倒壊しそうな空き家の相続放棄は本当に得策?安易な選択はNG!管理者責任を問われる可能性

相続物件

親の相続で空き家を抱えたくない一心で「相続放棄」を選ぶ人が増えています。確かに、相続放棄は故人の借金を背負わずに済む便利な制度ですが、近年は空き家問題を避けるための安易な利用が目立ちます。

しかし、2023年4月の民法改正で相続放棄のルールが明確化された今、安易な選択は危険です。相続放棄しても、倒壊寸前の空き家の管理責任を問われる可能性があることをご存知でしょうか?

そこで本記事では、

  • 相続放棄のメリット・デメリット
  • 空き家相続における法的リスク
  • 相続放棄以外の賢い選択肢

を詳しく解説します。相続放棄はあくまで最終手段。正しい知識と事前の対策で、後悔のない相続を実現しましょう。

相続放棄をした建物が倒壊した場合にも管理責任からは逃れなれない

相続放棄をせっかく行ったとしても、管理責任を負う必要がある場合があります。まずは相続放棄について解説します。

相続の方法には3つの方法がある

相続の方法には3つの方法があります。下記の3つがあります。

・単純承認
・限定承認
・相続放棄

単純相続

相続放棄や限定承認の手続きを取らないと、自動的に「単純承認」を選択したことになります。これは、亡くなった方のプラスの財産もマイナスの財産(借金など)も、すべて引き継ぐことを意味します。

3ヶ月間の熟慮期間で慎重に判断をする必要がある

相続放棄や限定承認を希望する場合、相続開始を知ってから3ヶ月以内であれば手続きが可能です。この期間は「熟慮期間」と呼ばれ、相続の内容を把握し、どの方法を選ぶか慎重に検討する猶予が与えられています。

単純承認で起こりうるトラブル

プラスの財産が多い場合は、相続放棄や限定承認をせずに、法定相続人全員で遺産分割協議を行うのが一般的です。しかし、誰がどの財産をどれだけ相続するのか、意見が対立して揉めるケースも少なくありません。

また、単純承認では、預金口座からお金を引き出すにも、原則として法定相続人全員の同意が必要です。

限定承認

故人の借金の額が不明な場合、相続によって得られるプラスの財産を上限として債務を引き継ぐ「限定承認」という方法があります。これは、プラスの財産が残る可能性がある場合に有効な選択肢です。

相続放棄との違いは?

相続放棄も限定承認も、相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。ただし、相続放棄は相続人1人でも手続きできますが、限定承認は相続人全員で行わなければなりません。

限定承認のメリット

通常の相続(単純承認)では、後から新たな借金が見つかっても、すべて相続しなければなりません。しかし、限定承認では、相続財産の範囲内でしか債務を引き継がないため、借金が財産を上回るリスクを回避できます。

こんな場合に限定承認がおすすめ

  • 故人の借金の総額が不明な場合
  • プラスの財産が残る可能性がある場合
  • 相続人全員が合意できる場合

相続放棄

相続放棄とは、プラスの財産(不動産、預貯金など)だけでなく、マイナスの財産(借金、保証債務など)も含め、故人のすべての権利と義務を放棄する制度です。

こんな場合に相続放棄がおすすめ

  • 故人の借金の総額が不明な場合
  • 借金が財産を上回る可能性が高い場合
  • 相続に関わりたくない場合

相続放棄の注意点

相続放棄は、相続開始を知ってから3ヶ月以内に、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要があります。この期間を過ぎると、原則として相続放棄は認められません。

また、相続放棄が認められると、初めから相続人でなかったとみなされます。そのため、相続財産を受け取る権利も失うことになります。

財産を勝手に処分したりすると相続放棄ができなくなる

相続財産を処分したり、隠したり、使ってしまうと、自動的に「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなる場合があります。

具体的にどんな行為が「処分」にあたる?

  • 故人の預貯金の解約
  • 不動産の売却・贈与
  • 借金や税金の支払い

これらの行為は、たとえ善意で行ったとしても、相続財産を処分したとみなされる可能性があります。

相続放棄をしても死亡保険金は受け取れる

相続放棄をした場合でも、死亡保険金は受け取れるのでしょうか?

結論から言うと、死亡保険金は相続財産には該当しないため、相続放棄をしても問題なく受け取れます。

死亡保険金は、被相続人(死亡者)が契約者であり、保険金の受取人が相続人であっても、相続財産とはみなされません。これは、保険金受取人が保険契約に基づき、保険会社から直接受け取るお金であり、被相続人の財産から支払われるわけではないからです。

ただし、死亡保険金は相続税の課税対象になる場合があります。相続放棄をした場合でも、一定の条件を満たすと、相続税の申告と納税が必要になることがありますので注意が必要です。

相続放棄を行っても管理責任から直ちに逃れられるわけではない

相続放棄は、故人の借金などの負債から解放される便利な制度ですが、空き家に関しては注意が必要です。相続放棄後も、一定の条件下では、あなたに管理責任が課される可能性があります。

相続放棄後も管理責任が生じる2つのケース

  1. 次の相続人が管理を引き継ぐまでの間

あなたが相続放棄をした時点で、故人の不動産に実際に住んでいる、あるいは管理している場合、次の相続人が管理を引き継げるようになるまで、あなたに一時的な管理責任が生じます。これは、民法第940条第1項に基づく規定であり、物件の管理が宙に浮いてしまう事態を避けるためのものです。

