底地の売却は複雑であり、適切な方法と価格を知ることが重要です。この記事では、底地の売却額が更地価格よりも低くなる理由や、借地との違い、自由に活用できない理由、融資の難しさなどを詳しく解説します。また、借地人への売却、借地権を解除した完全所有権土地への変換、同時売却など、底地売却の5つの方法と、それぞれの取引金額の目安についても紹介します。さらに、底地や借地の評価方法として国税庁が提供する路線価図や倍率方式の使い方、借地権者が底地を買わない理由なども探求します。底地売却に関するあらゆる情報をわかりやすく提供し、読者の理解を深めます。
底地の売却額が更地価格よりも低く売却の難易度が高い理由
そもそも底地とは?借地との違い
「底地(そこち)」とは、借地権が設定されている土地を指します。この土地は「貸地(かしち)」とも呼ばれ、所有者は地主とされます。一方、土地を利用する人は「借地人(しゃくちにん)」と呼ばれ、借地権を持っています。
底地の所有者である地主は、その土地を借地人に貸し出すことで地代(賃料)を得る権利があります。さらに、契約の更新時などには借地人から一定の金額を受け取ることができます。また、借地人が他者に借地権を売買する際には、地主の承諾が必要であり、その際に承諾料を請求することができます。
一方、「借地(しゃくち)」は、他者から借りた土地を指し、借地権という権利を含みます。この権利により、借地人は土地上に建物を建てるなどの利用が可能になります。
結局のところ、「底地」と「借地」は物理的には同一の土地を指しますが、その立場によって呼称が異なります。地主から見れば「底地」、借地人から見れば「借地」となるわけです。
利用制限があり自由に活用できない
底地の売却における主な難点は、借地人が存在し、土地の自由な活用が制限される点にあります。借地権は通常、建物の所有や長期的な利用を目的として設定され、借地借家法により、最低でも30年間の存続期間が定められています。
このため、借地人の権利は法律により厳格に保護されており、土地所有者が土地を自由に使いたい場合でも、借地人に対して正当な事由と立退料の支払いなどを要求する必要があります。これは、底地を買い取った新たな所有者にとっても同様で、新しい建物を建設する計画があっても、借地人の権利を尊重しなければならず、このため買い手を見つけることが困難になることがあります。
このように、底地の売却は更地価格よりも低い価格での取引が一般的であり、売却自体の難易度が高いというのが現実です。
融資を受けづらい
底地の売却におけるもう一つの大きな障害は、買い手が融資を受けにくい点にあります。底地は、借地人の存在によりその利用に制限があるため、通常の更地に比べて大幅に低い価格でしか売却できない傾向があります。一般的には更地の価格の約10%から20%程度の評価となることが多いです。
このような利用制限により市場価値が低く、担保価値が事実上認められない底地を、金融機関が融資の担保として受け入れることは難しいのが実情です。その結果、底地を購入しようとする人が融資を得ることは困難になり、多くの銀行も底地購入に関する融資には消極的な姿勢を取っています。
この融資の問題は、底地の売却をさらに困難にしており、売却額が低下する一因となっています。
地代収入の少なさと収益性
底地の売却が難しいもう一つの要因は、その収益性の低さです。底地の所有者は借地権を通じて地代を受け取ることができますが、これが直接的な利益につながるわけではありません。地代収入から固定資産税や都市計画税などの年間の税金、場合によっては土地の維持管理費も支払わなければなりません。
さらに、物価上昇や土地の価値の増加に伴い、税負担が増加するリスクも存在します。しかし、地代は借地権者との合意がない限り簡単には上げられないため、これらのコスト増加が収益に大きな影響を与えることがあります。結果として、底地の収支がマイナスに転じる可能性があり、売却を検討する際の大きな障害となっています。
地代トラブルの可能性
底地の売却において、借地人とのトラブルは大きな障害の一つです。特に、借地契約の更新や地代に関する問題が主なトラブルの原因となります。
借地契約の更新時には、借地権者が更新を求めることが多く、底地の所有者は「正当な事由」がなければ更新を拒否することが困難です。更新を拒否するためには、土地の利用計画、現状の土地利用、立退料の額など様々な要素が考慮されます。定期借地権の場合、契約期間の終了と共に借地権が終了するため、こちらは比較的問題が少ないです。
さらに、土地価格の上昇に伴う固定資産税や都市計画税の増加により、地代の値上げ交渉が必要になることもあります。金銭的な交渉はしばしばトラブルの原因となり、これが底地の購入に消極的な態度を引き起こす要因となっています。
底地売却の方法5つ
借地人への売却方法
底地売却の一つのアプローチとして、借地人への売却があります。借地人は現在、底地の所有者に地代を支払いながら土地を使用していますが、底地を購入すれば、地代の支払いが不要になり、土地を自由に使用できるようになるというメリットがあります。これは第三者が底地を購入する場合と比較しても特に大きな利点です。そのため、借地人に売却する場合、市場価格に近い額での取引が期待できます。
