土地建物の売買において重要な境界確定の手続きは、筆界や所有権界の理解から始まります。このプロセスは、土地の正確な面積と境界を明らかにし、将来的なトラブルを防ぐため不可欠です。土地の売買、新築建設、相続発生時、または近隣との間でのトラブル防止など、さまざまなシーンで境界確定測量が必要になります。実測売買と公募売買の違いを理解し、土地の価値を最大化するためには、明確な境界の設定が推奨されます。
境界確定とは? 「筆界」や「所有権界」の意味も説明
筆界は公図・所有権界は所有権の範囲を示す
境界確定について詳しく解説するため、まずは「境界」という基本的な概念に触れてみましょう。
土地の境界、すなわち「土地境界」とは、異なる土地同士、または公共用地と私有地の分かれ目を指します。これらの境界は、御影石、コンクリート、プラスチックなどで作られた境界標によって示されることが一般的です。これらの境界標を目にしたことがある人も少なくないでしょう。
境界は一般に、境界標によって示される土地の分かれ目として認識されがちですが、実際には「筆界」と「所有権界」という二つの異なる種類に分類されます。これらはそれぞれ異なる意味合いを持っています。
「筆界」とは、明治時代の地租改正時に確定された土地の境界を指し、この時期に「公図」(土地台帳附属地図)に引かれた線を基にしています。土地が分割された際に新たに引かれる境界線も、筆界と呼ばれます。一方で、「所有権界」とは、土地の所有者間での所有権の範囲を示す境界を意味します。
筆界は公法上の境界、所有権界は私法上の境界としても知られており、所有権界は所有者同士の合意によって変更可能ですが、筆界はそうはいきません。筆界は、土地の所有者間の合意によって定めることができない性質を持ち、原則として筆界と所有権界は一致するべきですが、様々な理由で一致しない場合もあります。この不一致が原因で、越境物などによる土地所有者間のトラブルが生じやすくなります。
このように、境界確定は筆界と所有権界の理解を深めることから始まります。これらの境界が一致していない場合には、越境物によるトラブルのリスクが高まることを意識する必要があります。
境界確定の意味
次に、境界確定の意義について詳しく解説します。「境界確定」とは、一般的に、私有地同士、あるいは公共用地(道路や河川敷など)と私有地の間の境界を明らかにするための手続きを指します。
このプロセスには、土地の所有者が相互に筆界を確認し合う行為や、新しい境界図の作成、確認書の交換などが含まれます。多くの場合、不動産業界ではこれらの作業を「境界確定」として理解し説明していますが、専門家の定義はやや異なります。専門家によると、「境界確定」とは、裁判官が土地の境界を明確に定める行為を指し、裁判官だけが不明瞭な筆界を正式に定める権限を持っています。この点が、裁判以外の方法では境界を確定することができないとされる理由です。
所有者同士が境界について合意に至った場合の確認書の交換や筆界の確認作業は、土地家屋調査士の業界では「筆界確認」と称されます。この区分けは、土地の境界に関する正確な理解と適切な手続きを促すために重要です。
境界確認・筆界確定・境界明示の違い
境界確定と似た言葉に、境界確認、筆界確定、境界明示があります。以下は、「境界確認」「筆界確定」「境界明示」という用語の定義を表形式でまとめたものです。これらの用語は土地の境界を明確にする際に使用され、それぞれ異なる意味を持っています。
用語 | 定義 |
---|---|
境界確認 | 隣地の所有者と共に土地の境界線を決定するプロセス。 |
筆界確定 | 裁判によって法的に土地の境界(筆界)を確定すること。 =境界確定 |
境界明示 | 土地を売却する際に、買主に対して境界線を示すこと。 |
このプロセスは、境界確認から始まり、問題が解消されない場合には筆界確定が行われます。その後、土地の売却時に買主に対して境界線を明示するという流れになります。土地の境界線に関する問題は、特に境界線が不明瞭な場合に重要となり、適切な手続きを通じて解決することが必要です。
境界確定測量が必要になるシーン
新らしく建物を建てる時
新しい建物の建設を計画する際には、土地の正確な面積、幅、奥行などの寸法が極めて重要になります。建築基準法をはじめ、建設に適用される様々な規制に準拠するため、これらの寸法を正確に把握しておく必要があります。特に、都市部での建設では、法令上の制限に可能な限り近づけて建物を建てることが一般的です。このような状況で土地の有効活用を図るためには、境界確定測量が欠かせません。
