市街化調整区域内の不動産は、一般の不動産と比較して売却が難しいとされています。本記事では、市街化調整区域の特性、市街化区域、非線引き区域との違い、そしてその目的について解説します。また、市街化調整区域における不動産の売却にはどのようなデメリットがあるのか、具体的にはインフラの整備の不足、住宅ローンの取得困難、建築制限、生活の利便性の低さなどを検討します。さらに、不動産の売却方法として「仲介」と「買取」の違い、そして売却金額、売買成立までの速さ、契約不適合責任の有無についても詳しく掘り下げていきます。最後に、市街化調整区域にある不動産を仲介で売却する際のポイント、開発許可の取得可能性や都市計画法第60条証明の重要性についても触れます。
市街化調整区域とその特性
市街化調整区域とは、都市部の拡大を抑制するために設定された特定の地域のことを指します。この区域では、新たな住宅や商業施設の建設が原則として認められていません。主に、自然環境の保全や農業地帯の維持を目的として、市街化の進行を遅らせるために指定されています。例えば、東京都の多摩地区の一部がこのような市街化調整区域に指定されており、都市化が進む中で農村地帯や自然環境を保護するための措置として存在しています。この区分けは、都市計画や地域の持続可能な発展を考慮して行われている重要な要素です。
3つの都市計画区域
日本の都市計画法では、土地の利用は主に三つの区域に分類されます。これらは都市計画区域、準都市計画区域、そして都市計画区域外です。都市計画区域は、市街地を中心に、開発と環境保全のバランスを考慮しながら整備されるエリアを指します。この区域内はさらに、市街化区域、市街化調整区域、非線引き区域の3つに細分化されています。市街化区域は積極的な開発が許可される地域、市街化調整区域は開発が抑制される地域、非線引き区域はこれら二つに明確に分類されない地域を意味します。特に市街化調整区域は、自然環境や農地の保全を目的として、新しい開発が制限されている点が特徴です。
1.市街化区域
市街化区域とは、積極的に市街化が進められている地域のことを指します。この区域では、住宅の密集に加えて、生活に必要な店舗や商業施設が充実しています。さらに、この区域には将来的に市街化を進める計画がある地域も含まれます。通常、10年程度のスパンで市街化が進められることが多いです。
市街化区域内では、土地の利用目的が地域の特性に応じて細かく定められており、主に住居系、商業系、工業系のカテゴリに分類されます。これに基づいて、建物の高さや種類などの規制が設けられています。
また、市街化区域では電気、水道などの生活インフラや道路の整備が自治体によって積極的に推進されており、住民の生活環境の向上が図られています。例えば、東京23区では、河川敷を除いた全域が市街化区域に指定されており、都市機能の充実が進んでいます。
2.市街化調整区域
市街化調整区域は、無秩序な市街化を防ぎ、自然や資源を保護する目的で設定されているため、土地の利用には厳しい制限が課されています。この区域内で新しい建築物を建てることは基本的に許可されておらず、既存の建物を建て替える場合も行政の許可が必要です。
しかし、自治体への用途変更の申請が承認された場合、住宅や商業建築などの新たな開発が可能になることもあります。ただし、このような開発許可を得るためには複数の条件を満たす必要があり、プロセスは複雑です。そのため、多くの土地所有者は農地や特定の用途に縛られた土地を活用できずにいる状況が見られます。市街化調整区域におけるこれらの規制は、不動産の売買や利用に大きな影響を与える要因の一つとなっています。
3.非線引き区域
都市計画区域内には、市街化区域や市街化調整区域に分類されていないエリアが存在します。これらのエリアは「非線引き区域」と呼ばれており、将来的には都市計画に基づいて明確な区分けが行われる予定ですが、現時点では具体的な計画や規定が定められていない状態です。このため、非線引き区域は開発の可能性があるものの、その具体的な方向性や規制は未確定という特徴があります。都市計画の進展によっては、この区域の用途や規制が変更される可能性もあるため、不動産の取引においては将来の計画を見越した検討が必要になることがあります。
市街化調整区域の目的
市街化調整区域の主な目的は、無秩序な市街地の拡大を防ぎ、特に農地の保護に重点を置いています。人口増加が予想される地域では、農地が急速に減少し、都市化が進行することが懸念されるため、これらの区域は重要な役割を担っています。
市街化調整区域内では、一定の建築活動が許可されていますが、これは主に農林漁業関連の建物に限定されます。農林漁業を営む人々の住宅や、その業務に必要な設備を収容する建物の建築が認められています。これには畜舎、温室、農林漁業に必要な道具を保管する施設などが含まれます。このような規制は、地域の自然環境や農業資源を保護するために不可欠であり、市街化調整区域における不動産の特性と利用に大きく影響を与えます。
