底地相続の悩み、固定資産税、地代、相続税…所有し続けるべき?

底地・借地

土地を貸している地主の皆様、底地の処分にお困りではありませんか?

土地の値上がりによる固定資産税の負担増、地代の値上げの難しさ、そして底地特有の利用制限…。これらの問題を抱えながら、底地を相続させることに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

特に、複数の土地を所有している地主様にとっては、相続税の負担や納税資金の確保、相続人の生活資金なども悩みの種です。

本記事では、底地を相続する際の課題である「売却の難しさ」と「相続税の負担」について詳しく解説します。底地相続にお悩みの方、ぜひ最後までお読みいただき、今後の対策にお役立てください。

  1. 底地と借地、底地権と借地権の違いを分かりやすく解説
    1. 底地と底地権
    2. 借地と借地権
    3. まとめ
    4. 底地には普通借地権と定期借地権がある
      1. なぜ定期借地権が生まれたの?
      2. 定期借地権の種類
      3. 定期借地権のメリット・デメリット
        1. メリット
        2. デメリット
  2. 底地のデメリット
    1. 底地は利用が制限される
    2. 底地は担保的価値が低く融資が難しい
    3. 地代の値上げは簡単ではない、借地借家法による借地人の保護
    4. 借地人とトラブルになる可能性がある
    5. 相続税することにメリットが感じられない
      1. 具体的なケースで検証
      2. 相続後の負担とリスク
    6. 底地所有者が固定資産税を負担する
      1. 底地の固定資産税、なぜ高い?
      2. 固定資産税が収益を圧迫する?
  3. 底地の相続税評価額と相続税
    1. 底地の評価方法
      1. 底地の相続税評価額の計算式
      2. 借地権割合による影響
    2. 底地の相続税評価額の仮定計算
    3. 相続税の税額
    4. 相続税の具体例
      1. 1. 相続税の総額の計算
      2. 2. 各相続人の相続税額の計算
    5. まとめ
  4. 底地の相続時の注意点
    1. 相続税額を事前に知っておく
    2. 相続人は単独所有にする
  5. 底地の売却の方法とは?
    1. 借地権者に買い取ってもらう
      1. 借地人にとってのメリット
      2. 地主にとってのメリット
      3. 注意点
    2. 底地と借地の同時売却を行う
      1. 同時売却のメリット
      2. 注意点
      3. 借地権割合の考慮
    3. 底地と借地の等価交換をする
      1. 等価交換の仕組み
      2. 等価交換のメリット
      3. 等価交換の注意点
      4. 等価交換が向いているケース
    4. 業者に買い取ってもらう
      1. 専門買取業者とは?
      2. なぜ専門買取業者は底地を買い取れるのか?
      3. 専門買取業者に売却するメリット
  6. そのほか、売却を検討した時に整理しておくべきこと
    1. 古い土地の賃貸借契約書を確認して場合によっては契約書を作り直す
      1. 契約書を作り直すメリット
    2. 地代を再検討することで利回り向上に努める
      1. 地代増額交渉のポイント
      2. 地代等増額請求という選択肢
      3. 将来的な利益と費用を天秤にかける
  7. まとめ

底地と借地、底地権と借地権の違いを分かりやすく解説

不動産用語は、似通ったものが多く、その意味を正確に理解するのは容易ではありません。中でも、「底地」と「借地」、「底地権」と「借地権」は、混同されやすい代表的な言葉と言えるでしょう。

底地と底地権

底地とは、他人が建物を所有するために、賃借権や地上権が設定されている土地のことです。つまり、誰かが家を建てて住んでいる土地で、その土地の所有者が「底地を所有している」と言います。底地の所有者は、土地を貸している代わりに、借地人から地代(家賃)を受け取ります。

底地権は、この底地に対する所有権のことです。底地権は土地の権利なので、売買や相続の対象となります。相続した場合には、相続税の課税対象にもなります。

借地と借地権

借地とは、建物を所有するために賃借権が設定されている土地のことです。「底地」と意味は同じですが、こちらは土地を借りている人の視点で使われます。借地人は、土地を借りているので、その土地の所有者である地主(底地権者)に地代を支払う必要があります。

借地権は、借地人が土地を利用できる権利のことです。借地借家法という法律で保護されており、借地人が安心して土地を利用できるように定められています。借地権も底地権と同様に、売買や相続の対象となります。