境界確定測量を行うことで、土地の正確な境界を特定し、建設計画における寸法の正確性を保証することができます。これにより、建物を建設する際の規制遵守だけでなく、最適な敷地利用計画を立てる基盤を築くことが可能になります。
土地・建物を売却する時
土地や建物を売却する際、土地の境界を買主に明確に示すことが不可欠です。(売主の境界明示義務)このプロセスには、買主への境界確認書の提供が含まれます。最近では、境界が曖昧な場合にそれを明確にすることが、買主からの一般的な要求となっています。
この要求が増加している背景には、コンプライアンスへの配慮や、不必要なトラブルを避ける目的があります。隣接する土地の境界を巡る紛争は、重大なリスクとみなされるようになっています。もし境界を明確にせずに不動産を売却した場合、売却後に買主と隣地所有者との間で争いが生じた際、瑕疵担保責任を問われ、損害賠償請求へと発展するリスクがあります。
このため、不動産売却に際しては、境界確定測量を実施し、土地の境界を正確に特定することが、将来的な紛争を防ぐ上で極めて重要です。
相続発生の時
相続が発生した際、正確な土地の境界を確定する測量作業が重要となります。その理由は、相続税の申告に際して、土地の正確な面積を示す境界確定書が必要とされるからです。登記簿上の記載や現行の登記事項証明書に記された土地の面積が、実際の土地の状況と一致しない場合が少なくありません。特に、住宅地の場合でも差異が生じることがありますが、農地や山林のように広範囲にわたる土地では、面積の違いがさらに大きくなる傾向にあります。
土地の価値を土地の単価と面積によって算出する以上、相続税の正確な計算には、土地の面積を正確に把握することが不可欠です。このため、相続時には境界確定測量を実施し、土地の正確な面積を確定することが、相続税の適正な申告を行うために必要とされます。
近隣住民との間で後々トラブルが発生しそうな時
近隣間での所有権界に関する認識の相違は、しばしばトラブルの原因となります。
筆界確認(境界確認)作業は、一見、問題を引き起こす可能性があるかのように感じられることもあります。この理由から、土地の境界をあえて明確にしないでおく方が、トラブルを避けられると考える場合もあります。しかし、筆界確認には、隠れたトラブルを顕在化させ、解決の糸口を見つけるという大きな利点があります。これは、将来的な近隣間のトラブルを防ぎ、建築や土地売買を安心して進めるための基盤となります。さらに、筆界確認を行うことで、近隣住民との関係性を知る機会にもなります。協力的な態度で筆界確認に応じる隣人であれば、将来的なトラブル発生のリスクも低くなると言えるでしょう。
このように、筆界確認は近隣トラブルを未然に防ぐための重要な手段であり、お互いの理解と協力を深める機会ともなります。
境界が確定している土地は売れやすい
筆界確認(境界確認)は、将来的なトラブルを防ぐ上で重要な手段であり、その結果、土地が安心して利用できる環境であることを保証します。立地、面積、地質などの物理的特性は土地の価値を決定する重要な要素ですが、住む人が安心して暮らせる環境もまた、土地の価値を高める重要な側面です。境界が明確にされた土地は、そうでない土地に比べて、その価値において顕著な差があると言えるでしょう。
このことから、筆界確認を行うことは、土地の潜在的な価値を引き出し、安全かつ安心な生活空間を提供するための重要なステップとなります。したがって、土地の価値を最大化するためには、筆界確認を実施し、明確な境界を確立することが推奨されます。
土地の売買については実測売買と公募売買の2種類がある
不動産の売買において、土地の境界を定める方法として「実測売買」と「公簿売買(登記簿売買)」の二つがあります。
方法 | 定義 |
---|---|
実測売買 | 土地の売買契約時に土地の実際の面積を測量し、その結果に基づいて売買金額を決定する方法です。 |
公簿売買 | 登記簿に記載されている土地の面積を基に売買金額を決定し、実際の面積が登記簿と異なっていてもそれを受け入れる方法です。 |
公簿売買では、登記簿に記載された情報を信じて売買が行われ、実際の土地の面積と登記簿に記載された面積に差異があってもそのまま進行します。これに対して実測売買では、契約前に土地の実測を行い、その結果に基づいて売買が成立します。
実測売買は、土地の正確な面積を基に取引を行いたい場合に選ばれる方法であり、境界確定が重要な要素となります。一方で公簿売買は、登記簿上の情報を基に迅速に取引を進めることができる利点があります。どちらの方法を選択するかは、売買当事者のニーズや土地の状況によって異なります。
公募売買とは?