ただし、借地人が完全所有権を取得するためには、その意思と資金力が必要です。また、土地所有者と借地人との間の良好な関係も重要です。したがって、借地人への売却は、すべてのケースにおいて最適な選択肢とは限りません。
借地権を解除し完全所有権の土地へ変換後に売却
底地の売却方法の一つとして、借地権を解消し完全所有権に変換した後の売却があります。賃借権や地上権など、土地の利用を制限する権利を解消することで、買い手に土地の自由な利用を可能にします。これにより、広範な購入希望者へ市場価格での売却が見込めます。
例えば、底地の一部と借地権を、地主と借地権者で等価交換する方法があります。この交換により、元々借地権が設定されていた土地を分割し、それぞれを地主と借地権者の完全所有権のもとに置くことが可能です。土地の面積は小さくなりますが、完全所有権を得ることがメリットです。
ただし、この方法は借地権者の同意が必要であり、建物が建っている部分を分割することはできないため、一定の広さの底地でないと実施が難しいです。
底地と借地の同時売却の方法
底地と借地を同時に売却する方法は、底地売却のアプローチの一つです。この方法では、土地の所有者と借地人が協力し、土地とその上の建物をセットで市場に出すことになります。単独で底地を売り出すよりも、土地と建物が一体となっていることで、購入希望者を見つけやすくなるため、相場価格での売却が期待できます。
しかし、このアプローチにはいくつかの課題があります。まず、借地人が売却に同意し、かつ売却時期が土地所有者の希望する時期と一致する必要があります。また、売却代金の分配について両者間で合意を形成する必要があり、これには土地所有者と借地人の良好な関係が前提となります。
底地と借地権の等価交換を行ったのち分割する
底地売却の一つの方法として、借地人と等価交換によって底地と借地権を分割する手法があります。例えば、Aさんが底地(土地の所有権)を持ち、Bさんがその土地に家を建てて借地権を持つ場合、直接の売却は困難です。そこで、底地と借地権を等価で交換し、それぞれが所有権を持つ土地を確保することを目指します。これにより、Aさんは売却しやすい状況になります。
しかし、この方法では、土地の特性、サイズ、既存建物の取り扱い、交換条件などについて借地人との詳細な協議が必要です。合意に至らなければ、分割は実現しません。借地人にとっても、長期的に住み続ける場合に土地の所有権を得ることはメリットとなるため、話し合いが推奨されます。
第三者:専門業者や投資家への直接売却方法
これまで挙げた底地売却の方法では借地人との交渉が必要でしたが、専門の不動産買取サービスを利用することで、その必要を回避できます。このアプローチでは、専門の不動産会社が底地を直接買い取ります。
不動産買取サービスを利用することの利点は、買取を行う会社が一般の個人と異なり、居住目的での購入ではないため、借地権者との交渉や土地の利用計画に関して専門的な知識と経験を持っています。これにより、借地権者とのスムーズな交渉と土地の有効活用が可能になる可能性があります。底地の迅速な売却を望む場合には、不動産買取サービスへの相談が有効な手段となり得ます。
底地や借地の評価方法(国税庁)
底地の買取相場は路線価と倍率方式の2種類の方法で計算されます。下記にそれぞれ評価方法を解説します。
路線価図の活用方法
底地や借地の買取相場を算出する方法の一つとして「路線価方式」があります。路線価とは、宅地の価値を測定するための指標であり、1平方メートルあたりの道路面する土地の価格を示します。国税庁は毎年、これらの情報を「路線価図」として公開しています。
路線価方式による計算は、土地の価格に借地権割合を乗じることで、借地の相場価格を算出します。具体的には、「借地の相場=路線価に基づく更地価格×借地権割合」という式を用いて求められます。この方法は、借地権の価値を公正かつ具体的に把握するための効果的な手段です。
倍率方式
全ての土地に路線価が設定されているわけではありません。特に都市郊外などでは路線価が定められていない場合があります。このような状況で借地の価格を求める際には、「倍率方式」が用いられます。倍率方式では、路線価の代わりに「評価倍率表」を使用します。国税庁が地域ごとに設定した評価倍率は毎年更新され、これらの情報は評価倍率表から確認できます。
この方式での計算方法は、固定資産税評価額に評価倍率を乗じることによって行われます。つまり、「借地の買取相場=固定資産税評価額×評価倍率」という式を使用して借地権の価格を求めることができます。これにより、路線価が設定されていない地域でも借地の適正な価格を算出することが可能となります。
底地の取引金額の目安
借地人への売却するケース 50%程度