まとめ

用語説明立場
底地他人が建物を所有するために賃借権や地上権が設定されている土地のこと。土地の所有者
底地権底地に対する所有権のこと。土地の所有者
借地建物を所有するために賃借権が設定されている土地のこと。「底地」と同じ意味だが、土地を借りている人の視点で使われる。土地の借主
借地権借地人が土地を利用できる権利のこと。借地借家法で保護されている。土地の借主

底地には普通借地権と定期借地権がある

土地を借りる際に設定される賃借権の種類には、普通借地権定期借地権があり、底地権者の権利はそれぞれの借地権の種類によって制限が異なります。

定期借地権と普通借地権の最も大きな違いは、契約の更新の有無です。

  • 普通借地権: 契約期間が終了しても、更新することができます。更新を拒否するには、「正当な事由」が必要となります。
  • 定期借地権: 契約期間が終了すると、契約は自動的に終了し、更新はできません。

なぜ定期借地権が生まれたの?

定期借地権が生まれる前は、普通借地権しかありませんでした。しかし、普通借地権は更新がほぼ確実なため、土地を貸す側は「一度貸したら土地が戻ってこない」という不安を抱えていました。このため、土地の貸し渋りが起こり、土地活用の妨げになっていました。

そこで、土地を貸す側の不安を解消し、土地活用を促進するために、平成4年に定期借地権が創設されました。

定期借地権の種類

定期借地権には、以下の3種類があります。

  1. 一般定期借地権
  2. 事業用定期借地権等
  3. 建物譲渡特約付借地権

それぞれの違いを見ていきましょう。

種類一般定期借地権事業用定期借地権等建物譲渡特約付借地権
根拠条文(借地借家法)第22条第23条第24条
利用目的の制限なし事業用のみなし
存続期間50年以上10年以上(ただし、事業用建物が存在する場合は30年以上)30年以上50年未満
契約方式特約を書面で作成公正証書のみ有効規定なし
契約更新・期間延長なしなし建物譲渡により借地権は消滅

定期借地権のメリット・デメリット

メリット
  • 土地を貸す側: 契約期間が終了すれば土地が確実に返還されるため、安心して土地を貸すことができます。
  • 土地を借りる側: 土地の購入に比べて初期費用を抑えることができます。
デメリット
  • 土地を貸す側: 契約期間が終了すると、更地に戻す必要がある場合があります。
  • 土地を借りる側: 契約期間が終了すると、建物を解体するか、土地の所有者に買い取ってもらう必要があります。

定期借地権は、土地の有効活用を促進するための制度です。土地を貸したい、借りたいと考えている方は、ぜひ定期借地権について検討してみてください。

なお、本ブログでは、明確な使用期限がなく、相続時の出口戦略が立てにくい普通借地権を中心に解説します。定期借地権の相続税評価額や底地の評価については、下記のブログで詳しく解説していますので、そちらをご覧ください。

底地のデメリット

底地を所有することには、様々なデメリットが伴います。これらのデメリットは、最終的に底地を売却したり処分したりすることを難しくする要因となります。以下に、具体的なデメリットについて詳しく解説していきます。

底地は利用が制限される

底地は、一見すると土地を所有しているように見えますが、実際には所有者の自由な活用が制限されるというジレンマを抱えています。

このジレンマは、底地権が「土地を貸している権利」であることに起因します。底地の上に借地権が設定されている限り、所有者はその土地を自由に使うことができません。借地人が土地を利用している以上、所有者はその利用を制限したり、土地の用途を変更したりすることは原則としてできません。

例えば、底地を所有していても、駐車場経営や希望する建物の建築は、借地人の承諾なしには行えません。また、借地借家法は借地人を保護しているため、たとえ定期借地権の場合でも、契約期間中は所有者が一方的に契約を解除することもできません。

このように、底地は所有していても自由な活用が難しい土地と言えるでしょう。この制限された所有権は、底地を購入したいと考える人を少なくし、売却を困難にする要因の一つとなっています。

底地は担保的価値が低く融資が難しい

底地の売却を検討する際、立ちはだかる大きな壁の一つが「融資」です。

底地は、その特殊な権利形態から、市場での評価額が低く設定される傾向にあります。これは、底地権が土地の所有権そのものではなく、あくまで「土地を貸す権利」であることに起因します。

