借地権の土地に建物を所有している場合、契約満了時に解約する際は、原則として更地にして返還する必要があります。しかし、更地にするには解体費用などがかかり、借主の負担も大きくなってしまいます。
そこで、借主は地主に対して建物の買取を交渉することができます。この権利は「建物買取請求権」と呼ばれ、一定の条件を満たせば地主は拒否できません。
本ブログでは、この建物買取請求権を中心に、買取が拒否された場合の対処法や借地権に関する様々な知識を解説します。借地権の契約満了を控えている方、借地権について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
借地権の特徴と種類を詳しく解説
借地権とは、他人の土地に建物を所有するために、土地所有者(地主)から土地を借りる権利のことです。借地権を持つことで、土地を所有しなくても、その土地に建物を建てて住むことができます。
借地権の主な特徴
- 土地所有権と異なる: 土地そのものは所有できませんが、借地権は財産権として認められており、売買や相続も可能です。
- 地代(賃料)の支払い: 土地所有者に対して、定期的に地代を支払う必要があります。
- 借地借家法の保護: 借地権は借地借家法で保護されており、地主は正当な理由なく契約を解除したり、地代を一方的に値上げしたりすることはできません。
借地権の種類
借地権には、大きく分けて「普通借地権」と「定期借地権」の2種類があります。
1. 普通借地権
- 契約期間: 当初30年、その後更新可能(更新期間は1回目20年、2回目以降10年)
- 更新: 地主は正当な理由(土地の利用目的変更、借地人の契約違反など)がない限り、更新を拒否できません。
- メリット: 長期にわたり安定して土地を利用できる。
- デメリット: 地代が値上げされる可能性がある。
2. 定期借地権
- 契約期間: 契約期間が終了すると、契約は自動的に終了し、更新できません。
- 種類: 一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権の3種類があります。
- メリット: 地主は契約期間終了後に確実に土地を取り戻せるため、地代が比較的安い傾向があります。
- デメリット: 契約期間が終了すると、土地を明け渡す必要があります。
(1) 一般定期借地権
- 契約期間: 50年以上
- 利用目的: 住宅用として一般的
(2) 事業用定期借地権
- 契約期間: 10年以上(ただし、事業用建物が存在する場合は30年以上)
- 利用目的: 事業用のみ
(3) 建物譲渡特約付借地権
- 契約期間: 30年以上50年未満
- 特徴: 契約期間満了時に建物を地主に無償で譲渡し、借地権は消滅します。
まとめ
種類 | 普通借地権 | 一般定期借地権 | 事業用定期借地権 | 建物譲渡特約付借地権 |
---|---|---|---|---|
契約期間 | 当初30年、その後更新可能(更新期間:1回目20年、2回目以降10年) | 50年以上 | 10年以上(建物ありは30年以上) | 30年以上50年未満 |
更新 | 地主に正当な理由がない限り更新可能 | 更新不可 | 更新不可 | 更新不可 |
利用目的 | 制限なし | 制限なし | 事業用のみ | 制限なし |
契約方式 | 制限なし | 特約を書面で作成 | 公正証書のみ有効 | 規定なし |
地代の相場 | 更地価格の3〜5% | 更地価格の0.5〜1.5% | 更地価格の0.5〜1.5% | 更地価格の0.5〜1.5% |
メリット | 長期にわたり安定して土地を利用できる | 地代が比較的安い | 地代が比較的安い | 地代が比較的安い |
デメリット | 地代が値上げされる可能性がある | 契約期間終了後に土地を明け渡す必要がある | 契約期間終了後に土地を明け渡す必要がある | 契約期間終了後に建物と土地を明け渡す必要がある |
その他 | 借地借家法で手厚く保護されている | – | – | – |
補足:
- 地代の相場は目安であり、地域や状況によって異なります。
- 建物譲渡特約付借地権は、契約期間満了時に建物を地主に無償で譲渡し、借地権が消滅します。
- 各借地権の詳細や契約内容については、専門家にご確認ください。
借地人の買取請求権:建物と借地権の違いを理解する
借地人が土地の賃借契約終了時に、地主に行使できる買取請求権には、「建物買取請求権」と「借地権の買取依頼」の2種類があります。
建物買取請求権とは?
