自然死でも告知義務の恐れあり!法的責任を解説!

事故物件

この記事では、自然死があった物件の告知義務について詳しく解説します。告知義務の基準、心理的瑕疵と物理的瑕疵の違い、法的責任、そして告知の具体的な事例まで、さまざまな観点から考察します。さらに、事故物件の活用方法や、適切な買取業者の選び方などについても触れています。自然死と告知義務の関係性を理解することで、不動産取引をより円滑に行うことができます。

自然死は告知義務の対象となるのか?

告知義務の対象となる瑕疵に該当するかを示したガイドライン

不動産の告知義務については2020年に国土交通庁がまとめた、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」にまとめられています。

これによると、自然死のうち下記のものは心理的瑕疵に該当せず、告知義務がないものとされています。

1.老衰、病死(自然死)
2.日常生活での不慮の事故死
(自宅の階段からの転落死、入浴中の溺死、転倒事故、食事中の誤嚥など日常生活の中で生じた事故)
3.隣接住戸や通常使用しない集合住宅の共用部での死亡
(自殺・他殺を含む)

宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン

不動産会社が物件を売買する際には、上記のガイドラインに従って自然死のが告知義務の対象に当たるのかどうかを判別する必要があります。この告知義務の基準は、その死亡事故の影響や死亡の状況などを勘案したうえで、新たな居住者や購入希望者にとって不快感や恐怖感を引き起こす可能性がある稼働かを想定した上で判定されることになります。

心理的瑕疵については下記のブログでより詳細を記載しています。

ガイドラインについては下記のブログに詳細の記載があります。

心理的瑕疵の判断は主観的要素が含まれる

自然死を含む事故物件の取引において、心理的瑕疵の有無は、購入希望者の主観が大きく影響する点を理解することが重要です。心理的瑕疵の存在は、物件が自然死などの特定の出来事に関連しているかどうかに基づくものであり、これには個々人の感覚や価値観が深く関わります。物理的な欠陥と異なり、心理的瑕疵は物件の見た目や機能には直接的な影響を与えませんが、ある人にとっては受け入れがたい過去の出来事を示すことがあり、他の人には全く問題ないと感じられる場合もあります。

例えば、自然死が発生した物件は、ある人には購入の大きなネガティブ要因となり得ますが、他の人にはそれが購入決定に影響しないこともあります。従って、心理的瑕疵の判定に際しては、物件を評価する各個人の視点や価値観を踏まえる必要があり、そのためにはその判断は一律に固定することができません。

自然死が告知義務ありの心理的瑕疵と見られる場合は注意が必要

自然死がその発生の状況や、死亡後の腐敗の状況など総合的に勘案して、告知義務の対象であると考えられる場合には、売主は購入者や不動産仲介会社にその事実を適切に伝える必要があります。売主が契約時に記載した内容と異なる点があった場合、買主は代金の減額請求、契約の解除、損害賠償を選択することができるため、売主は非常に大きなダメージを受けます。これを売主の契約不適合責任と言います。

不動産仲介企業については、重要事項説明での告知事項違反(宅建業法35条)または故意にそれらの事実を伝えていなかったのであれば業法違反(47条)に該当します。この場合、買主から損害賠償請求を受ける可能性があります。

また、売主の契約不適合責任については、買主が事実を知った時から1年以内に通知をすることで成立します。後者の宅建業者の損賠賠償については、時効は存在せず、50年前の殺人事件を告知しなかった件で損害賠償を支払ったケースもあります。(平成12年8月31日東京地裁八王子支部

いずれについても、それぞれ契約不適合責任、告知義務違反とならないためリスクを感じるならば必ず買主や賃借人に告知を行うべきです。

判例でみる自然死の告知義務の有無

次に過去の判例で告知義務の有無を解説します。

腐乱遺体が見つかって売却許可決定が取り消されたケース(平成22年1月29日名古屋高裁:不動産適正取引推進機構)

自然死があった物件で腐乱遺体が見つかり、売却許可決定が取り消されたという衝撃的なケースを中心に解説します。この事例は、売却前に自然死の告知義務が果たされなかったため、大きな問題に発展しました。

概要:
競売されたマンション内で死亡後4ヵ月の腐乱遺体が発見される。民事執行法第75条1項の「損傷」に該当するとして、売却許可決定が取り消された。

判例:
死因は不明なものの、異臭が染み付くなどの物理的損傷とともに、遺体が長期にわって放置された事実は、民事執行法第75条1項の損傷に該当する。

過去の失火による死亡事故で売主の損害賠償責任が認められたケース(平成22年3月8日東京地裁:不動産適正取引推進機構)

平成22年3月8日に東京地裁で判決が下された一件を取り上げます。このケースでは、過去に失火による死亡事故が発生し、その結果、売主が損害賠償責任を負うこととなりました。この事例は、不動産適正取引推進機構によって報告され、その後の不動産取引における告知義務の解釈に大きな影響を与えました。