金融機関は、融資の際に担保となる不動産の価値を重視します。しかし、底地は売却価格が低いため、担保価値も低く評価されてしまいます。そのため、金融機関は底地を担保にした融資に消極的にならざるを得ません。

底地は確かに通常の土地に比べて安価ですが、それでもまとまった資金が必要となるケースがほとんどです。購入希望者がいても、融資を受けられないという現実は、購入を諦めざるを得ない状況を生み出しています。

このように、底地の低い担保価値が融資のハードルを上げ、結果として売却を困難にしています。

地代の値上げは簡単ではない、借地借家法による借地人の保護

底地を所有する上で、安定した地代収入は魅力的ですが、その値上げは容易ではありません。なぜなら、借地借家法という法律が借地人の権利を強く保護しているからです。

借地借家法は、地代の値上げを無制限に認めるのではなく、一定の条件を満たす場合にのみ許可しています。例えば、土地の固定資産税や周辺の地価の上昇、経済状況の著しい変化など、客観的な事情の変化が必要です。さらに、借地契約時に「一定期間地代を増額しない」という特約がある場合は、その期間中は地代を上げることができません。

仮に値上げが認められる状況であっても、地主の一存で決定することはできません。まずは借地人と協議し、合意形成を目指さなければなりません。もし合意に至らなければ、調停や裁判といった法的手続きが必要となり、時間と費用がかかる可能性もあります。

このように、借地権の地代は法律によって厳格に定められており、地主の都合だけで簡単に値上げすることはできません。地代収入を安定収入源として期待する底地所有者にとっては、この点は十分に留意すべきポイントと言えるでしょう。

借地人とトラブルになる可能性がある

借地契約は、その権利関係の複雑さから、様々なトラブルを引き起こす可能性を孕んでいます。

地代の滞納といった悪意のあるものから、借地人が無知ゆえに第三者に転貸してしまうケースまで、その内容は多岐にわたります。

代表的なトラブルとしては、

  • 地代の滞納
  • 地代の値上げに応じてもらえない
  • 更新料の未払い
  • 無断での建て替えや増改築
  • 無断転貸

などが挙げられます。

相続税することにメリットが感じられない

底地を相続すると、一見すると安定した地代収入が得られる資産のように思えますが、実際には相続するメリットを感じにくい側面があります。

その理由は、主に以下の2点です。

  1. 活用制限による資産価値の低下: 底地は借地権によって利用が制限されるため、所有者の自由な活用が難しく、市場での売却価格も低くなる傾向があります。
  2. 高額な相続税評価額: 底地の相続税評価額は、路線価に地積と底地割合(1 – 借地権割合)を乗じて算出されます。しかし、この評価額は実際の売却価格を上回るケースが多く、相続人は市場価値以上の税金を支払わなければなりません。

具体的なケースで検証

例えば、路線価が1平方メートルあたり10万円、地積が200平方メートル、借地権割合が60%の底地の場合、相続税評価額は800万円となります。しかし、実際の売却価格は、借地権の存在や土地の利用制限により、この評価額を大きく下回る可能性があります。

相続後の負担とリスク

相続人は、売却も難しい底地を相続し、市場価格よりも高い相続税を負担することになります。さらに、底地を所有し続ける限り、固定資産税や借地人とのトラブルリスクも抱え続けることになります。

なお、相続税評価や相続税の負担については後ほど詳細を解説します。

底地所有者が固定資産税を負担する

固定資産税は、土地や建物の所有者に課される税金であり、底地も例外ではありません。所有している限り、毎年固定資産税を支払う義務が生じます。

底地の固定資産税、なぜ高い?

底地の固定資産税は、その土地の評価額に基づいて計算されます。評価額は、国が定める路線価や固定資産税評価額などを参考に算出されますが、借地権の存在や土地の利用制限などにより、実際の売却価格よりも高くなるケースが多いのが特徴です。

つまり、底地所有者は、市場価格よりも高い評価額に基づいて固定資産税を支払わなければならない可能性があるのです。

固定資産税が収益を圧迫する?