公簿売買は、登記簿に記載されている土地の面積(公簿面積)に基づき価格を定めて行われる取引方法です。この場合、実際に測量して得られた面積が登記記録と異なっていたとしても、売買価格は変更されません。つまり、公簿売買では実測を行わないケースが多く、実測を行ったとしても、その結果に基づいて価格を調整しない契約が結ばれることがあります。
公簿売買における主なポイント:
- 登記簿に記載された土地面積を基に取引される
- 実測に基づく価格の調整を行わない
- 測量費用や時間を節約できるメリットがある
- 法務局に備え付けられている地積測量図や現況測量図を基に面積を推定できる場合が多い
公簿売買の注意点には、以下が含まれます:
- 売買契約書や重要事項説明書に公簿売買である旨を明記する
- 土地の単価表示がない場合、公簿売買であることが推定されるが、明記されていないと誤解の可能性がある
- 公簿売買の前提条件として、双方が異議申し立てを行わないことなどを明示することが重要
公簿売買は、特に測量にかかる費用が高額になりがちな広大な土地や、面積の誤差による価格差がそれほど大きくない場合に選択されることが多い方法です。公簿売買は取引の迅速化やコスト削減の面で利点がある一方で、実際の土地の面積に基づいた取引を重視する場合は、実測売買が選択されます。
実測売買とは?
実測売買は、土地の実際の面積を測量してから売買価格を決定する方法です。このアプローチには主に2種類の方法があります。
- 売買代金清算型:売買契約時に平米単価や坪単価を基に登記記録の面積で価格を定め、後日実測面積で計算した売買価格との差額を精算します。この時、実測は契約後に行われるため、契約書や重要事項説明書には実測面積は記載されず、測量の方法や測量図作成の旨が記載されます。
- 売買代金固定型:売買契約前に測量を行い、確定した面積に基づき単価を掛けて売買価格を決定します。この方法では、実測面積と公簿面積の差異が契約書に明記されます。
実測売買のメリットは、土地の実際の広さを反映した価格設定が可能であり、当事者間のトラブルが少ないことです。デメリットとしては、測量に時間と費用がかかる点が挙げられます。
注意点:
- 測量による実測面積の差異が出た場合、どのように清算を行うかを事前に決定しておく必要があります。通常、平方メートル単価を基にして清算されます。
- 清算対象範囲についても、セットバック部分や私道の扱いを含め、事前に定めておくことが重要です。建築可能な範囲のみを清算対象とするのが一般的です。
- 測量費用に関しても、事前に売主と買主の間で負担の割合を決めておくことが望ましいです。一般的には売主が負担するケースが多いですが、買主が強く希望する場合など、事情に応じて変わります。
実測売買を検討する際は、これらのポイントを踏まえ、事前に両当事者間で詳細な合意を形成しておくことが、後のトラブルを避けるために非常に重要です。
土地の境界を調べる方法
土地の境界の調べ方には、主に3つの方法があります。
- 法務局で土地の情報を調べる
- 測量士に測量してもらう
- 土地家屋調査士に調査してもらう
法務局で調べる方法
法務局では、土地や建物を含む不動産の登記情報が管理されています。一般の人も、所定の手数料を支払うことでこれらの情報を確認できます。
不動産に関する登記記録には、「登記事項証明書」や「登記簿謄本」といった文書があり、これらには土地の場合、その所在地、地番、地目(土地の用途)、地積(面積)、所有者の情報、抵当権などの権利関係が詳細に記載されています。
また、土地の形状や隣接する土地との位置関係を示した地図も参照することが可能ですが、地図が提供されていない地域も存在します。
地積測量図については、最新のものは高い精度で土地の面積や形状を反映していますが、古い図ではその正確性に疑問が残る場合があります。さらに、全ての土地に地積測量図が存在するわけではなく、一部の土地ではこの資料を入手できないこともあります。