借地契約が終了し、土地を返還する際、通常は更地にして返還しなければなりません。しかし、建物買取請求権を行使すれば、地主に建物を買い取ってもらうことができます。
行使できる条件
- 借地契約が満了し、更新されない
- 借地人が建てた建物が存在する
- 旧借地権または普通借地権である
これらの条件を満たせば、地主は買取請求を拒否できません。
買取価格
建物の買取価格は「時価」となります。築年数や建物の状態によって価格は変動するため、専門家に査定を依頼することが重要です。
行使の方法
買取請求は、書面で行います。内容証明郵便を利用すると、後日のトラブルを避けることができます。弁護士などの専門家に相談することも有効です。
建物買取請求権を行使できないケースとは?
借地人が土地の賃借契約終了時に地主に行使できる「建物買取請求権」ですが、行使できるケースは限られています。
行使できないケース
- 定期借地権の場合
- 一般定期借地権や事業用定期借地権の場合、契約終了時に更地にして返還することが前提となるため、建物買取請求権は行使できません。
- 契約満了前に解約する場合
- 借地人の都合で契約期間中に解約する場合、建物買取請求権は行使できません。
- 借地人側に契約不履行がある場合
- 地代不払い、無断転貸など、借地人側に契約違反があり、契約が解除された場合は行使できません。
- 合意解約の場合
- 双方の合意で契約を解除した場合も、行使できません。
- 契約期間中に借地人が不要になった場合
- 契約期間中、借地人が土地や建物を不要になったとしても、地主に買取を請求する権利はありません。あくまでもお願いという形になります。
借地権の買取依頼:地主への「お願い」から始める交渉
借地契約終了時に借地人が行使できる「建物買取請求権」は、一定の条件を満たせば地主は拒否できません。しかし、条件に当てはまらない場合は、地主への「お願い」という形で借地権の買取を交渉することになります。
地主の意向がカギ
借地権の買取交渉では、地主の意向が最も重要です。地主の事情や希望を理解せずに交渉を進めると、トラブルに発展する可能性もあります。
円滑な交渉のために
まずは、地主とコミュニケーションを取り、以下の点を確認しましょう。
- 地主の年齢や健康状態
- 相続の予定
- 土地活用の意向(売却、賃貸など)
地主の状況や希望を把握した上で、借地権の買取を依頼すると、交渉がスムーズに進みます。
建物の買取も交渉可能
借地権の買取交渉と同時に、建物の買取についても相談してみましょう。地主によっては、土地と建物をまとめて買い取ることにメリットを感じる場合もあります。
地主が買取を拒否した場合の対処法:建物買取請求権と借地権の違い
借地契約終了時に、借地人が地主に買取を請求できる権利には、「建物買取請求権」と「借地権の買取依頼」の2種類があります。それぞれ、地主が拒否できるかどうかが異なります。
建物買取請求権:地主は拒否できない
建物買取請求権は、借地人が地主に対して建物を買い取るよう請求する権利です。一定の条件を満たせば、地主はこの請求を拒否することはできません。
建物買取請求権が行使されると、建物の所有権は地主に移転し、地主は借地人に建物の時価相当額を支払う義務が生じます。
借地権の買取依頼:地主は拒否できる
一方、借地権の買取依頼は、借地人が地主から借地権そのものを買い取る権利です。この場合、地主は買取請求を拒否することができます。
地主が借地権買取を拒否した場合の対処法:第三者への譲渡と借地非訟
借地権の買取は、地主の意向が重要であり、地主は買取を拒否することができます。地主が買取を拒否した場合、借地人は以下の2つの選択肢を検討できます。
1. 第三者への借地権譲渡
地主の承諾を得て、借地権を第三者に売却する方法です。
- 地主の承諾と承諾料: 一般的に、借地権価格の1割程度の承諾料を支払うことで、地主の承諾を得ます。
- 承諾なしの譲渡のリスク: 地主の承諾なしに譲渡することも可能ですが、地主が賃貸借契約を解除できるため、現実的には承諾が必要です。
2. 借地非訟
地主が正当な理由なく譲渡を拒否する場合、裁判所に調停を申し立てることができます。裁判所が譲渡を許可すれば、地主の承諾なしに譲渡できます。