底地は自由に活用できないため、固定資産税を支払うために地代収入を充てる必要があります。これにより、手元に残る収益が圧迫され、賃貸収支の効率性を低下させる要因となります。

さらに、固定資産税は毎年課税されるため、長期的に所有し続けるほど負担は増大します。特に、地代収入が少ない場合や、借地人が地代を滞納している場合などは、固定資産税の負担が収支を圧迫する可能性も出てきます。

底地の相続税評価額と相続税

これまで、底地は利用制限があるため購入希望者が少なく、市場での売却価格が低いことを解説してきました。しかし、相続した場合、その評価額と相続税の負担はどのようになるのでしょうか?

本章では、底地を相続する際の評価額と相続税の負担について詳しく解説し、底地相続の現実を明らかにします。

底地の評価方法

相続税評価額を計算する上で、まず重要なのが「自用地としての評価額」です。これは、その土地を自分が所有し、自由に利用できる状態(借地権がない状態)を想定した評価額です。

自用地としての評価額は、主に以下の2つの方法で算出されます。

  1. 路線価方式: 国税庁が公表する路線価(道路に面した土地1平方メートルあたりの価格)に、土地の面積を掛けて算出します。
  2. 倍率方式: 固定資産税評価額に、国税庁が定める倍率を掛けて算出します。(路線価が設定されていない地域に適用されます。)

自用地の評価方法については、下記のブログで実際の路線価図を活用しながら計算方法を解説しています。

底地の相続税評価額の計算式

底地の相続税評価額は、以下の計算式で求められます。

底地の相続税評価額 = 自用地としての評価額 × (1 - 借地権割合)

ここで登場する「借地権割合」は、底地の評価額を下げる重要な要素です。借地権割合は、借地権の価値が底地の価値に占める割合を示しており、地域や土地の利用状況などによって異なります。国税庁が公表している路線価図や評価倍率表で確認することができます。

借地権割合による影響

借地権割合が大きくなるほど、底地の相続税評価額は低くなります。これは、借地権の存在によって底地所有者の権利が制限され、土地の価値が下がるためです。

底地の相続税評価額の仮定計算

仮に路線価10万円、借地権割合60%、地積200平米の底地を所有している場合の相続税評価額は下記の通りとなります。

自用地の評価額:100,000円 × 200平米 = 20,000,000円
底地の相続税評価額:20,000,000円 × (1-60%) = 8,000,000円

相続税の税額

底地を相続する際、相続税の負担額は、底地単独の評価額に相続税率を単純に乗じて計算されるわけではありません。

相続税は、底地を含む全ての相続財産の合計額から、法定相続人の数に応じた控除額を差し引いた金額に対して課税されます。つまり、他の相続財産が多いほど、相続税の負担額は大きくなる可能性があります。

逆に、他の相続財産が少ない場合や、相続人が多い場合には、相続税が課税されないケースも考えられます。

底地を相続した場合の相続税の負担額は、他の相続財産との関係によって大きく変動します。そのため、相続が発生する前に、税理士などの専門家に相談し、具体的な相続税額を試算してもらうことをおすすめします。

相続税の具体例

ここで相続税における底地の税額を簡単に計算して見ましょう。なお、あくまで仮定での計算であり、その他の財産の状況や遺言の存在などにより税額は増減します。

被相続人:父
相続人:母、息子2人
相続財産(金額は相続税評価額):金銭(1000万)、自宅である土地建物(5000万)、底地(800万)

1. 相続税の総額の計算

相続財産の合計額

  • 金銭:1,000万円
  • 自宅である土地建物:5,000万円
  • 底地:800万円
  • 合計:6,800万円

法定相続分

  • 母:1/2
  • 息子2人:それぞれ1/4

基礎控除額

  • 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
  • 3,000万円 + (600万円 × 3人)
  • 4,800万円

課税価格

  • 相続財産の合計額 – 基礎控除額
  • 6,800万円 – 4,800万円
  • 2,000万円

相続税額

課税価格が2,000万円の場合、相続税率は10%となります。

  • 課税価格 × 相続税率
  • 2,000万円 × 10%
  • 200万円

2. 各相続人の相続税額の計算

母の相続税額

  • 相続税の総額 × 母の法定相続分
  • 200万円 × 1/2
  • 100万円

各息子の相続税額

  • 相続税の総額 × 各息子の法定相続分
  • 200万円 × 1/4
  • 50万円

まとめ

今回のケースでは、相続税総額は200万円となり、母が100万円、息子2人がそれぞれ50万円を負担することになりました。

1,000万円の現預金から相続税200万円を納めると、残りは800万円。自宅と底地は残りますが、底地は活用が難しく、地代収入以外に大きな収益は期待できません。

もし今後、まとまったお金が必要になった場合、底地の売却が選択肢となりますが、底地は売却が難しいため、希望のタイミングで売れるとは限りません。

相続税の納税や、残された家族の生活資金を考えると、底地を相続する前に、より有利な条件で売却できる方法を検討することが重要です。

注意点

  • 今回の計算は、小規模宅地等の特例などを適用しない場合のものです。
  • 実際の相続税額は、各種控除や特例によって変動する可能性があります。
  • 正確な相続税額は、税理士などの専門家にご相談ください。

