不動産の「差し押さえ」とは?その流れや解除要件などを説明します

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不動産の「差し押さえ」とは、主に住宅ローンの返済ができない、税金の滞納、あるいはその他の借金によって発生する法的措置です。本記事では、差し押さえの対象、効果、解除要件、そして金融機関の対応方法について詳しく解説します。また、返済が困難な場合の解決策として任意売却についても説明し、その難易度やメリット、適切な売却相談先としての専門買取業者の役割にも触れます。差し押さえの全体像を理解することで、適切な対応策を検討するための基礎知識を提供します。

差押えとは?

不動産の「差し押さえ」とは、税金や債務の不履行により、国や地方自治体が個人の私的財産に対して行う法的措置です。このプロセスは、財産の所有者が法的義務を果たさない場合にのみ行われ、その財産は一定期間、任意の売却や処分が禁止されます。差し押さえは、債権者の権利を保護するためのものであり、財産所有者にとっては重大な影響を及ぼす可能性があります。この記事では、差し押さえのプロセス、その解除条件、およびこれに関連する法律的側面について詳しく説明していきます。

差し押さえの対象となるもの

差し押さえの主な対象は「不動産」、「動産」、そして「債権」です。これには住宅や土地、現金や預金、給料、有価証券、車、骨董品、貴金属などが含まれます。これらは基本的に現金化可能な資産です。しかし、債務者の基本的な生活を守るため、一定の財産は差し押さえの対象外とされています。例えば、66万円以下の現金、生活必需品としての家電や家具、食料や燃料、業務に欠かせない器具、仏像や位牌、実印などがこれに該当します。また、車が生活や業務に不可欠である場合、または給料が一定額を超える場合、これらも差し押さえの対象から外れることがあります。

不動産の差押えの効果と要件

差し押さえが行われると、不動産の所有者はその物件を自由に取り扱うことができなくなります。これは、不動産を売却したり、担保として使用して融資を受けたりする能力が失われることを意味します。この状況は、特に経済的に困難な状況にある個人や企業にとって、重大な問題となり得ます。

住宅ローンの返済ができないケース

住宅ローンの返済が滞ると、金融機関は返済についての通知、督促状の送付、一括返済の要求を行い、最終的には代位弁済を実施します。このプロセスが完了すると、裁判所から競売開始決定通知書が届き、不動産は差し押さえられます。表面上は差し押さえまでに時間的余裕があるように見えますが、実際には初期段階の滞納、特に最初の1~2ヶ月内に金融機関との相談を行うことが非常に重要です。早期の対応により、返済計画の見直しや月々の返済額の軽減など、差し押さえを防ぐための対策を講じることが可能です。

税金の滞納により差押さえられるケース

税金が滞納されると、まず役所から督促状が送付され、その後電話や文書で催告が行われます。この段階で対応がない場合、役所による財産調査が進み、最終的には不動産の差し押さえが行われます。法律では、督促状の送付から10日以内に差し押さえることが定められていますが、実際の進行はケースバイケースです。税金の滞納による差し押さえは、裁判所の許可なしに行われるため、注意が必要です。

また、税金の回収を目的とした不動産の売却は「公売」と呼ばれ、その手続きや条件は競売と異なりますが、落札価格が市場価格の約70%前後になる点は共通しています。

借金があって差し押さえられる

借金の返済が滞ると、債権者はまず「差し押さえ予告通知」を送付します。その後、裁判所から「支払督促」が届き、さらに「仮執行宣言付支払督促」が続きます。これらの手続きが完了すると、最終的に不動産の差し押さえが行われます。差し押さえまでの期間は債権者によって異なるため、予告通知を受け取ったら迅速な行動が必要です。

金融機関による住宅ローンの滞納に基づく差押えの効力とその後の手続き

金融機関による不動産差押えの理解

金融機関が不動産を差し押さえる主なケースは以下の2つです。第一に、住宅ローンなどで不動産を担保としている場合、金融機関は担保権者として差し押さえることがあります。第二に、フリーローンのように担保を提供しない借金がある場合、金融機関は一般の債権者として差し押さえを行うことができます。

本ブログでは住宅ローンの返済が滞った場合の差押えとその後の効力について中心に解説します。

金融機関はなるべく競売を避けたいと考えている

金融機関にとって、不動産の競売は避けたい選択肢です。なぜなら、競売手続きには裁判所への予納金として50万円~100万円の支払いが必要で、事務的な手間も伴います。そのため、金融機関は返済に困難を抱える債務者に対して、「任意売却」、つまり債務者が自ら不動産を市場で売却することを勧めることが多いです。

住宅ローンの支払い滞納が競売に至るまでの典型的な流れとしては、まず3ヶ月程度の滞納が続くと保証会社による「代位弁済」が行われます。これは、保証会社が債務者に代わり金融機関に負債を返済することを意味します。その後、債務者からの一括返済がなく、滞納が半年以上続く場合、保証会社は担保としている不動産を差し押さえ、競売手続きを開始します。

差し押さえをされた不動産はどうなる?