地積測量図
地積測量図には土地の各境界点とそれらを結ぶ境界線が詳細に記載されており、公図には土地の形状が描かれています。これらの資料は、土地の地番を知っていれば、法務局で誰でも取得することができます。地積測量図を通じて、土地の各境界点の座標値や境界線の長さ、場合によっては境界標の種類まで確認することが可能です。
ただし、土地によっては座標法に基づいて作成された現代の地積測量図、古い三斜法による地積測量図、あるいは地積測量図が元々存在しない場合があります。特に古い三斜法による地積測量図は、測量精度が低く、参考程度の情報しか提供できないことがあります。
地積測量図を含むこれらの資料を取得する際は、対象土地だけでなく、周囲の土地に関する情報も一緒に確認することが重要です。なぜなら、周辺の土地の地積測量図が存在する場合、接する境界線の具体的な情報が得られる可能性があるからです。
また、地積測量図などの図面だけでは現地の境界線を完全に理解することは難しいため、図面と現地の照合作業が不可欠です。これには、現地での境界標の探索や土地の寸法測定が含まれます。境界標の種類や効力については、土地家屋調査士による解説資料を参照することが有益です。
現地で境界標を探して土地の境界線を調べる
現地で境界標を探すことは、土地の境界線を特定する一つの方法です。境界標は土地の角や境界線上に設置されるマークで、主に以下の5種類があります
- 金属標(金属プレート)
- 金属鋲
- プラスチック杭
- コンクリート杭
- 石杭
これらの境界標は、土地の周囲にブロック塀、側溝、擁壁などがある場合、その付近に設置されることが多いです。境界標間を結ぶ線が、一般的に境界線とされますが、すべての境界点に境界標が存在するわけではありません。
正確な境界線を知るためには、発見した境界標を基に現地での調査を行い、その後、法務局で地積測量図などの図面を取得し、現地調査の結果と照合する必要があります。地積測量図に記載されている境界標の有無、現地に存在する境界標との一致性を確認することが重要です。
具体的な照合作業では、現地の境界標間の距離を測定し、地積測量図上の境界線の長さと比較します。これにより、距離が一致するかどうかを検証することができます。
しかし、境界標が現地にあっても、地積測量図に記載がない場合や、地積測量図には境界標が記載されているものの、現地には存在しない場合があります。また、地積測量図が存在しない土地もあれば、あっても現地と照合できない図面もあります。
したがって、専門的な知識を持たない限り、土地の全境界線を明確に特定することは困難です。最も確実な方法は、土地家屋調査士に依頼して境界線をはっきりとさせることです。
土地家屋調査士に依頼して土地の境界線を調べる
土地家屋調査士は、土地の境界を明確にする作業を専門とする国家資格を持つ専門家です。彼らは、法務局での資料調査から始まり、現地での測量調査、必要に応じて隣地所有者との境界確認の立ち合いまで、土地の境界確定に関する一連の作業を行います。
特に、地積測量図が存在せず、区画整理や地籍調査が行われていない場合、また土地境界確認書がない場合は、土地の境界線に関する公式な根拠がないことになります。このような状況では、隣地所有者と共に現地で境界線を相互に確認し、新たに土地境界確認書(図面付き)を作成することが、境界線を確定するための適切な手段となります。
土地家屋調査士は、ただ境界線を調べるだけではなく、土地の境界を正式に確定させたい場合にも、土地境界確認書の作成や登記申請を含む、さまざまな手続きをサポートします。このように、土地家屋調査士は土地の境界に関する問題を解決するための重要な役割を果たす専門家です。
土地の境界線を調べるベストな方法は?