市街化調整区域は売れにくい?3つのデメリット
インフラの整備がされていない
市街化調整区域の不動産は、用途制限が厳しいため、一般の土地と比較して売買が難しいと考えられがちです。市街化調整区域には、以下のようなデメリットが存在します。
- インフラ整備の不足: 市街化区域では、自治体が計画的に水道、ガス、電気などの生活インフラを整備します。しかし、市街化調整区域はこれらの整備範囲外にあることが多く、必要なインフラの設置が個人の負担になることがあります。公道に近い場所では水道などが利用可能な場合もありますが、下水道設備が未整備であることが一般的です。この場合、浄化槽の設置が必要になります。
- 自己負担の増加: インフラを自分で整える必要があるため、その設置にかかるコストは全て自己負担となります。さらに、自治体の助成金や補助制度が利用できないケースもあり、費用負担が増加する可能性があります。
このようなデメリットがあるため、市街化調整区域内の不動産は、市街化区域内のものと比較して売れにくいとされています。特に生活インフラの不足や高額な自己負担は、購入者や投資家にとって大きな懸念材料となります。
住宅ローンが通りづらい
土地や建物の購入に際して、多くの場合は住宅ローンが利用されます。住宅ローンは、購入する不動産を担保として金融機関から貸し付けを受けるものです。しかし、市街化調整区域に位置する不動産は、その評価額が一般の不動産と比較して低いことが多いです。そのため、金融機関がローンの額に対して担保としての価値が不十分であると判断すれば、ローンの承認が難しくなる可能性があります。
この問題は、新たに建築する場合だけでなく、既存の建物を建て替えるかリフォームを行う場合にも影響します。市街化調整区域内での工事に関して住宅ローンを申請する際、同じように担保価値が問題になることがあります。このように、市街化調整区域の不動産は、住宅ローンの取得が困難な傾向があるため、購入や改築において特に注意が必要です。
建てる場合に制限がある
市街化調整区域においては、新たな建築物の建設だけでなく、既存建物の建て替えやリフォームにも制限が適用されます。これらの活動を行う際には、自治体からの事前の許可が必要です。建て替えやリフォームを行う場合、建物の容積率や建ぺい率に厳しい制限が課せられることがあり、既存の建物と比較してどの程度まで延床面積を増やすことができるかは、自治体や土地の条件によって決定されます。
そのため、市街化調整区域内での不動産購入を検討する際には、将来的な建物の使用目的や建て替え・リフォーム計画を綿密に検討し、長期的な視点での計画が求められます。こうした制限は、購入後の不動産の活用範囲を大きく左右するため、慎重な検討が必要です。
生活の利便性が悪いから
市街化調整区域に位置する不動産は、インフラの整備だけでなく、日常生活の利便性も低いという特徴があります。この区域では原則として新たな建築が制限されており、これには住宅だけでなく、日々の生活に欠かせない商業施設の建設も含まれます。
例えば、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、駅などの設置が難しいことから、市街化調整区域の住民は日常的な買い物や移動に大きな不便を感じることがあります。これらの施設へのアクセスが困難なため、車での長距離移動が必要になることが一般的です。
このような日常生活における不便さは、市街化調整区域にある不動産が市場で「売れにくい」とされる理由の一つです。購入者にとって、このような生活環境の制約は重要な検討点となります。
市街化調整区域内にある不動産を売る方法
不動産の売却方法は「仲介」と「買取」の2種類
不動産売却における主な方法は、「仲介」と「買取」の2種類です。以下でそれぞれの方法について詳しく説明します。
仲介の仕組み
仲介とは、不動産の売主が仲介業者に売却を依頼し、その業者が買主を探す方法です。このプロセスでは、仲介業者がSUUMOやアットホームなどの大手不動産情報サイトを活用して買主を見つけます。この方法のメリットは、広告を通じて広範囲に購入希望者を募ることができるため、売主はより高額での売却を目指すことが可能です。さらに、仲介を通じることで、売主は値付けの段階で比較的高い価格設定を行うことができます。
この仲介方法は、市街化調整区域内にある不動産の売却にも適用されます。市街化調整区域内の不動産は特殊な制限があるため、適切な仲介業者を選ぶことが成功の鍵となります。専門性の高い業者に依頼することで、適切な価格設定と幅広い買主への露出が期待できます。