差し押さえられた不動産は、債権者が債権を回収する目的で不動産競売にかけられます。この競売は、ある種の不動産オークションで、最低価格が設定され、入札者がそれを上回る価格で競う方式です。競売で得られた代金が残債を上回る場合、債権者は適切な金額を受け取ります。もし他に債務がある場合は、余剰金がそれに充てられます。一方、代金が残債を下回る場合でも、債権者は差額を請求することが可能です。

通常、担保として設定される不動産の価値は貸付金額よりも高いため、不動産価値の大幅な低下がない限り、差し押さえによって生じる損失は限定的であることが一般的です。

差押えを解除の要件

差押え解除の要件

不動産の差押え解除には、一般的に「全額弁済」が基本条件です。これは、残債務や遅延損害金等を完全に支払うことを意味します。特に、経済的に余裕がある場合、不動産売却による売却金額でカバーしきれない部分を債務者自身の資金で補填し、抵当権を完済することが要求されます。しかし、多くの場合、売却だけでは債務の完済が難しいため、実際に差押えを解除するためには、金融機関との交渉を通じて、合意に基づく金額での差押え取り下げが必要です。この際、債務の減額はなく、一部の支払いにより差押えが解除されるのみであり、担保がなくなった後も残債務の支払いが続きます。また、任意売却と異なり、競売や公売の場合は交渉の余地がなく、手続きによって強制的に抹消されます。

完済できない場合には任意売却という方法がある

不動産が「差し押さえ」された場合、その不動産は通常、債務者が滞納している税金や住宅ローンを完済し、債権者から差し押さえ登記の解除を受けない限り売却することはできません。しかし、差し押さえの状況においても、債務者には不動産を売却する選択肢が存在します。それが「任意売却」です。

任意売却は、債権者の同意のもとで差し押さえ登記を解除してもらい、債務者が自ら不動産を市場で売却する手続きです。このプロセスは、通常の売却とは異なり、債権者との交渉や同意が必要となりますが、差し押さえ状態での完済が困難な場合に有効な方法です。この記事では、任意売却の具体的な流れ、債権者との交渉の難易度、および任意売却のメリットについて詳細に解説していきます。

任意売却の難易度は債権者によって異なる

不動産が「差し押さえ」された場合、その解決策の一つとして「任意売却」がありますが、この任意売却の実現可能性は債権者によって大きく異なります。

  1. 金融機関が債権者の場合 金融機関が債権者である場合、任意売却のプロセスは比較的容易です。金融機関は競売よりも任意売却の方が債権回収額が大きくなる可能性があることを理解しているため、債務者が任意売却を提案すると、多くの場合で了承されます。
  2. 個人が債権者の場合 個人が債権者の場合、任意売却の可否は債権者の考え方や債務者との関係に左右されます。個人債権者が任意売却に関する知識を持っていない場合や、債務者を信用していない場合は、交渉が難しくなる可能性があります。
  3. 国や自治体が債権者の場合 税金の滞納による差し押さえの場合、債権者が国や自治体であるため、任意売却が実現することはほとんどありません。しかし、債務者が納税に関する誠意を見せることで、場合によっては柔軟な対応が期待できることもあります。

以上のように、債権者の種類によって任意売却の可能性が大きく変わるため、差し押さえ状況にある債務者は、自身の状況に最適な戦略を考えることが重要です。

任意売却のメリット

任意売却を選択することには、債務者にとっていくつかのメリットがあります。競売や公売を避けることで得られる主な利点を以下に紹介します。

  1. 高額での売却が可能 一般的に、任意売却は競売や公売に比べて高額での売却が可能です。これにより、残債を大きく減らすことができ、その後の返済が楽になる可能性があります。
  2. 引っ越し費用のサポート 競売や公売では、物件の強制売却後に引っ越しを行う必要がありますが、引っ越し費用は自己負担となります。対して、任意売却の場合、多くの状況で10万円から30万円程度の引っ越し費用をサポートしてもらえることがあります。
  3. プライバシーの保護 競売や公売では、物件情報が公開され、周囲の不穏な雰囲気や近隣住民への知られるリスクが高まります。一方で、任意売却では物件の差し押さえ情報が公表されず、市場で通常の不動産と同様に売り出されるため、ローン滞納や税金滞納の事実が周囲に露見することが少なくなります。

ただし、すべての不動産会社が任意売却に対応しているわけではないため、適切な不動産会社を選ぶことが重要です。

売却相談は専門の買取業者にすると良い

差し押さえられた不動産の任意売却は、通常の不動産取引とは異なる高度な専門性を要求されるため、すべての不動産会社が対応可能ではありません。任意売却を成功させるためには、特に専門の買取業者に相談することが重要です。

  1. 専門性が必要 任意売却は、単なる不動産売却とは異なり、債権者との交渉による許可が必要です。そのため、任意売却に精通し、積極的に実施している専門の不動産会社の支援が求められます。
  2. 一般仲介業者の限界 一般の不動産仲介業者は主に買手を公開市場で探しますが、任意売却の場合は高いリスクを伴い、成功報酬型のビジネスモデルでは対応が難しいことが多いです。購入予定者が最終的に購入を行えない場合、仲介業者の労力は無駄になり、期限内に新たな買主を見つけることが困難になる可能性があります。
  3. 買取業者のメリット 一方で、買取業者は直接物件を買い取るため、公開市場での買手探しとは異なるアプローチを取ります。これにより、一般の買主を探すプロセスを省略し、迅速かつ確実に不動産を売却することが可能です。特に、任意売却の期限が迫っている場合や、他の方法で売却が難しい物件にも対応できるため、買取業者への依頼は有効な選択肢となります。

ただし、すべての買取業者が任意売却に対応しているわけではないため、実績や経験豊富な専門業者を選ぶことが肝心です。

泉俊佑

Sity LLC 代表の泉俊佑です。同社は空き家や事故物件などの売れにくい不動産の買取再販を行う不動産業者です。同社が運営しているサービスサイトである「瑕疵プロパティ買取ドットコム(瑕疵プロ)」の運営者も務めています。宅地建物取引士。

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