土地の境界線を特定する最適な方法は、先述の通り一般的には以下の3つのアプローチが考えられます
- 法務局で地積測量図や関連資料を取得する。
- 現地調査を行い、境界標を探す。
- 土地家屋調査士に依頼する。
土地の境界線を調べる際は、通常、1.法務局での資料取得と2.現地での境界標探索を組み合わせて行うことが推奨されます。これらの手法を個別に実施した場合でも、境界線の大まかな位置は把握できるかもしれませんが、精確な境界線の特定には不十分です。
3.土地家屋調査士による作業も基本的には同様のプロセスを踏みます。資料の取得から現地調査、隣地所有者との調整まで、専門的な知識と経験を持つ土地家屋調査士は、土地の境界線を確定する上で大きな役割を果たします。
座標法に基づく地積測量図が存在し、境界標が全ての境界点に設置されている場合、自力での確認が可能な場合もありますが、一つでも境界標が見つからない、または地積測量図がない、三斜法による測量図の場合は、専門家への依頼が最良です。
依頼する際は、対象土地の近隣地域にある土地家屋調査士への依頼が望ましいです。これは、現地調査が必要不可欠であるため、地元の土地家屋調査士がより迅速かつ効率的に対応可能だからです。
土地家屋調査士に依頼した際の手続きや流れは?
境界調査を実施した結果境界が未確定の場合には境界確定測量を行う必要があります。境界未確定の土地の境界を定める一般的な方法は、まずは土地家屋調査士が現況調査を実施し、測量、現況図面を作成します。これを基に、境界を定めるために利害関係者全員を集め、立ち合いのもと合意を行い境界を決定し、登記申請を行います。
境界確定測量の流れ
筆界確認を目的として具体的に説明します。
- 見積もりと依頼: 土地家屋調査士への依頼を開始します。事前に調査内容を相談し、見積もりを取得します。場合によっては、不動産会社などを介して依頼を行うこともあります。依頼から1~2日で開始します。
- 道路の筆界確認申請: 道路の筆界を確認する場合、市区町村に対して調査申請を提出します。市区町村の職員が調査に立ち会うことになります。資料収集には約2週間かかります。
- 民有地の近隣住民への挨拶と立ち会い依頼: 民有地間の筆界確認にあたっては、土地家屋調査士が近隣住民に挨拶を行い、調査への立ち会いを依頼します。依頼者からも調査の背景を説明し、協力を得やすくすることが望ましいです。話し合いには約1か月を要します。この過程はプロジェクトの進行に大きく影響します。
- 測量と図面収集・照合: 測量作業を開始し、関連する図面を収集し照合します。長年その土地に住む人から古い図面を借用することもあります。このステップには2~3週間が必要です。
- 市区町村との立ち会い・確認: 道路との筆界については、市区町村の職員と立ち会いながら確認します。確認後、筆界に関する書面を市区町村に提出します。
- 民有地の近隣住民との立ち会い・確認: 民有地の筆界については、土地の所有者や近隣住民と立ち会いながら確認します。全員の同意が重要です。約1か月で境界確定と境界杭の設置が行われます。
- 図面、確認書、標識の作成: 同意が得られたら、図面を添付した境界確認書を作成し、新たに標識を設置します(必要な場合)。この工程も約1か月かかります。
- 登記申請: 境界が明確になり、固定資産税の評価に影響がある場合、新たに登記申請を行います。通常、土地家屋調査士が代理で申請を行います。登記手続きには約2週間程度を見込みます。
不成立の場合、筆界確認が合意に至らないか、住民が確認に応じない場合があります。このような場合、筆界特定制度を利用することも可能です。この制度では、法務局が筆界を特定し、特定された結果に不服がある場合は訴訟を起こすことができます。この制度の導入により、境界確定を巡る訴訟が減少しました。
境界確定は官民査定・民民査定がある
土地の境界確定には、「官民」「民民」の両方の境界に関する合意が必要です。一般的に土地は道路や公園などの官有地(公有地)に面している場合が多く、これらの境界点での合意形成が求められます。
- 官民査定: 官有地(例えば道路や公園などの公有地)との境界を確定させる際には、その地域を管轄する役所の担当者が立ち会いのもとで行う測量です。このプロセスを通じて、官有地と私有地との境界が明確にされます。
- 民民査定: 私有地同士の境界を確認するために行われる測量で、隣接する土地所有者間での合意形成が必要となります。この測量を通じて、民有地と民有地との境界が明確にされます。
