アスベスト(石綿)って何?健康被害や使われている場所って?気になる話題を徹底解説

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アスベスト(石綿)はかつて建築材料として広範囲にわたり使用されていた素材ですが、その健康への害が明らかになり、現在は使用が禁止されています。特に、リノベーションの需要が高まる現代においては、アスベストを含む建材の安全な取り扱いが重要視されています。本ブログでは、アスベストの基礎知識、健康への影響、そしてマンション購入やリノベーションを行う際に必要な注意点を解説しています。アスベストについての理解を深め、安全に関わる問題を避けるための知識を得ることができます。

アスベスト(石綿)とは?

アスベストの材料・歴史・規制

アスベストは蛇紋石や角閃(せん)石などの天然に産する鉱物が繊維状に変形したもので、歴史は古く5000年以上前から「火に燃えない布」として広く利用されてきました。古代エジプトではミイラを包む布としてギリシャ神殿ではランプの芯として利用されてきました。日本では竹取物語の中でかぐや姫が球根者の一人に「焼いても燃えない布(火鼠のかわごろも)」を要求する場面がありますが、これがアスベストであったのではないかと言われています。

近代では明治20年代(1887年)にから輸入が始まり、1950年代から建築資材として広く国内の建築に利用されてきました。1960年代になって健康被害が次第に指摘されるようになりましたが、建築ラッシュの後押しもあり、アスベストの輸入はこの頃ピークを迎えました。1975年代にはようやくアスベストの利用が制限され始めました。2012年には全面禁止となりましたが、建築材料としてすでに利用されているものについては使用が禁止されてはいません。

  • 1975年 吹付アスベストの使用禁止(アスベスト含有量5%を超えるもの)
  • 1995年 アモサイト・クロシドライトの製造、輸入、譲渡、提供、使用の禁止。吹付アスベストの含有量が1%まで規制
  • 2004年10月 アスベスト含有量が1%を超える製品の輸入、製造、使用の禁止
  • 2006年9月 アスベスト含有量0.1%を超える製品の使用禁止(2012年までの猶予あり)
  • 2012年3月 2006年規制の猶予期間が完了、アスベスト使用全面禁止

アスベストの健康被害

アスベストの成分は、珪酸、酸化マグネシウム、酸化鉄が主体となっています。アスベストの繊維は極めて細かく(1本が直径0.02〜0.35㎛、髪の毛の1/5000)そのゆえ浮遊して人に吸引されやすい特徴があります。アスベストを吸引することによる人体への影響としては、肺がんや中皮腫等の病気を引き起こす恐れがあるとされています。アスベストの吸引がどれぐらいの量でこれらの健康被害を及ぼすのかは明らかとなってはいませんが、アスベストの暴露から発症まで15年〜40年の潜伏期間があるとも言われています。

アスベストの種類と健康被害には相関関係があると言われており、真綿のような形状の白アスベスト(クリソタイル)は危険性が低く、それに比べて青アスベスト(クロシドライト)と茶アスベスト(アモサイト)は形状が鋭利な直線状であり、肺細胞に刺さりやすく体外にも排除されずらいため危険性が高いとされています。なお、アスベストが含有されている建材でも、大気に飛散し人体に暴露しない状態であれば健康リスクはないと科学的に認識されています。

アスベストが広く使われていた背景

アスベストは不燃性・耐熱性、耐薬品性、絶縁性、耐蝕性、耐久性、耐摩耗性に優れ、加工しやすく、加えて安価であることから、奇跡の建材として断熱材、耐火被覆材、天井材、壁面仕上材、接着剤などに利用されていました。

アスベストが広く利用されるようになった背景には、1955年ごろからビルの高層化や鉄骨構造化に伴い、鉄骨構造の耐火被覆材として広く活用されたことがあります。鉄骨構造は熱に弱く、その弱点を補うために利用されました。

アスベストのレベルと含まれる建材の違い

アスベストのレベル

アスベストの取り扱いには、その使用される部位、使用量、および施工方法に応じて、建設業労働災害防止協会によって定められたレベル分けがあります。このレベル分けは1から3までの範囲で、レベル1は飛散性が最も高く、除去作業においては最もコストと時間が要求されます。このレベルシステムは、アスベストが含まれる建材の安全な取り扱いと適切な除去方法を確立するための基準として機能し、労働者の健康と安全を保護する上で重要な役割を果たしています。