買取の仕組み
不動産の売却方法の一つに「買取」があります。この方法では、売主が不動産を直接買取業者に売却します。買取の特徴は、売主と買取業者との直接取引にあります。
この方法では、買取業者が売主から不動産を購入し、リフォームや改装を行い付加価値を加えた後、再販することが一般的です。買取の場合、業者はリフォーム費用やその後の販売リスクを考慮して物件を評価するため、仲介を通じた売却と比較して価格が低く設定される傾向があります。
買取業者はビジネスとして運営されているため、売却価格からリフォーム費用やその他の経費を差し引いた価格で売主から不動産を買い取ります。これは、業者が利益を確保し、事業を継続するために必要なプロセスです。
市街化調整区域内の不動産においても、買取は売却の選択肢の一つとなりますが、特殊な制限があるため、買取価格や条件は一般の不動産と異なる可能性があります。売主は、売却方法を選ぶ際にこれらの点を考慮する必要があります。
仲介と買取の違い
不動産の売却方法である「仲介」と「買取」の間には、主に以下の点で大きな違いがあります。
- 売却金額の違い: 仲介を利用する場合、SUUMOやアットホームなどの大手不動産情報サイトを通じて広範囲に購入希望者を募ることが可能です。このため、市場価格に近い、またはそれ以上の金額での売却が期待できます。一方、買取では業者が直接買い取るため、リフォームや再販のコストが考慮され、市場価格よりも低い金額での売却となることが多いです。
- 売却までの時間: 仲介を利用する場合は、適切な買主を見つけるまで時間がかかる可能性があります。一方、買取は業者が直接買い取るため、比較的迅速に売却が完了します。
- 売却プロセス: 仲介では、不動産業者が買主を探し、交渉を行うプロセスが含まれます。買取では、買取業者との直接交渉と決定が主です。
市街化調整区域内の不動産の場合、これらの要因を総合的に考慮して最適な売却方法を選択することが重要です。特に市街化調整区域に特有の規制や市場の状況を理解することが、成功への鍵となります。
売却金額
市街化調整区域内の不動産の売却において、売却金額は主に売却方法によって異なります。特に、仲介を利用した売却では、SUUMOやアットホームなどの大手不動産情報サイトを通じて広範囲に購入希望者を募ることができます。このアプローチにより、市場価格に近い、あるいはそれを上回る金額での売却が可能になることが期待されます。
仲介を選択すると、売主はより多くの潜在的な買主にアクセスでき、競争を通じて最適な価格での取引が実現しやすくなります。市街化調整区域内の不動産でも、この方法は有効であり、市場の需要と供給のバランスに基づいて適切な価格設定が可能です。
この点を考慮すると、市街化調整区域内の不動産の売却を考える際、仲介を通じた売却が適切な選択肢となることが多いです。ただし、不動産の特性や市場状況によっては、買取など他の方法が適している場合もありますので、状況に応じて最良の方法を選ぶことが重要です。
売買成立までの速さ
不動産売買において、成立までの速さは売却方法によって大きく異なります。特に、買取は迅速な現金化を実現する点で優れています。買取では、売却を希望する業者が直接売主から不動産を購入するため、通常数週間程度で売却が完了し、速やかに現金化が可能です。
一方、仲介による売却は、適切な買主を見つけるまでの時間が必要です。条件の良い物件であっても、買主を見つけるまでに3か月から半年程度かかることが一般的です。市街化調整区域内の物件の場合、特殊な制限や市場の需要により、さらに時間がかかることが予想されます。最悪の場合、買主が見つからず長期間売れ残るリスクも考慮する必要があります。
これらの点から、市街化調整区域内の不動産の売却を急ぐ場合、買取が有効な選択肢となります。ただし、買取は仲介に比べて売却価格が低くなる可能性があるため、売却方法の選択には慎重な検討が必要です。
契約不適合責任の有無
不動産売却における「契約不適合責任」は、売買方法によって取り扱いが異なります。以下にその概要を説明します。
契約不適合責任とは: 売主が買主に引き渡した不動産に、契約内容と異なる点がある場合に買主に対して負う責任のことです。
仲介の場合: 仲介を通じて不動産を売却する際、買主は一般の個人が多く、売主には消費者保護の観点から買主を保護する義務があります。そのため、契約不適合責任が売主に追及される可能性があります。
買取の場合: 買取では、買主は不動産の専門家である買取業者です。このため、通常は売主の契約不適合責任が免責されることが多いです。しかし、中には契約不適合責任を免責せずに取引を行う業者も存在するため、売却契約を結ぶ前に売主の責任が免責されているかどうかを確認することが重要です。