底地の相続時の注意点

底地については利用が制限されているため地代家賃を得るしか相続するメリットはありませんが、相続に際して注意すべきことがあります。下記解説します。

相続税額を事前に知っておく

底地を相続する前に、必ず把握しておきたいのが「相続税額」です。底地の相続税評価額は、実際の売却価格よりも高くなる可能性があり、相続後に売却しようとしても、相続税額を下回る価格でしか売れないという事態に陥ることがあります。

相続税額を事前に把握しておくことで、このような状況を避けることができます。慌てて底地を売却する必要がなくなり、じっくりと売却方法を検討したり、周囲との権利関係を調整したりする余裕が生まれます。

相続人は単独所有にする

兄弟姉妹がいる場合、親から底地を相続する際、共有名義ではなく単独名義での相続を強くおすすめします。

通常の土地であれば、共有名義での相続も選択肢の一つですが、底地は事情が異なります。底地は、相続前から既に借地人と被相続人の間で権利が分かれており、権利関係が複雑な不動産です。そこにさらに相続人が複数加わると、地代の分配や借地人との交渉など、トラブルが発生するリスクが高まります。

例えば、地代の分配方法や借地人との交渉方針について、相続人同士で意見が食い違う可能性があります。また、底地を売却したい場合でも、共有名義だと全員の合意が必要となり、手続きが難航する可能性も考えられます。

このようなトラブルを未然に防ぐため、相続時には単独名義での相続を目指し、遺産分割協議で十分に話し合いを重ねることが重要です

底地の売却の方法とは?

底地の売却は、周囲との権利関係の調整や交渉に時間がかかる場合があります。そのため、相続が発生する前に、計画的に売却を進めることが理想的です。事前に時間をかけて売却方法を検討することにより、より有利な条件で売却できる可能性が高まります。そうすることで納税資金を確保できるなどのメリットにもつながります。

以下に、底地の売却先とそのポイントを解説します。

借地権者に買い取ってもらう

底地を売却する際、最も有力な候補となるのが、その土地を借りている借地人です。借地人にとって底地を購入することは、様々なメリットがあるため、一般の個人には売却が難しい底地でも、購入を検討してくれる可能性があります。

借地人にとってのメリット

借地人は、底地を購入することで、

  • 地代負担からの解放: 毎月支払っていた地代が不要になります。
  • 土地の自由な活用: 駐車場経営や建物の建て替えなど、自由に土地を活用できるようになります。
  • 資産価値の向上: 土地と建物の所有権が一体化することで、資産価値が向上し、将来的な売却も有利になります。

といったメリットを得られます。

地主にとってのメリット

地主にとっても、借地人に底地を売却することは、

  • 高値での売却: 借地人は、底地購入のメリットを享受できるため、一般の個人よりも高い価格で購入してくれる可能性があります。
  • スムーズな取引: 既に借地人との関係が築かれているため、スムーズに売買交渉を進めることができます。
  • トラブル回避: 借地人が底地を所有することで、地代滞納や土地利用に関するトラブルを未然に防ぐことができます。

といったメリットがあります。

注意点

ただし、借地人に底地を売却するには、以下の点に注意が必要です。

  • 借地人の購入意欲と資金力: 借地人に底地を購入する意思と資金力があるかを確認する必要があります。
  • 価格交渉: 借地人にとって魅力的な価格を提示する必要があります。
  • 専門家のサポート: 不動産売買に関する専門知識が必要となるため、不動産会社などの専門家に相談することをおすすめします。