レベルごとの使用方法、含有建材の例

レベル1

概要
レベル1は吹付け石綿と呼ばれています。アスベストとセメントを混合した素材であり、液・霧状の物質で建築物に吹きかけると固まって綿のような状態になります。最も飛散性が高く、その除去にはコストと時間がかかります。

使用箇所
主に下記の部分で使用されています。

  • 鉄骨構造の梁や柱、天井
  • エレベーターの周辺の素材
  • ビルの機械室、ボイラー室などの壁や天井
  • 行動や立体駐車場の壁や天井

使用年代
昭和30年(1955年代)〜昭和50年代(1984年)に建てられた建築物の場合使用されている可能性が高いです。また、一般的な住宅の建材としてはあまり利用されていないものでもあります。

レベル2

概要
レベル2は配管など巻きつけられる保温材や断熱材として主に利用されていました。アスベストの密度が低く軽いものが多いので、解体時に飛散するリスクがあります。ただし、レベル1と異なり配管などに巻きつけて施行されているケースなどもあり、個別に取り外しが可能になっているなど、飛散のリスクはレベル1と比較してまだ少ないと言えます。石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材、吸音材などとして利用されています。

使用箇所

  • ボイラー本体や配管、空調ダクトなど保温性が要求される箇所
  • 建物などの梁や柱や壁の耐火被覆材
  • 屋根用の折板裏断熱材
  • 煙突用の断熱材

使用年代
保温材としては、1980年ごろまで。屋根用の折板裏断熱材としては1989年ごろまで。耐火被覆材としては、1997年ごろまで、煙突用の断熱材としては、2004年ごろまで利用されていました。

レベル3

概要
レベル3は硬い板状に形成されたものが多く、割れにくく飛び散るリスクも少なくなっています。

使用箇所
使用箇所は幅広く、内装や間仕切り、床材、屋根材、設備配管など幅広く利用されています。

  • 壁や床などの内装材(フレキシブルボード、珪酸カルシウム板第一種、吸音板、石膏ボード)
  • 間仕切り(珪酸カルシウム板第一種)
  • 床材(ビニル床タイル、フロアシート、押出成形品)
  • 外装材(窯業系サイディング板、押出成形セメント板、フレキシブルボード、セメント板、スレート波板、軒天の珪酸カルシウム板第一種)
  • 屋根材(住宅化粧用スレート)
  • 煙突材(石綿セメント円筒)
  • 設備配管(対価二層菅)
  • 設備器具備品(ガスケット・パッキン)

使用年代
1980年から2006年ごろまで広く利用されていました。

アスベストの除去に必要な費用や手順

除去費用

アスベストの除去費用については、レベルごとに飛散防止対策が異なるため、費用負担や除去にかかる時間が異なります。当然レベル1の順にコストと時間がかかることになります。下記は主なレベルごとの費用の相場になります。

作業レベル作業箇所1平米あたりの単価
レベル1天井・壁などの吹付材1.5万円〜8.5万円
レベル2内装・配管・柱などの保温材、耐火被覆材・断熱材1.0万円〜6.0万円
レベル3その他建材の除去0.3万円〜1.0万円

また国土交通省が紹介しているアスベスト処理費用は以下の通りです。

アスベスト処理面積1平米当たりの解体費用相場
300平米以下2.0万円〜8.5万円
300平米〜1000平米1.5万円〜4.5万円
1000平米以上1.0万円〜3.0万円
出典:国土交通省Q40

上記はあくまでアスベストの除去費用で、解体費用や解体物の処理費用は別途発生します。

レベル1の除去費用は100平米ほどの除去工事で少なくとも150万〜ほどは発生することを見込んだ方が良いでしょう。
レベル2ならば部分的な除去となるのため、100万程度を想定した方が良いでしょう。
レベル3についても部分的な除去のため、40万〜程度を想定すべきでしょう。