市街化調整区域内の不動産を売る場合、契約不適合責任の扱いを理解し、それに基づいて売却方法を選択することが必要です。特に、買取の場合は売主の責任が免除される可能性が高いですが、その点を業者と確認し、契約書に明記されていることを確かめることが大切です。
市街化調整区域にある不動産は専門の買取業者への売却がオススメ
市街化調整区域に位置する不動産に関しては、宅地や農地を含め、一般の仲介よりも専門の買取業者への売却が推奨されます。その理由は、市街化調整区域特有の規制や特性により、一般の仲介を通じた売却では、買手を見つけるのが困難で、売れ残るリスクが高いからです。
専門の買取業者は、仲介を通じて売却が難しい物件や再建築不可物件に特化しており、これらの物件を積極的に買取ります。また、これらの業者は市街化調整区域にある宅地や農地を購入した後、リフォームや商品化に関するノウハウを持ち、さまざまな方法で物件を活用します。例えば、入居希望者を見つけて投資家に売却する、買取業者自身が運用して家賃収入を得る、古民家カフェや飲食店への改築などがあります。
さらに、専門の買取業者は一般の個人だけでなく、不動産投資家や事業者など多様な顧客リストを持っており、市街化調整区域にある不動産の買取においても、宅地や農地など地目に関わらず、高確率での買取が可能です。これは、長年にわたる市街化調整区域の不動産買取の経験に基づくものです。
このため、市街化調整区域にある不動産を売却する際には、一般の仲介を利用するよりも、専門の買取業者を選ぶことが効果的と言えます。
市街化調整区域にある不動産でも仲介で売れる可能性を秘めている2つの要素
開発許可を取得している(もしくは取得できる見込みがある)
市街化調整区域内に位置する不動産については、開発許可が売却の可能性を大きく左右します。特に、都道府県知事から開発許可をすでに取得している場合、または将来的に開発許可を取得できる見込みがある場合、仲介を通じての売却が現実的になります。開発許可を持つ不動産は、再建築が可能であるため、土地としての資産価値が高く評価される傾向にあります。
市街化調整区域での開発許可を受けるためには、都市計画法の要件を満たす必要があります。具体的には、都市計画法第33条の全ての条件に適合し、加えて第34条のいずれかの条件に該当することが求められます。このような許可を持つ不動産は、仲介を通じて売却する際、より魅力的な選択肢となる可能性があります。
この情報は、市街化調整区域にある不動産の売却を考慮している売主にとって重要なポイントです。開発許可の有無や取得可能性は、仲介を通じた売却の成功に大きく影響するため、これらの要素を把握し、適切な売却戦略を立てることが推奨されます。
都市計画法第60条証明に該当する
市街化調整区域にある不動産が仲介を通じて売却される可能性は、都市計画法第60条証明の有無に大きく依存します。この証明書は、建築計画が都市計画法に適合していることを証明する文書で、その存在は不動産の売却において重要な要素です。
都市計画法第60条証明 とは、建築物の新築や再建築計画が都市計画法に適合していることを証明する書面です。この書面があれば、開発許可がなくても、建物の再建築が可能であることが証明されます。これにより、通常は再建築不可能とされる物件が、再建築可能な物件として扱われ、仲介を通じての売却が容易になる可能性があります。
都市計画法第60条に該当する建物には、以下のものが含まれます:
- 農林漁業用の建物(新築)
- 公益上必要な建物
- 日常生活用品の販売・加工等、業務用の建物 など
要するに、都市計画法第60条証明がある場合、市街化調整区域内の不動産が再建築可能になるため、仲介を通じた売却の可能性が高まります。このため、市街化調整区域にある不動産の売却を検討する場合、この証明の有無は重要な判断材料となります。
まとめ
この記事では、市街化調整区域にある不動産が一般的に「売れにくい」とされる理由について詳しく解説しました。特に、市街化調整区域の不動産は、仲介を通じての売却が難しい物件や再建築不可物件が多いため、専門の買取業者への売却が推奨されます。これらの業者は市街化調整区域にある不動産の買取後に商品化するノウハウを豊富に持っており、宅地や農地に関わらず高確率での買取が期待できます。
なお、市街化調整区域内の不動産売却に関して、専門的な知識と経験を持つ業者からのサポートが重要です。不動産売却の相談や具体的な手続きについて、信頼できる専門業者に相談することが、成功への鍵となります。不動産売却においては、地域や物件の特性を理解した業者を選ぶことが重要ですので、適切な業者の選定に努めましょう。
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