本記事では、事故物件を購入・賃貸する際のメリットとデメリットを詳しく解説します。
事故物件とは、殺人事件や事故死、自殺、孤独死など、人の死によって不動産価値が著しく低下した物件を指します。購入後、そのまま自宅として住むケースは稀で、賃貸に出すケースが一般的です。
この記事では、事故物件を購入して賃貸経営を行う際のメリットとデメリット、そして知っておくべき注意点について詳しく解説していきます。
事故物件を購入するメリット・デメリット
事故物件を購入するメリットは下記のものがあります。
・購入価格が市場相場よりも割安
・賃貸として貸し出す場合には、投資利回りが良い
・リフォームがされている場合が多い
一方で事故物件を購入するデメリットは下記のものがあります。
・事故の痕跡が残っていることが多く、大規模なリフォームやリノベーションが必要となる
・告知義務が必ず必要となる
・相場よりも安く賃料を設定しなくてはいけない
・契約不適合責任を問われる可能性もある
・賃料を下げた結果入居者の質が落ちる
これらのメリット、デメリットを解説します。
事故物件を購入するメリット
1.購入価格や賃料が割安
事故物件の最大のメリットは、一般の相場価格よりも購入価格や賃料が割安になることです。例えば、同じマンションの同じ間取り、同じ階であれば、リフォームや修繕状況にもよりますが、基本的に売買される市場価格はほぼ同じ金額になる場合が多くなります。これは、マンションの特性上、近隣の同室の売買価格を参考に不動産業者が価格付けを行い販売を行うためです。
基本的には、マンションの構造や立地、築年数、ブランドの有無、階数などがマンションの価格の大部分を占め、それに内装の状況、設備の状況などが反映されて販売価格が決定されます。しかし、事故物件は、事故の状況によりますが、これらの付帯状況を大幅に超えるディスカウントが発生します。具体的には、下記の金額の割引が相場となっています。
事故物件の内容 | 賃貸の場合の値引き相場 | 購入の場合の値引き相場 |
---|---|---|
自然死 | 0~10%程度 | 10~20%程度 |
自殺 | 30~50%程度 | 20~30%程度 |
他殺 | 70~80%程度 | 40~50%程度 |
なぜ割安となるのか?
事件や事故の発生により、人が死亡した場合など、文化的・宗教的背景はあるものの、基本的には日本人は忌避感を抱きやすいと言われています。これらにより、「目には見えないけれども嫌な感じがする」という心理的瑕疵が生じることがあります。なお、瑕疵とは、欠点やきず、性能や性質が欠けていることを指します。
不動産の取引における瑕疵には、心理的瑕疵のほか、物理的瑕疵(マンションなら専有部分における瑕疵)、環境瑕疵、法律的瑕疵があります。これらも不動産の売買価格に影響を与える要素となります。
例えば、物理的瑕疵には、雨漏り、シロアリ、耐震強度不足、土地の汚染や地中の障害物などが挙げられます。これらは費用をかけることで解消できる可能性もあり、取り除くことが可能な場合が多くあります。
環境瑕疵は、マンションの周辺に墓地がある、近所で殺人事件が発生した、暴力団事務所が近所にある、騒音問題のある住民が住んでいるなど、マンションの専有部や戸建住宅そのものではなく、周辺環境に問題があることを指します。考え方によっては、例えば墓地の上に新築マンションが建つことはほぼないので、半永久的に眺望を確保できるなど、プラスのメリットも考えられる点が特徴的です。
法律的瑕疵とは、法令上の制限がかかっている土地、建築基準法違反により再建築不可となっている不動産、自由に不動産を処分できない状況にある不動産などを指します。これらは利害関係の調整が必要であり、市場での取引価格も心理的瑕疵と同様に大幅にディスカウントされる傾向にあります。
2.賃貸として貸し出す場合には、投資利回りが良い
事故物件は割安で購入できるため、賃貸として貸し出す場合、高い投資利回りが期待できます。これは、賃料と購入価格のディスカウント比率によって説明できます。
例えば、他殺があった物件を半値で購入し、リフォーム費用を加えても物件購入価格が通常の市場価格の60%だったとします。通常の市場価格で利回り5%の物件であれば、物件購入価格が40%ディスカウントされるため、利回りは8.3%となります。(5% ÷ 60% = 8.33%)
賃料は、物件の売買と異なり、気に入らなければ引っ越せば良いという性質上、ある程度都市部で交通利便性の高い物件であれば、賃料を下げることで入居者を見つけることが可能です。また、適切なリフォームやリノベーションを行うことで、賃料を下支えし、魅力的な投資対象とすることも可能です。ただし、これは事故物件を買い取る場合に魅力的なのであって、元々は市場価格で取引されていた物件が心理的瑕疵によって大きく魅力を損なわれている点には注意が必要です。
地方や田舎など、土地や建物が多くある地域、広範な土地がある地域などでは、利便性などの優先順位がそれほど高くないため、投資対象としての魅力は大きくありません。
3.リフォームされている場合が多く綺麗な部屋が多い
事故物件は、事故発生時の状態のまま取引されることはほぼありません。腐敗臭や血痕など、通常のクリーニングでは除去できない汚れや臭いを消すため、部分的または全面的なリフォーム・リノベーションが施されている場合が多いです。
例えば、和室で事故が発生した場合、その後の清掃だけでは臭いやシミが残ってしまうため、洋室への変更、壁紙の張り替え、ユニットバスの交換など、内装を一新するケースが多く見られます。また、リノベーションでは間取りごと変更できるため、事故のあった部屋を物理的に無くすことも可能です。
このように、事故物件はリフォーム・リノベーションによって生まれ変わっていることが多く、清潔で綺麗な物件が多いと言えるでしょう。