概要:
3年7ヵ月前の失火による死亡事故は心理的瑕疵であるとして、売主の損害賠償責任を認めた

判例:
・不慮の事故は自然死とは異なると理解され、心理的瑕疵に該当する。
・しかし仲介業者に非はないものと判断される。
・損害賠償請求1,876万円のところ200万円を認める。

この判例は、自然死があった物件の売買において、売主が買主に対して全ての情報を開示する義務があることを明確にしました。売主が死亡事故の情報を隠していた場合、それは契約違反となり、賠償責任を問われる可能性があるという重要な教訓を示しています。

死亡後4日の発見は「自然死」と判断されたケース(平成19年3月9日東京地裁:不動産適正取引推進機構)

自然死とは、一般に病気や老衰など自然な要因による死亡を指します。しかし、物件における自然死の定義や扱いは一概には決まっておらず、様々な判例が存在します。その一つが、死亡後4日経って発見された場合も「自然死」と判断されたケースです。

概要:
病死4日後に賃借人の従業員が建物内で自然死を発見。賃貸人は建物の価値下落を負ったとして損害賠償請求をしたが、賃借人の債務不履行などは認められず損害賠償請求を棄却。

判例:
・老衰や病気等による自然死は、当然に予想される。
・死後4日の発見は債務不履行や不法行為責任に該当しないため、賃借人に責任を問うことはできない。

このケースでは、死亡後の経過日数が自然死の判断基準となり、告知義務の有無に大きく影響を与えました。死後4日ではそれほど腐敗は進んでおらず、この点が心理的瑕疵なしと判断された要因でしょう。これが仮に真夏で腐敗が相当進んでいたならば、判決も変わっていた可能性があります。

自然死があった物件の利用方法と活用策

次に自然死があった物件について、それぞれ告知義務の有無でその後の取引についてどのように変わるのか整理します。

早期に発見された自然死の場合:告知なしで売却か賃貸利用も可能

不動産取引における心理的瑕疵の一例として自然死が挙げられますが、その発見が早期である場合、告知義務は発生せず、物件の売買や賃貸利用が可能となります。具体的には、物件で自然死が発生したものの、それが速やかに発見され適切な処理が行われた場合、物理的な問題がない限り、物件は心理的瑕疵とは認定されず、売買契約に影響を及ぼす告知義務も発生しません。これは、自然死の事実が新たな住民の心理的負担を軽減できるとのガイドラインによる考え方から来ています。従って、物件は通常通り売買でき、また賃貸としても利用可能となります。ただし、自然死の事実を確認し適切に処理することが重要で、そのために専門家の意見を求めることを推奨します。

瑕疵が確認された場合:告知した上での売却か賃貸利用

不動産会社との売買契約において、物理的または心理的瑕疵が発見された場合、その情報を公開し、売却もしくは賃貸利用を進めるのが通常の手続きです。自然死が起きた物件もこの例外ではありません。告知により、購入者や借り手は物件の全貌を把握し、納得の上で交渉を進めることが可能となります。告知を行うことで法的トラブルを避けることができます。しかし、告知した物件は価格が下がる傾向にあります。そのため、売却を考える場合には適正な価格設定が必要となります。また、賃貸利用を検討する場合には、借り手のニーズを深く理解し、適切な設備や改善策を提供することで物件の魅力を最大限に引き出しましょう。

心理的瑕疵の有無について不安なら専門の買取業者への売却がお勧め

自然死があった家やマンションの売却に際して、市場の状況や立地、買い手のニーズによって価格が左右されることを念頭に置くことが重要です。特に、迅速な売却を望む場合、信頼できる買取業者への直接売却が推奨されます。これらの業者は、心理的瑕疵を含む様々な要因を考慮した適正価格の提案を行い、スムーズな取引をサポートします。

選択する買取業者の信頼性と実績の確認は不可欠です。適切な買取業者を選ぶことで、売却過程での法的責任や告知義務違反のリスクを軽減し、安心して取引を進めることができます。加えて、適切な情報開示と、必要に応じた法律専門家との連携は、契約不適合責任の免責にも寄与します。

買取業者を通じた売却では、売却経費が免責されるケースが多く、売主は追加費用の心配なく、物件の価値に集中して取引を進められます。このように、自然死があった物件の売却では、信頼できる買取業者の選定、告知義務の遵守、そして法律専門家との連携が、スムーズかつ安心な取引の鍵となります。

泉俊佑

Sity,Inc.代表の泉俊佑です。同社は空き家や事故物件などの売れにくい不動産の買取再販を行う不動産業者です。同社が運営しているサービスサイトである「瑕疵プロパティ買取ドットコム(瑕疵プロ)」の運営者も務めています。宅地建物取引士。

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