例えば、夫が亡くなり、妻が相続放棄をした場合、子供が相続人となりますが、子供が遠方に住んでいてすぐに管理を引き継げない場合、妻に一時的な管理責任が生じる可能性があります。

(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

e-Gov法令検索「民法第940条」
  1. 空き家の場合

次の相続人が管理を引き継いだ後でも、物件が空き家の場合は、あなたも引き続き管理責任を問われる可能性があります。これは、「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)」第5条で、相続放棄した人も「管理者」に含まれると解釈されるためです。

空き家は、放置すると倒壊や火災の危険性が高まり、周辺環境にも悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、空き家法では、所有者や管理者に適切な管理を義務付けています。

(空家等の所有者等の責務)
第五条 空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない。

e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法第5条」

管理責任の内容と注意点

管理責任とは、具体的には、建物の安全確保のための適切な維持管理(清掃、修繕など)や、第三者への損害賠償責任などが挙げられます。民法では「自己の財産におけるのと同一の注意」と定められており、自分の財産と同じように注意深く管理する義務があります。

相続放棄後も管理責任を負う場合、その責任を果たせない場合は、損害賠償請求を受ける可能性もあります。また、一度相続放棄をすると、管理責任から逃れるために相続財産の売却や処分をすることはできませんので注意が必要です。

空き家の管理責任から逃れるには

1.相続をしたのち売却をする

相続放棄していない倒壊の危険がある建物をお持ちの場合、相続登記をして正式な所有者になった上で、速やかに売却し所有権を手放すことを強くおすすめします。これにより、建物の管理責任から解放されるだけでなく、万が一の事故による責任を回避できます。

不動産売却の方法:仲介と買取

不動産売却には、「仲介」と「買取」の2つの方法があります。

  • 仲介: 街の不動産業者に依頼し、買主を探す方法です。しかし、倒壊の危険がある建物は一般の個人には売却が難しく、売れ残る可能性が高いです。
  • 買取: 不動産買取業者に直接売却する方法です。買取業者は再販を目的としているため、倒壊の危険がある建物でも短期間で買い取ってくれます。

倒壊の危険がある建物の売却は買取が最適

倒壊の危険がある建物の売却は、買取業者に依頼するのが最善策です。買取業者は建物の再販ノウハウを持っており、倒壊の危険がある建物でも確実に買い取ってくれます。

相続財産清算人を選任する

相続放棄をした場合に、裁判所に「相続財産清算人の選任」を申し立てることで空き家の管理責任から逃れることができます。

相続財産清算人とは

相続財産清算人とは、相続人に代わって相続財産の管理を行う専門家です。弁護士や司法書士などが裁判所から選任されます。相続放棄をした人の管理責任を引き継ぐため、選任されれば管理責任から解放されます。

相続財産清算人選任の流れと注意点

相続財産清算人の選任から相続財産が国に帰属するまでには、多くの手続きが必要で、およそ1年以上かかります。

  1. 選任の申立て: 家庭裁判所に申立てを行います。
  2. 相続人の捜索: 裁判所が相続人を捜索するための公告を行います。
  3. 債権者・受遺者の確認: 財産清算人が公告を行い、債権者・受遺者を確認します。
  4. 特別縁故者への分与: 特別縁故者(被相続人と生計を同じくしていた者など)への相続財産分与が行われる場合があります。
  5. 財産の換金: 必要に応じて、不動産や株式などを売却し、金銭に換えます。
  6. 債権者・受遺者への支払い: 法律に従って、債権者や受遺者への支払いを行います。
  7. 国庫への帰属: 残った相続財産は国庫に帰属します。

建物の処分・換金、または国庫帰属が完了した時点で、ようやく管理責任から解放されます。 ただし、解放される前に建物が倒壊した場合、損害賠償請求を受ける可能性があるため注意が必要です。

相続放棄をする前の注意点

相続財産清算人の選任には、手間や時間、費用がかかります。 具体的には、申立て手続き、約1年の選任期間、20万~100万円の予納金が必要です。 予納金は返還されることもありますが、全額戻らない可能性もあります。

したがって、相続放棄をする前に、専門家へ相談し、相続財産清算人の選任が必要かどうか慎重に検討することが重要です。

まとめ

相続放棄は相続資産の管理責任から逃れるメリットがありますが、その後の資産売却が一切できなくなるなど、デメリットも大きいものです。そのため、一度相続した上で売却することをおすすめします。

当社では、空き家の買取を専門に行っております。スピーディーなお見積もりと迅速な買取で、お客様のお悩みを解決いたします。家財道具が残った状態でも買取可能ですので、お気軽にご相談ください。

泉俊佑

Sity LLC 代表の泉俊佑です。同社は空き家や事故物件などの売れにくい不動産の買取再販を行う不動産業者です。同社が運営しているサービスサイトである「瑕疵プロパティ買取ドットコム(瑕疵プロ)」の運営者も務めています。宅地建物取引士。

泉俊佑をフォローする

簡単入力30

「他社で断られた」
「査定価格を知りたい」、
「空き家の管理をお願いしたい」など
お気軽にお問い合わせください。

訳あり物件の
スピード査定をしてみる

簡単フォームで30秒

このフォームに入力するには、ブラウザーで JavaScript を有効にしてください。