借地人に底地を売却することは、双方にとってメリットのある解決策ですが、実現可能性は相手の状況に左右されることを理解しておきましょう。

もし借地人が底地の購入に前向きであれば、専門家のサポートを受けながら、双方にとって納得のいく取引を目指しましょう。

底地と借地の同時売却を行う

借地人が借地権の売却を検討している場合、「底地と借地の同時売却」という選択肢があります。

これは、底地と借地をセットで販売する、いわば不動産の「パッケージ販売」です。購入者は、底地と借地を同時に購入することで、その土地の完全な所有権を取得できるため、底地単体で売却する場合よりも魅力的に映り、買い手が見つかりやすくなります。

同時売却のメリット

  • 買い手が見つかりやすい: 完全な所有権を取得できるため、購入希望者が増える可能性があります。
  • 市場価格での取引: 底地単体での売却よりも、より市場価格に近い金額での取引が期待できます。
  • スムーズな取引: 借地人と協力して売却を進めることで、手続きがスムーズに進みやすくなります。

注意点

同時売却を行うには、以下の点に注意が必要です。

  • 借地人の同意: 借地人が借地権を売却する意思を持っていることが前提となります。
  • 売却金の分配: 事前に借地人と売却金の分配方法について明確に合意しておく必要があります。
  • 専門家のサポート: 不動産売買に関する専門知識が必要となるため、不動産会社などの専門家に相談することをおすすめします。

借地権割合の考慮

売却金の分配については、借地権割合を参考に、事前に借地人と合意しておくことが重要です。借地権割合は、地域や土地の利用状況によって異なりますが、一般的には30%から90%程度とされています。

底地と借地の等価交換をする

底地と借地権の等価交換とは、地主と借地人が、互いの権利の一部を交換し、それぞれ完全所有権を持つ土地を取得する方法です。

等価交換の仕組み

具体的には、一つの土地を分割し、地主は借地権の一部と引き換えに底地の一部を、借地人は底地の一部と引き換えに借地権の一部を取得します。これにより、両者はそれぞれ完全所有権を持つ土地を手に入れることができます。

等価交換のメリット

  • 売却しやすくなる: 底地単体での売却よりも、完全所有権を持つ土地の方が買い手が見つかりやすくなります。
  • 市場価格での取引: 完全所有権を持つ土地として売却できるため、より市場価格に近い金額での取引が期待できます。
  • 借地人との関係改善: 借地人との合意のもとで行われるため、良好な関係を築くことができます。

等価交換の注意点

  • 借地人の合意: 等価交換を行うには、借地人の合意が不可欠です。
  • 土地の分割: 建物がある土地は分割できません。また、更地であっても、一定の広さがないと分割が難しい場合があります。
  • 専門家のサポート: 手続きが複雑なため、不動産会社や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

等価交換が向いているケース

等価交換は、以下の条件を満たす場合に有効な手段となります。

  • 借地人との関係が良好: 借地人と協力して手続きを進める必要があります。
  • ある程度の広さの土地: 土地を分割できるだけの広さが必要です。
  • 土地を自由に活用したい: 完全所有権を取得することで、土地を自由に活用できるようになります。

業者に買い取ってもらう

借地権者への売却が困難な場合や、等価交換などが困難な場合に頼りになるのが、底地売却に特化した専門買取業者への売却です。

専門買取業者とは?

専門買取業者は、底地を専門に買い取る不動産会社です。一般の不動産会社とは異なり、底地ならではの複雑な権利関係や売却の難しさに精通しており、スムーズな取引を実現するノウハウを持っています。

なぜ専門買取業者は底地を買い取れるのか?

専門買取業者は、底地を居住用ではなく、事業用として買い取ることが多いため、一般の購入者が敬遠しがちな底地でも積極的に購入します。

具体的には、

  • 地主として地代収入を得る: 底地を所有し、借地人から安定した地代収入を得ることを目的とします。
  • 借地権を買い取り、土地として活用・再販する: 借地権を買い取り、底地と一体化させることで、土地の価値を高め、再販益を狙います。
  • 借地人と協力し、完全所有権の土地として売却する: 借地人と協力して底地と借地権を同時に売却し、より高い価格での取引を目指します。

といった方法で、底地を収益化できる見込みがあれば、積極的に買い取りを行います。

専門買取業者に売却するメリット

  • 借地人との交渉不要: 借地人との交渉や合意形成が不要なため、スムーズに売却できます。
  • 迅速な現金化: 査定から売却までの期間が短く、スピーディーに現金化できます。
  • 専門家のサポート: 底地売却に精通した専門家のサポートを受けられるため、安心して取引を進められます。
  • 高値での売却の可能性: 買取業者は、底地の価値を最大限に評価し、可能な限り高値での買い取りを目指します。