例として、ある土地の所有者Aが自分の土地の境界を明確にしたい場合、境界点a(官民・民民)、b(官民)、c(官民・民民)、d(民民)の点を明確にする必要があります。a点での合意には役所の担当者と所有者Bが、b点では役所のtな当社が、c点では所有者Cと役所の担当者が、d点では役所の担当者と所有者Cがそれぞれ合意に至る必要があります。
境界確定のプロセスは、複数の利害関係者と複数の境界点について合意を取る複雑な作業を伴います。このようなプロセスをスムーズに進めるためには、土地家屋調査士の専門知識と経験が不可欠です。
土地家屋調査士の役割は境界確定のための補助
土地の境界は、基本的に土地の所有者同士で決定されるものです。土地家屋調査士の役割は、境界を確定する過程での測量を実施し、適切な手続きを役所に申請することによって、所有者間の合意形成を補助することです。
特に、私有地同士(民民査定)での合意形成は、所有者間の意見が一致しない場合にはトラブルに発展する可能性があり、このプロセスが最も難しいハードルとなることがあります。
一方で、実際の測量結果が登記簿上の面積と異なる場合でも、それによって支障がないならば、土地家屋調査士を介入させずに所有者同士で合意書を作成し、土地を利用することも可能です。
また、官有地との境界(官民査定)については、役所が関与するため、関係者が平日に立ち会うなど、手間と時間がかかるプロセスとなります。そのため、官民査定は行わずに、私有地同士の合意(民民査定)のみを行うケースもあります。
境界確定にかかる費用
境界確定測量に関する費用は、関与する関係者の数や作業の複雑さによって大きく変動します。一般的には、現況測量には約35万円から45万円、確定測量には60万円から80万円が相場とされています。費用の目安としては、現況測量では1本の杭につき約10万円、確定測量では1本の杭につき約15万円が一般的です。
土地の形状が複雑で杭の数が多くなるほど、また隣地所有者や利害関係者が多い場合、官民の境界を含む道路境界の確認が必要な場合などは、費用が増加する主な要因となります。
一方で、地価が非常に低い場合や隣地所有者の同意が得られない場合など、境界確定測量が不要と判断されるケースも存在します。これらの状況では、確定測量を行わずに不動産の売買が進められることもあります。
種類・目的の違う測量図について解説
測量図には、その用途や作成の背景によっていくつかの異なる種類が存在します。主なものに確定測量図、現地測量図、地積測量図があり、これらは用途や隣地所有者の承諾の有無などによって使い分けられます。各測量図の概要と役割を解説します。
- 確定測量図: これはすべての利害関係者の承認を得た後に作成される測量図で、最も信頼性が高いものとされています。土地の境界線が明確に確定されており、土地家屋調査士などの専門家によって作成されます。
- 現地測量図: この図面は現地の測量を基に作成されますが、隣地所有者の了承を得ていない場合があります。土地利用計画や建設計画など、特定の目的のために現地の状況を記録した図面です。
- 地積測量図: 分筆(土地の一部を分割すること)された際に作成される図面で、土地の区画や面積を示します。法務局で取得することが可能で、土地の登記に関連する手続きに利用されます。
確定測量図
確定測量図は、隣地所有者や必要に応じて行政機関(市町村や都道府県など)からの境界の承認を得て作成される図面です。土地が道路に面している場合、その道路管理者からの承諾も求められます。これは、道路との境界を「官民境界」とし、私有地同士の境界を「民民境界」と呼ぶことがあるためです。確定測量図は、すべての利害関係者の承認を受けた上で作成されるため、最も信頼性の高い測量図とされています。この図面は、土地の売買、相続、建物の建築など、多岐にわたる場面で重要な役割を果たします。
現地測量図
現地測量図、または現況測量図と呼ばれるこの図面は、隣地所有者からの承諾を得ずに作成される点で確定測量図と異なります。敷地境界とされるブロック塀などの位置を基にして測量を実施し、その結果をもとに図面を作成します。このプロセスから、現地測量図の信頼性は確定測量図に比べて低くなりがちです。主に、土地の大まかな面積や形状を知りたい時などに利用される測量図です。
地積測量図