- 借地非訟とは: 裁判所が地主の承諾に代わる許可を与える手続きです。譲渡許可の他にも、転貸許可や建て替え許可などがあります。
- 手続き: 裁判所が選任した鑑定委員が物件や当事者の状況を総合的に判断し、許可を出すかどうかを決定します。
- 専門家への相談: 借地非訟は専門的な知識が必要なため、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
借地権専門の不動産買取業者に相談する
借地権の買取をスムーズに進めるためには、借地権専門の不動産買取業者に相談することも有効な手段です。業者は地主との交渉や借地非訟の手続きなどを代行し、借地人が次のステップに進めるようサポートします。
地主に借地権買取を依頼する際の価格相場:一律ではない複雑な事情
地主に借地権の買取を依頼する際の価格相場は、残念ながら一概に示すことはできません。
価格相場が変動する要因
- 借地権の内容: 地代、保証金、更新料、承諾料などの条件によって大きく変わります。
- 買取の主体: 地主から提案された場合と、借地人から依頼した場合では価格相場が異なります。
- 立地条件: 都市部や地方など、需要によって価格相場は大きく変動します。都市部では借地権の需要が高いため、地方よりも高値で取引される傾向があります。
借地権売却相場の計算方法
借地権の売却相場は、一般的な不動産売買とは異なるため、専門的な知識が必要です。借地権を専門とする不動産業者でなければ、正確な査定が難しい場合もあります。
借地権売却相場を仮計算する方法:借地権割合を活用しよう
借地権の売却相場には明確な基準はありませんが、「借地権割合」を用いることで、おおよその価格を予測することができます。
借地権割合とは?
借地権割合とは、更地の土地価格に対して、借地権がどれだけの価値を持つのかを示す割合です。一般的に、地価が高いほど借地権割合も高くなり、住宅地では60~70%が目安となります。
借地権割合から売却価格を予測する
- 地主からの買取依頼の場合: 更地価格の60~70%が借地権の買取価格の目安となります。
- 借地人からの買取依頼の場合: 地主との交渉次第ですが、更地価格の50%程度が目安となることが多いです。
借地権割合の確認方法
借地権割合は、国税庁のウェブサイトに掲載されている「路線価図・評価倍率表」で確認できます。地域や土地の利用価値によって異なり、30~90%の範囲で設定されています。
借地権売却価格の計算例
例えば、以下の条件の借地権の場合、
- 土地面積: 60㎡
- 路線価: 50万円/㎡
- 借地権割合: 70%
借地権価格は、60㎡ × 50万円/㎡ × 70% = 2100万円 となります。
注意点: この計算はあくまで土地価格であり、建物価格は含まれません。建物価格は、築年数や状態によって大きく変動します。
まとめ:借地権のトラブルを回避し、円滑な解決を目指す
借地権に関するトラブルは、不動産取引の中でも特に発生しやすい問題の一つです。借地人と地主の間に長年の信頼関係があっても、お互いの意向が異なることでトラブルに発展するケースは少なくありません。
このような状況を避けるためには、借地権の買取を検討する際に、借地権問題に強い不動産会社に相談することが重要です。
専門家によるサポートのメリット
- 豊富な取引実績: 借地権の取引経験が豊富な不動産会社は、様々なケースに対応できるノウハウを持っています。
- 迅速なトラブル解決: 専門知識と経験を活かし、借地人と地主の双方の意向を考慮しながら、迅速かつ円滑に問題解決を図ります。
- 公正な取引の実現: 不動産会社が間に入ることで、感情的な対立を避け、公正な取引を実現できます。
まとめ
借地権の買取は、専門家のサポートを受けることで、スムーズに進めることができます。トラブルを未然に防ぎ、双方にとって納得のいく結果を得るためにも、借地権に強い不動産会社に相談することをおすすめします。
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