が自己の持分に限って売却を進めることが可能です。しかし、共有持分のみの売却は、不動産を完全に自由に活用できないため、一般の個人買い手を見つけるのは難しいという課題があります。

このようなケースでは、専門の不動産買取業者に持分を売却することが一つの実行可能な解決策となり得ます。専門業者は、共有不動産の持分買取に慣れており、個別の持分でも価値を見出して取引を進めることが可能です。自己の持分を売却することにより、親子間の共有名義の状態を解消し、共有名義に起因する潜在的な紛争やトラブルを回避することが期待できます。

持分のみの売却を誰に相談するべきか

自身が保有する共有持分を売却する際、最適な相談先はどこか、という問題に直面する場合があります。結論から言うと、共有持分の売却には「一般の不動産仲介業者」や「他の共有者」との取引が難しいケースが多いため、「持分買取を専門に扱う買取業者」に相談することが最も実践的な解決策となります。

一般の不動産仲介業者は、全体の不動産を対象とした売却活動を得意としており、共有持分のみの取引には慣れていない場合が多いです。また、他の共有者も、特定の持分だけの取引には関心が薄いか、または取引に必要な合意形成が難しいことがあります。

そのため、共有持分のみを売却したい場合は、この種の取引に特化した買取業者を利用することが推奨されます。これらの業者は共有持分の価値を理解し、迅速かつ効率的に取引を進めることができるため、共有名義の不動産に関する問題解決に適しています。

一般の不動産仲介業者に売却する

一般の不動産仲介業者に自己の共有持分のみの売却に関して相談する場合、多くの場合、彼らはそのような特定のニーズを満たすための専門知識や経験を持ち合わせていない可能性が高いです。これは、一般の不動産市場では、物件全体の取引が主流であり、特定の持分のみを対象とした売買は一般的ではないためです。

その結果、持分のみの売却を希望する場合、一般の買い手を見つけることは極めて困難になります。このような状況は、持分のみの売却を検討している共有名義の不動産所有者にとって重要な課題であり、一般の不動産仲介業者を通じた通常の販売プロセスでは、解決が難しい問題と言えます。

他の共有者に売却する

持分のみの売却を検討する際、他の共有者への売却は実用的かつ効率的な選択肢となります。特に、共有者間で良好な関係が保たれている場合、市場価格に近い価格で迅速に取引が進む可能性が高まります。

他の共有者があなたの持分を購入することにより、その不動産は単独名義となり、以降は単独での管理や利用が可能になります。これは、共有者にとっても大きなメリットであり、共有状態の解消による利点が大きいため、積極的に買取りを検討するケースも少なくありません。

ただし、このアプローチは、他の共有者が持分の買取りに関心を持っていること、かつ財政的に購入が可能であることが前提です。これらの条件が揃わない場合、売却の交渉は難航する可能性があります。よって、他の共有者との事前のコミュニケーションが、スムーズな取引への鍵となります。

不動産投資家に売却する

自己の共有持分を不動産投資家に売却する選択肢は、特定の状況下で考慮に値します。不動産投資家は、投資としてのポテンシャルを重視するため、共有持分のみの購入に興味を持つことがあります。しかし、この取引方法には注意が必要です。投資家が購入を決定する前に、残りの共有者の同意や意向を確認することが一般的です。その理由は、投資家が持分を購入した後に、不動産全体の管理権や追加の持分購入に関する交渉を他の共有者と行う必要があるからです。

投資家にとっては、購入後の計画がスムーズに進まないと、期待した収益が得られないリスクがあります。そのため、事前に他の共有者の意向や交渉の可能性について調査することは、投資判断の重要な要素となります。このプロセスは、共有持分の売却が他の共有者との関係にどのような影響を与えるかを考慮する上で、売却者にとっても重要です。

持分売却の際に不動産投資家を検討する場合は、全共有者の立場や意向を明確にし、投資家との交渉において可能な限り透明性を確保することが、トラブルを避けるために重要です。

専門の買取業者に売却する

持分専門の不動産買取業者への相談は、売買を他の共有者に知られずに進めたい場合に最適な選択と言えます。この方法を選べば、売却後に名義が変更されたとしても、元の共有者にその事実が知られることは避けられるかもしれません。重要なのは、一度自分の名義が不動産から削除されれば、その時点で法的な権利関係から離脱しており、以後発生するかもしれない諸問題から自身が免れることです。

また、売却に関わる後続の交渉や手続きは、専門の不動産業者が一手に引き受けるため、売却者はその後の心理的負担や時間的負担から解放されます。これにより、共有名義の不動産からスムーズに手を引き、資産の現金化を図ることが可能になります。

売却前に他の持分所有者に知られるとトラブルになる可能性がある

共有物分割請求訴訟を起こされる

共有名義の不動産を他の共有者に知らせずに売却しようとする場合、売却が完了する前に発覚した時点で、トラブルが発生するリスクが高まります。特に、他の共有者が売却に反対する場合、共有物分割請求訴訟を起こされる可能性があります。この訴訟は、共有者間で不動産の分割について合意に至らない時に、裁判所に分割方法の決定を求めるものです。

民法第258条に基づき、共有物の分割方法には現物分割、換価分割(財産を売却してから分割)、代償分割(一方が財産を取得し、他方に金銭を支払う)などがあり、裁判所は事案に応じて最も適切な分割方法を決定します。重要な点は、共有物分割請求訴訟には共有者全員を当事者として参加させなければならないという特徴があり、一部の共有者間の争いが他の共有者をも巻き込む形で拡大する可能性があることです。

また、共有物分割請求訴訟が進行中に共有持分が第三者に譲渡された場合、民事訴訟法に基づき、譲受人が訴訟を引き継ぐ手続きが必要となります。このような状況は、共有名義の不動産の売却を考える際に、他の共有者とのコミュニケーションを密に取ることの重要性を示しています。

共有物分割訴訟については下記のブログに詳細を記載していますのでぜひご覧ください。

トラブルが過激化すると第三者が介入できなくなる

共有名義不動産において、共有者間のトラブルが激化すると、第三者、特に持分買取を専門とする業者による介入の機会が失われる可能性があります。共有者間の紛争が激化すると、新たな買い手が現れても、既存の共有者が交渉に応じないことで、不動産の名義変更や一本化などの手続きが困難になります。このような状況では、不動産の売買や持分の処理が停滞し、最終的には法的な対応を余儀なくされることが多くなります。結果的に、共有者間の対立が深まり、解決策として弁護士に相談し、法的手続きに訴える以外に方法がなくなることがあります。このプロセスは時間とコストがかかるため、共有名義不動産を扱う際は、共有者間での円滑なコミュニケーションと事前の合意形成が非常に重要です。

まとめ

本ブログのアドバイスをまとめると下記の通りとなります。

  1. 親子共有名義は複数のデメリットがあるため、可能な限り避けるべきです。
  2. 「住宅資金贈与の特例」を利用して、親から子への資金援助を検討することが有益です。
  3. 最も理想的なアプローチは、子供の返済負担率に合った無理のない返済計画を立てることです。
泉俊佑

Sity LLC 代表の泉俊佑です。同社は空き家や事故物件などの売れにくい不動産の買取再販を行う不動産業者です。同社が運営しているサービスサイトである「瑕疵プロパティ買取ドットコム(瑕疵プロ)」の運営者も務めています。宅地建物取引士。

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