地積測量図は、土地を分筆(一つの土地を複数の区画に分割すること)する際に法律に基づき必要とされる測量図です。分筆する土地の面積を算定し、その結果を証明するのが主な目的です。特に昭和30年代以降に分筆された土地には、この地積測量図が準備されています。この測量図は、隣地所有者の承諾を必要とせず、分筆された各土地の面積を正確に示すために作成されます。地積測量図は、分筆された土地の面積の証拠としての役割を果たし、確定測量図とは異なる独自の性質を持っています。
境界確定において注意すべきポイント
地域の土地家屋調査士に依頼した方が良い
筆界を確認する際、土地家屋調査士への依頼費用は地域によって異なり、一般的には都市部の方が地方に比べて高い傾向にあります。しかし、費用の差に目を向けるだけで地方の土地家屋調査士に依頼することは必ずしも推奨されません。筆界確認の正確性を高めるためには、依頼する土地の周辺地域における測量経験が豊富な専門家の選択が重要となります。その土地特有の事情や地域の特性を熟知している地元の土地家屋調査士に依頼することが、最終的にはより確実で信頼性の高い結果をもたらすでしょう。
境界標は目立つ位置に設置する
境界標の設置は、土地の所有範囲を明確にする上で非常に重要です。境界標は、常に見える位置に設置することが重要であり、過去に設置された境界標が塀や植生によって隠れないよう配慮する必要があります。土地家屋調査士は境界標の設置に関する専門知識を有しており、設置方法や位置に関しての要望がある場合は、依頼前に相談すると良いでしょう。
境界標の設置には、移動が困難で、長期にわたり外気の影響を受けても耐えうる耐久性の高い素材の選択が求められます。設置後も、境界標が失われたり、視認できなくなることがないよう、定期的に確認し維持管理する習慣を持つことが望ましいです。これにより、土地の所有範囲を長期にわたって守ることができます。
越境物のある土地は後々トラブルになる可能性がある
土地の売買において、建物の一部や樹木が隣地に越境している場合は特別な注意が必要です。越境物の存在は、土地の利用に制限をもたらす可能性があり、将来的に隣地所有者とのトラブルの原因となることもあります。
購入予定の土地に越境物が存在する場合、不動産会社は事前に重要事項説明を行うべきです。この際、「既に合意が形成されており、問題ない」との説明を受けても、その内容を鵜呑みにせず、契約の詳細や越境物の取り扱いに関する具体的な約束を確認することが重要です。越境問題の解決を希望する場合は、土地の購入前にその旨を明確にし、必要な措置を講じるよう要求することが望ましいです。
越境物の扱いに関する合意がなされている場合でも、将来的な権利関係や隣地との関係性に影響を及ぼすため、購入前にはこの点をしっかりと検討し、可能であれば法的なアドバイスを得ることも一つの方法です。
公有地に面している土地の場合などは境界確認が不要な場合も
筆界(境界)の確認が必ずしも必要でないケースも存在します。特に、公有地に面している土地の場合、境界線が比較的明確であったり、ある程度推測できる場合が該当します。公有地との筆界を確認する際には、民有地と比べてより広範囲の測量が必要になったり、自治体との手続きが伴い、結果として高いコストが発生することがあります。そのため、筆界の確認が実際に必要かどうか不明な場合は、専門知識を持つ土地家屋調査士に相談することが推奨されます。これにより、無駄なコストを避けるとともに、必要な手続きのみを行うことが可能になります。
別の論点として借地権は確認すべき
借地権の存在は土地取引において重要な要素であり、登記されていないことが多いため、登記簿だけではその存在を把握することが難しい場合があります。土地に借地権が設定されている場合、借地の範囲や金額などの詳細を確認することが非常に重要です。借地権の境界線は土地の筆界とは異なり、その特定には専門的な調査が必要になることがあります。土地に借地権があると知らされた際は、その範囲や条件を明確にするため、必要に応じて専門家による調査を行うことをお勧めします。
まとめ
境界の確認・確定は建物の建て替え、土地の売買、相続とさまざまな場面でそれぞれ重要な意味を持つ手続きになります。ご自身の資産を正しく把握する、または購入する資産的価値を正しく見積もるためにも重要な手続きとなります。また費用も時間もかなりの時間を要する手続きのためスムーズに売買手続きを進めるためにも手続きの理解と専門家への相談が必要となります。
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