借地権の割合に基づき、例えば6:4(借地権:底地)の割合の場合、借地人へ底地を売却する際の価格目安は市場価格の約50%が一般的です。たとえば、土地の市場価格が4,000万円であれば、借地人には約2,000万円での売却が目安となります。ただし、このパーセンテージは土地の所在地や市場の需要によって変動するため、あくまで一般的な目安として考えるべきです。
最終的な売却価格は、借地人との交渉によって決定されます。この交渉では、土地の所在地や現在の市場状況、借地権の割合など、様々な要因が価格に影響を与えるため、事前の準備と適切な交渉戦略が重要です。
底地と借地の同時売却の場合 30%〜40%
借地権と底地を同時に売却する場合、通常の所有権付き土地と同様に市場価格での売却が可能になります。この場合、借地権と底地の合計が市場価格となるため、底地所有者の取り分は底地の価値に限定されます。借地人との交渉において、国税庁の「借地権割合」を基にした60%~70%の主張が一般的です。
地域によって借地権割合は30%から90%の範囲で設定されており、特に住宅地では60%~70%が多い傾向にあります。この割合に基づくと、底地の所有者の取り分は大体30%~40%程度になることが一般的です。
同時売却のプロセスでは、借地人との意見の一致や契約の複雑さなどが課題となる可能性がある点も考慮する必要があります。
底地と借地権の等価交換ののち分割するケース 30%〜40%
底地と借地権を等価交換して分割し、その後売却する場合、分割された土地の広さに応じて売却価格は変動します。売却価格の決定にあたっては、借地人との相談により土地の広さを決める必要があります。一般的には、借地人の割合が60%~70%、地主の割合が40%~30%となるケースが多いです。
例えば、800㎡の底地(土地全体価値1億円)について、60%の借地権割合を基に等価交換を行った場合、地主は320㎡(40%相当)の更地を取得します。この更地は、借地権が設定されていないため、自由に利用できることから、元の底地の状態よりも高値での売却が可能になることが多いです。
第三者へ売却するケース 10%〜15%程度
第三者への底地売却時の価格目安は、一般的に市場価格の約10%程度とされています。この低価格の主な原因は、借地権の存在による土地利用の制限です。借地権の種類によっても影響が異なりますが、特に普通借地権の場合、借地人の権利が強く、地主は契約更新を拒否しにくいのが特徴です。このため、土地をいつ自由に使えるようになるかが不明確であり、結果として底地の売却価格は低くなりがちです。
一方、定期借地権の場合、残存期間が短いほど底地の価格は高くなる傾向にあります。また、投資家に売却する際は、借地人からの収益性、つまり毎月の回収可能額や利回りを基に売却額が決定されることが一般的です。
必ずしも借地権者に底地を買い取ってもらえるわけではない
借地権者が底地を買わない理由
借地権者が底地を購入しない場合には、いくつかの理由が考えられます。これには、金銭的な余裕がないこと、借地権者が高齢で購入が難しいこと、または借地権者の子供が既に他の家を所有しているため、所有権化する必要がないことなどが含まれます。
もし借地権者が底地を買う意向を示した場合、路線価割合で、あるいはそれ以上の価格で売却することも可能です。ただし、このような取引は当事者間の話し合いに基づくものであり、トラブルを避けるために慎重な交渉が必要です。借地権者の購入意向があれば、これは底地を高く売却できる絶好のチャンスになり得ますが、一方的な交渉はトラブルの原因となり得ます。双方が互いを尊重し合いながら交渉を進めることが望ましいでしょう。
底地の購入するしないは借地権者の自由
借地権者に底地の買取を提案しても、その購入を行うかどうかは完全に借地権者の自由に委ねられています。底地は自由に利用できないため、通常は不動産業者による買取が一般的です。しかし、一般の不動産会社では底地の買取を行っていないことが多いのが現状です。その理由は、借地権や底地に関する取引には専門的な知識やノウハウが必要とされるためです。
このため、底地を売却する際には、借地権や底地の取引に特化した専門の不動産業者を探すことが重要になります。借地権者自身が底地を購入する意向がない場合、適切な専門業者を見つけることが、効果的かつ迅速な売却への鍵となります。
底地を取り扱う不動産会社を探す
底地や借地権を専門に扱う不動産会社の探索は必須ですが、これらを専門とする会社は全体の中で非常に限られています。特に、先祖代々から受け継いだ底地を相続する際には、売却するかどうか、あるいは相続税を支払って保持するかの決定は難しいものです。
このような状況では、弁護士や税理士と提携している不動産会社のサポートが役立ちます。専門的な知見を持つこれらの専門家と連携することで、様々な悩みに対応した適切な提案が期待できます。そのため、個々の状況に応じたアドバイスを得るためにも、専門の不動産会社に相談することが推奨されます。
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