事故物件購入のデメリット
事故の痕跡が残っていることが多く、大規模なリフォームやリノベーションが必要となる
事故発生現場をそのまま購入するケースは稀ですが、仮にリフォームやリノベーションがされていない、特殊清掃のみの事故物件を購入した場合、自費でリフォームやリノベーションを行う必要があります。その費用は部屋の広さや範囲によって異なりますが、おおよそ下記の金額が相場となります。
リフォーム箇所 | 内容 | 費用相場 |
---|---|---|
内装 | 壁紙張り替え | 1,000円~1,500円/平米 |
和室を洋室に変更 | 50万~200万 (6〜8畳) | |
畳をフローリングに変更 | 15万~60万 (6〜8畳) | |
室内のドア交換 | 4万~10万/箇所 | |
間取り変更 | 80万~160万 (約33平米) | |
天井リフォーム | 3万~15万 | |
フローリング張り替え | 2万~6万/畳 | |
お風呂・洗面台 | ユニットバス交換 | 50万~100万 |
浴槽交換 | 10万~51万 | |
バランス釜交換 | 20万~25万 | |
3点ユニットバス交換 | 50万~100万 | |
洗面台交換 | 10万~20万 |
告知義務が必ず必要となる
事故の内容によっては、告知義務が必ずしも必要ではない場合があります。例えば、賃貸物件の場合、事故から3年程度経過していれば、告知義務は免除されます。これは、賃料を上げることが可能なため、物件所有者にとってはメリットと言えるでしょう。
ただし、告知義務がなくても、入居希望者から質問された場合には真実を伝える義務があります。これは売買の場合も同様です。
一方、殺人事件などの他殺事件については、告知義務がほぼ永久に続きます。これは、物件の市場価値に大きな影響を与えるため、投資用以外の目的で売買することが非常に難しくなります。実需向けの住宅としての一般の市場価格での取引は困難であり、投資による賃料収入からの回収が主な手段となるため、購入に当たっては将来的な資産価値も慎重に検討する必要があります。
告知義務違反で契約不適合責任を問われる可能性も
告知義務を怠ると、売却先の購入者や賃借人から損害賠償を請求される可能性があります。これは、契約不適合責任違反と呼ばれます。
契約不適合責任とは、契約書に記載されていない事項でも、契約内容に適合するよう買主や賃借人が売主や貸主に求めることができる権利です。心理的瑕疵は、事故の原因を完全に消し去ることが不可能なため、告知義務違反が契約不適合とみなされ、損害賠償を請求される可能性があります。
特に、売買契約においては、告知義務違反による契約不適合責任は、物件の引き渡しから2年間有効です。そのため、事故物件であることを隠して売却した場合、後々トラブルに発展するリスクが高いと言えるでしょう。
相場よりも安く賃料を設定しなくてはいけない
殺人事件や事故現場となった部屋に進んで住みたいと思う人は少ないでしょう。日本では、このような事故を避ける傾向が強いため、入居者は何らかのメリットを感じなければ心理的瑕疵のある物件を選びません。そのため、賃料を下げて入居者を募集するケースが多く見られます。
賃料を下げる幅は、エリアの特性によって大きく異なります。都心の人気エリアで交通の便が良く、比較的築浅のマンションであれば、多少の値下げでも入居者が見つかる可能性があります。一方、需要の少ないエリアでは、大幅な値下げが必要となる場合もあります。
しかし、賃料を下げれば、どんなに条件が悪くても入居希望者は現れる可能性があります。そのため、利回りを意識して賃料を設定することが重要です。また、告知義務がなくなった段階で賃料を元の水準に戻すことも可能です。ただし、投資初期においては利回りが低下することを理解しておく必要があります。
賃料を下げた結果入居者の質が落ちる
賃料を下げることで入居希望者を増やすことは可能ですが、同時に、入居者の質が低下する可能性がある、というリスクも伴います。例えば、所得が低い人や訳ありの人、家賃滞納、室内を汚損する、ゴミ出しルールを守らないなど、様々なトラブルが発生する可能性があります。
このようなリスクを軽減するため、定期借家契約の活用が有効です。定期借家契約は、契約期間満了時に更新の必要がないため、問題のある入居者をスムーズに退去させることができます。
また、入居審査を厳格に行う、保証人を立てる、家賃保証会社を利用するなどの対策も有効です。賃料を下げる際は、これらのリスクを十分に考慮し、適切な対策を講じることが重要です。
事故物件はリスクを伴うため、売却は専門業者への相談がおすすめ
事故物件は、実際に事故が発生した場合だけでなく、投資用として購入したものの収益化が難しい、資金回収したいなどの理由で売却を検討することもあります。しかし、事故物件は様々なリスクを伴い、運用には専門的な知識が必要です。
そのため、事故物件の売却は、専門の買取業者に依頼することをおすすめします。専門業者であれば、事故物件の査定や売却手続きに精通しており、適切なアドバイスを受けることができます。
また、専門業者との取引では、売主は契約不適合責任を問われないというメリットがあります。契約不適合責任は一般消費者を保護するための制度であり、不動産専門業者との取引では、契約書に特約を盛り込むことで契約不適合責任を免除することが可能です。
事故物件の買取やご相談は、ぜひ当社にお任せください。専門知識を持つスタッフが、お客様の状況に合わせて最適なご提案をさせていただきます。どんな些細なことでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。
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