解体工事の際の手続き

建物を解体する前には、アスベストの含有調査を必ず実施することが義務付けられています。特に、2006年以前に着工された建物はアスベストを含んでいる可能性が高いため、リノベーションや解体を計画する際には、施工会社がこの調査を行う必要があります。

調査は検体採取と分析によって行われ、アスベストの存在が確認された場合は、その除去工事には特別な飛散防止措置が必要となり、工期もそれに応じて延長することが予想されます。また、近隣住民への周知や説明も重要な手続きの一つとして求められます。このプロセスを通じて、アスベストによる健康リスクを最小限に抑えつつ、安全な建物の解体やリノベーションを実現します。

アスベスト除去の工事方法

アスベスト除去作業は、主に三つの方法に分類されます。

第一に「除去工法」は、アスベスト含有材料を根本から除去する方法であり、この作業には特殊な機材が必要となるため、コストが高くなります。

第二に「封じ込め工法」では、アスベスト含有材料の上から特定の溶剤を散布し、アスベスト繊維の飛散を外側から防ぐ方法ですが、この方法ではアスベストが建材内に残ります。

最後に「囲い込み工法」は、アスベストを含む部分をアスベスト以外の材料で完全に覆い隠す方法であり、封じ込め工法と同様に、アスベストはその場に残ることになります。

これらの方法は、現場の状況や将来の建物利用計画に応じて選択されます。

アスベストに注意が必要な不動産

アスベストに関する規制が段階的に導入されているため、不動産の購入や賃貸を検討する際は、特に築年数や建物の構造、内装の材料を注意深く確認する必要があります。特定の築年数をもつマンションや建物では、アスベストの使用が疑われる場合があります。また、施工された会社の過去の建築実績によっても、アスベストが使用されている可能性を推測できることがあります。これらの情報から、アスベストのリスクを有する不動産を見極め、適切な対処を行うことが重要です。

中古のマンションであれば、1975年以前着工のものは注意が必要

1975年以前に着工された中古マンションは、アスベスト規制が実施される前に建設されたため、アスベストを含む建材の使用が一般的でした。これらの物件を購入する際は、特に内装に使用されている建材に注意が必要です。アスベスト含有の可能性が高い箇所としては、壁や間仕切り、洗面所や浴室の設備、床のタイル、そしてシーリング材などが挙げられます。天井内に吹き付けられたアスベストが発見された場合、その除去や飛散防止対策には高額な費用が必要となることがあります。そのため、除去せずに天井を上から覆う方法を選択するケースもあります。これらのアスベスト除去作業の費用は、通常、購入者が負担することになります。

2006年以降に着工なら問題ない

2006年以降に建設された建物では、アスベストの使用が禁止されているため、アスベストを含む材料の使用はありません。これは、リフォームやリノベーションにも適用され、2006年以降の工事ではアスベスト含有材料が使われていないと考えられます。不動産購入やリフォーム計画時には、建物の着工年や過去に行われたリフォーム、リノベーションの範囲と時期を確認することが大切です。この情報により、アスベストのリスクを事前に評価し、安全な住環境を確保することが可能になります。

もしアスベストが出てしまったら

補助金の利用を検討

アスベストの調査や除去に関して補助金を設けている自治体があります。例えばさいたま市では一棟あたり25万円をアスベスト分析費用の上限として補助金を交付しています。また除去費用については、一棟あたり600万円を最大として、除去費用の3分の2を上限として、補助金を出しています。出典:さいたま市 民間建築物吹付けアスベスト除去等事業補助金交付について

予算に見合うように設計を変更してもらう

もし中古マンションのリノベーション中にアスベストが発見された場合、予算の範囲内で対処法を見直すことが重要です。施行会社には、コストを抑えつつ安全性を確保するための設計変更を相談します。具体的には、解体作業の範囲を限定する、アスベスト含有材料を可能な限りそのまま残し、安全な方法で覆うなどの選択肢があります。また、天井の露出を避けるために、既存の天井を維持するなどの方法も考慮されます。

泉俊佑

Sity LLC 代表の泉俊佑です。同社は空き家や事故物件などの売れにくい不動産の買取再販を行う不動産業者です。同社が運営しているサービスサイトである「瑕疵プロパティ買取ドットコム(瑕疵プロ)」の運営者も務めています。宅地建物取引士。

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