そのほか、売却を検討した時に整理しておくべきこと

古い土地の賃貸借契約書を確認して場合によっては契約書を作り直す

底地を売却する際、借地契約書の存在は非常に重要です。しかし、古い借地権や親しい間柄での契約など、様々な理由で契約書が存在しない、あるいは内容が曖昧なケースも少なくありません。

契約書がない、あるいは内容が曖昧なままだと、

  • トラブルの原因に: 相続や売却などで所有者が変わると、口約束だけでは契約内容に齟齬が生じ、トラブルに発展する可能性があります。
  • 売却の妨げに: 買い手にとって、収益の見通しが立たないため、購入をためらう要因となります。

契約書を作り直すメリット

契約書を新たに作成・見直すことで、これらの問題を解決し、底地売却をスムーズに進めることができます。

  • 契約内容の明確化: 借地人との間で、地代や契約期間などの条件を明確にすることで、将来的なトラブルを未然に防ぎます。
  • 買い手への安心感: 収益シミュレーションを提示できるようになり、買い手にとって魅力的な物件となります。
  • 売却価格の向上: 契約内容が明確な底地は、買い手にとって安心感があり、より高い価格での売却が期待できます。

地代を再検討することで利回り向上に努める

底地を購入する側の目的は、投資や売却による利益の獲得です。特に借地権付きの底地の場合、継続的な地代収入による利回りが重視されます。

投資目的で底地を取得する場合、一般的に2%〜4%の利回りが目安となります。もし、現状の地代がこの水準を下回っている場合、底地を早期に売却したいのであれば、地代の見直しを検討する価値があります。

地代増額交渉のポイント

借地人と地代増額の交渉を行う際には、以下の点に留意しましょう。

  • 客観的な根拠の提示: 土地の固定資産税や周辺の地価の上昇、経済状況の変化など、地代増額の正当な理由を具体的に示すことが重要です。
  • 丁寧なコミュニケーション: 借地人との信頼関係を築き、双方が納得できる合意を目指しましょう。
  • 専門家の活用: 不動産会社や弁護士などの専門家に相談し、交渉をスムーズに進めるサポートを受けることも有効です。

地代等増額請求という選択肢

借地人との交渉で地代増額が難しい場合、借地借家法に基づく「地代等増額請求」という手続きも検討できます。

地代等増額請求が認められるためには、

  • 公租公課(税金)の増加
  • 土地の価格の上昇や経済状況の変動
  • 近隣類似土地の地代との比較

といった条件を客観的に証明する必要があります。

しかし、これらの条件を満たすことは容易ではなく、専門家のサポートが必要となるケースも少なくありません。また、請求が認められるまでには時間と費用がかかる可能性もあります。

将来的な利益と費用を天秤にかける

地代等増額請求を行う際は、将来的な地代収入の増加と、弁護士費用などの手続きにかかる費用を比較検討し、慎重に判断することが重要です。専門家に相談し、あなたの状況に合わせた最適な戦略を立てることをおすすめします

まとめ

本記事では、底地を所有することのデメリットについて、相続税負担、相続時のリスク、相続後の売却の難しさなど、様々な角度から解説してきました。

底地は、利用制限があるため、所有しているだけでは地代収入を得る以外のメリットを見出しにくい資産です。そのため、少しでも有利な条件で売却することを検討することが重要となります。

しかし、底地の売却は、借地権との関係や相続税の問題など、複雑な手続きが伴うため、専門家のサポートが不可欠です。

弊社では、底地売買や借地権者への売却交渉など、弁護士と連携して、お客様にとって最適な売却方法をご提案いたします。また、税理士とも協力し、相続税や財産評価に関するアドバイスも提供しております。

底地に関するお悩みやご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。専門家チームが、あなたの状況に合わせて最適な解決策をご提案いたします。

泉俊佑

Sity LLC 代表の泉俊佑です。同社は空き家や事故物件などの売れにくい不動産の買取再販を行う不動産業者です。同社が運営しているサービスサイトである「瑕疵プロパティ買取ドットコム(瑕疵プロ)」の運営者も務めています。宅地建物取引士。

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